神サバ小話4

診断メーカーの「ゾンビサバイバル! あなたは何日生き残れるか!? 」をテーマにした短文集「神サバ」の番外編(http://togetter.com/li/482037)のノリで作った更なる番外編・神サバ小話2(http://togetter.com/li/493228)のそのまた番外編・神サバ小話3(http://togetter.com/li/507496)の更に番外編。 ついに4まで続いちゃった系小話…! 「私」が呟く「神サバbot(https://twitter.com/kamisurv_bot)」も稼働中。 続きを読む
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それでも君達は生きていく

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 混沌の水面を色とりどりの花々が漂っていた。ルキフェルは混沌のほとりで身を屈めて、創ったばかりの青紫色の花をそっと水面に置いた。そして、自分の隣で佇む赤毛の男の姿を認め、軽く会釈をした。「ごめんなさい。集中していて気付かなくて」「こちらこそ、邪魔したね」 #神サバ小話

2013-05-27 15:11:07
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「あなたも混沌が懐かしくなるんですか?」「…さぁ、なんの事かな?」「ふふっ、なんの事だろう」「だから、君は花を流すのか?」 「よくわからない。混沌の底で眠るみんなに届けたいのかもしれないし、ただの自己満足かもしれない…ねぇ、混沌はいつから存在するの?」 #神サバ小話

2013-05-27 15:21:20
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「たぶん、私や君達を創った神だって知らないよ。きっと、そのまた創り主も知らないと思うな。…ミシェルは一緒じゃないのか?」天使は寂しげに微笑んだ。「僕は僕で、ミシェルはミシェルです」「もちろん、君は君だ」「僕とミシェルは一緒にいる。それが一番自然だから」 #神サバ小話

2013-05-27 16:50:21
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 男が座って目線の高さを合わせると、天使は男から顔を逸らした。「僕は僕の意思でミシェルを愛し敬い、必要としている。けれど、それは神が僕をそう創ったからで…本当は僕の意思ではないのかもしれない。時々不安になる。僕は心の奥底で、きっと神を憎んでいるんだ…」 #神サバ小話

2013-05-27 17:27:46
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ルキフェルは両手をかざして金色の薔薇を創り出し、ぼんやりと眺めてから握り潰した。男は天使の細い背中に腕を回した。それでは不十分だと思ったのか、そのまま肩を抱いて引き寄せた。「…びっくりした。あなたが僕を抱きしめてくれるなんて」「私も驚いているよ」 #神サバ小話

2013-05-27 17:59:53
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「僕はあなたからかけがえのないものを奪った」「私は哀しみ、愛する者を捨て、死を選ぼうとさえした。君のせいだ…」「あなたは今でも僕を憎んでいる?」「もし私が君の創造主だったら、この手でその存在を抹消してやりたい」「僕も…神よりも、あなたの手で消されたい」 #神サバ小話

2013-05-27 18:04:37
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「消してやりたいよ。できるものなら…もうこれ以上傷つかないように」「神が言った通り、あなたは優しい」「ミシェルが迎えに来たようだ。行ってあげなさい」天使は愛する片割れの姿を見つけ、戸惑う少女の微笑みを浮かべて立ち上がった。「僕もあなたに創られたかった」 #神サバ小話

2013-05-28 03:35:25
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 天使が片割れの許に駆け寄ると、二、三言葉を交わし、ミシェルはルキフェルを自分の胸に抱き寄せた。そして、赤毛の男の位置からも聞こえた。感情が薄い声で「それが誰の意志であろうと構わない」と。半身の涙と嗚咽する声を胸に受け止め、無表情な天使は毅然としていた。 #神サバ小話

2013-05-28 03:45:23
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 赤毛の男は誰にともなく呟いた。「…なぁ、何故創ったんだ。あんなに脆く、傷つきやすく。…いや、違うな。私達はただ創り出すだけ。あとはすべて君達の自由だ」手を繋ぎ歩いて行く双子達の背中を見送り、男はうーんと大きく伸びをして、そのままゴロリと寝転んだ。(終) #神サバ小話

2013-05-28 03:55:09

過去との再会

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl その魂は、人類が楽園から消えたその日から、地獄の業火に焦がされ続けてきた。「よぅ、大将!久しぶりだな!」魂は嘲笑を浮かべて来訪者を出迎えた。「俺の事なんか、忘れちまったのかと思っていたぜ?」来訪者は微笑んだ。「そうだよ、君の記憶は混沌に捨ててしまった」 #神サバ小話

2013-06-27 13:41:47
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ルキフェルは頬を炎で赤く染めて、その魂をじっと見つめた。「長い間放っておいて、ごめん。みんなのおかげで、君の存在を思い出す事ができた」「ふぅん、どおりで…。アンタ雰囲気が変わったな。昔に戻ったみたいだ。ま、俺は前のアンタの方が好きだったがな…ヒヒッ」 #神サバ小話

2013-06-27 13:52:50
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「君を開放しに来たんだ」「へぇ?俺を天使にでも戻してくれるって言うのかい?俺の翼も手足も奪って、挙句に魂を閉じ込めておいて?そいつは甚く寛大なご処置だ!感動のあまり、涙が出るね!」「それはできないよ。君は肉体を持った存在となり、そのまま死んだのだから」 #神サバ小話

2013-06-27 14:03:45
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「ほうほうほう…つまり、アレか?俺がヘマして踏み殺されなきゃ、あの契約は履行されたのか?人間の女を殺せば、天使に戻してくれるって契約さ」「それはわからない」「忘れちまってか?…ま、どうせ、果たす気もなかったんだろう?」「君と話していると頭が痛くなるよ」 #神サバ小話

2013-06-27 14:07:59
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 魂は不愉快な笑い声をあげてから、天使を睨みつけた。「そいつは奇遇だな!俺はアンタといると反吐を吐きそうだ。…で、解放してくれるんだろ?」「うん、君を混沌の海に解き放つ」「つまり消えろって事か?」「違うよ。混沌に沈む記憶や感情、魂達の中に溶け込むんだ」 #神サバ小話

2013-06-27 14:24:02
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「ま、なんだって、構わないさ!アンタのご尊顔をもう拝まなくっても済むんならね!」「…ねぇ、一つだけ。君が僕らに放った言葉には、明らかに悪意があった。僕らにではない…僕への悪意だ。違うかい?」「だとしたら?」「君は僕を妬んでいた。僕の力に?僕の存在に?」 #神サバ小話

2013-06-27 14:31:36
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「…ぷっ、ははははっ!」「何がおかしいの?」「おかしいさ!腹がよじれる!よじ切れて、昇天しちまうぜ!あの時のアンタの目つき!純真無垢を装って、お高くとまっていたアンタがさ!おい、忘れちまったのか?」魂はルキフェルの後ろに佇む人影に気づき、目を見開いた。 #神サバ小話

2013-06-27 14:49:01
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl こぼれるような輝きを放つ金色の髪。魂から嘲りは消え、飢えを満たそうとするように腕を伸ばしてもがき、その天使の名を力の限り叫んだ。その瞬間、業火は勢いを増して燃え上がった。囚われの魂は苦痛のあまり絶叫し、そのまま消え去った。魂は混沌の海へと還っていった。 #神サバ小話

2013-06-30 13:33:02
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ルキフェルは糸が切れた人形のようにその場でくずおれた。そして、ぼんやりとした目で赤々と燃える炎を見つめ、魂が叫んだのと同じ名前をゆっくりと確かめるように発音した。ミシェルが駆け寄り、優しく抱き起こそうとすると、ルキフェルはその手を乱暴に払いのけた。 #神サバ小話

2013-06-27 15:10:24
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl そして、自力で立ち上がり、少女の様な意地の悪い笑みを浮かべた。「さぁ、幕は降りた!観客は不要だ!さっさと退場し給え!」「何を言っている?」「知っているか?本当は貴様をこれっぽっちも愛してなんかいない。尽くしてくれる誰かを、ただ必要としているだけなのさ」 #神サバ小話

2013-06-27 15:26:03
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ミシェルは表情を変えずに答えた。「そなたが必要としてくれるのなら、他に望む事はない」「あっはっは…そいつは好都合!需要と供給。我々はいいコンビだ!ならば、僕の足元にうずくまっていろ。気が向いたら優しい言葉を投げてやるから、それでも貪り食っていればいい」 #神サバ小話

2013-06-27 15:32:54
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「落ち着いてくれ。意味が分からない」ミシェルは片割れの異変に気付いて動揺した。蒼い瞳は冷たく、目に映るすべてのものを断罪しようとしていた。…あの時と同じだ。激しい感情に戸惑い、心を閉ざそうとしている。このままでは、また手の届かないところへ行ってしまう。#神サバ小話

2013-06-30 12:13:15
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 酷薄な言葉は止まらない。「僕の足元で飢えたら、今度は他の奴の足元で上目使いにねだるんだろう?『愛がほしい』と」…なのに、どうすればいい?言葉が出てこない。不器用で役立たずな自分。もう離さないと決めたのに…。「否定しないんだな?」ルキフェルは唇を歪めた。 #神サバ小話

2013-06-30 13:01:00
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ルキフェルはいつでも感情を素直に表現してくれた。そして、どうして欲しいのかも。しかし、今は違う。蒼い瞳は冷たく、何かを求めている。…そうだ、ルキフェルはいつでも、表現下手な自分の気持ちを察してくれ、自分が望む事をしてくれた。ならば、自分はどうすべきか? #神サバ小話

2013-07-05 09:05:48
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