【腐向け】ふみん先生がメル美を書いてくれたよまとめ

カタストロフメル美くれくれ厨してたら本当に書いてくれました。ありがとうございます
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こうのす @b_m_y

@insomnia_23 メルが死んでこわれてしまった美袋君と実は死んでなかったメルカトルください

2013-07-14 23:59:35
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

メルがいなくなった。いや、正確を期すならばちょっと出かけるのさ、と言って出かけてから随分と経ってしまった。「仕事か?」と問いを投げるとはぐらかすような、意地悪をするような不思議な表情で「ああ」と頷いた。 来るかい?と誘わないということは、悪どい依頼なのだろう。#カタストロフメル美

2013-07-15 19:52:58
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

「まあ土産の一つや二つくらいは買って来てあげよう。なに、礼なら要らないよ、僕は寛大だからね」 「裏がありそうだから遠慮しておこう。どうせそれを恩に着せて無茶なことをさせようっていうんだろ?」 「随分と信頼がないものだね」 「理由を言わなきゃ分からないか?」 #カタストロフメル美

2013-07-15 19:54:55
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

半眼で睨みつけたところで、こいつに嫌味や毒は通用しないことぐらい分かっている。 事実、今私が吐き出した言葉を聞いていないかのように鼻歌を鳴らしながらシルクハットを頭に載せて、社交場に行くかのようにシャツを整えて。 手にしていたステッキをくるりと回して微笑んだ。#カタストロフメル美

2013-07-15 20:00:22
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

それから思い出したように「ああ、そうだ。君に預けておきたいものがあるんだ」と笑みを浮かべたまま窓際に無造作におかれていた一輪挿しの花瓶を差し出して来た。 茎を水切りされたそれは鮮やかすぎる蒼い薔薇だった。 「なんだ、これ」 「薔薇だよ。見ても分からないかい?」#カタストロフメル美

2013-07-15 20:02:59
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

「薔薇くらい分かる。色のことを言いたいんだよ」 蒼い薔薇なんて自然界では見たことすらない。鮮やかな蒼は差し出された花瓶の中で涼やかに揺れていた。 「なに、研究開発中の産物を貰ったのさ。なかなか綺麗だろう?それの世話でもして僕の帰りを待っておくように」#カタストロフメル美

2013-07-15 20:04:48
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

「なんだそれ、昭子嬢にでも頼めよ」 「彼女はここに勤めに来てるんだぞ?花瓶を持って移動したまえと言えと?それに引き換え君は日がな一日部屋で引きこもりのように生活出来る職種だろう、たまには役に立ちたまえ」 カッ、とステッキの先を私に突きつけてメルが暴論を吐いた。#カタストロフメル美

2013-07-15 20:13:05
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

とんでもない物言いだ。別段今更怒りも沸かないが、ただ呆れ果てた。 「…メル、お前そのうち口が災いして死を招くぞ」 少なくとも今目の前にいる私は軽い殺意を抱いた。遅筆なことは確かだし、メルにくっついて探偵業を見学している程度に暇なのは事実だが、あまりにも暴論だ。#カタストロフメル美

2013-07-15 20:16:20
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

ささやかな忠告と嫌味はメルには切っ先とすらならない。 此方を嘲笑うかのように鼻を鳴らすと「君が僕を殺せるほど俊敏だとも策士だとも思っていないよ」と軽くいなされてしまった。 「僕を殺したいなら上回るだけの智慧をつけることだね、美袋君」 「………」 いつか殺す。#カタストロフメル美

2013-07-15 20:19:18
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

「まあ、そんなことはどうでも良いのさ。ただこれを預かって世話をすれば良いだけなんだから、引き受けてくれてもバチは当たらないだろう?」 「…理不尽な扱いをされた気はするんだけど、気のせいか」 「勿論、気のせいさ。ああ、珍しい花だから枯らさずに世話してくれよ」#カタストロフメル美

2013-07-15 20:28:56
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

「分かったよ、どれくらい預かればいいんだ?」 「さぁ、長く空けるつもりはないけど。まぁ、帰るときには連絡をいれてあげよう。盛大に迎える準備をするように」 「なにが悲しくて僕がそんな準備をしなきゃいけないんだよ、御免だね」 言いながら手を伸ばして花瓶を受け取る。#カタストロフメル美

2013-07-15 20:32:24
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

鼻腔をくすぐる香りは、淡く、注意しなければ薔薇の香りとすら認識しないかもしれないほど儚いものだった。 「まぁ、そうしたら行って来るよ。あぁ、薔薇を枯らしたりしたら勿論弁償して貰うからね」 そう言って、部屋を出るメルに着くように私も部屋を出た。 #カタストロフメル美

2013-07-15 20:37:29
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

手の内の花瓶を見た昭子嬢がそのまま持ち帰るのは恥ずかしかろうと、ビニール袋に花瓶ごと入れてくれたのがせめてもの幸いだったかもしれない。 「じゃあ、美袋君。またいずれ」 映画の中の紳士然とした態度で軽くシルクハットを持ち上げ、メルが朗らかに笑って歩き出した。 #カタストロフメル美

2013-07-15 20:40:47
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

自然、ここで別れることになる。 それを見送るでなし見ていたら少し歩いた先で不意に振り返り、くれぐれも薔薇を枯らすなよ、と意地悪く笑いながらメルが言った。 枯れそうになったらドライフラワーにしてやるさ、と皮肉を返す。勿論ドライフラワーの作り方なんて知らないが。#カタストロフメル美

2013-07-15 20:41:46
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

そのやり取りがあってから彼此一週間が経つ。 その間、事務所に行くのも妙に気が引けて仕事机の上の蒼い薔薇の花の世話を焼きながら、短編の依頼を二つ、こなした。 枯らすなというから花の世話の仕方まで調べて丁寧に扱っているが寿命もあってか、薔薇は日に日に色褪せていく。#カタストロフメル美

2013-07-15 20:48:28
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

「まったく、預けるなら預けるで世話の仕方くらいきちんと教えろっていうんだよ」 色の綺麗な花は砂糖水で生けると長持ちすると言うから、今日も砂糖水に変えてやりながら悪態をつく。 最初にメルから預かった時の鮮やかな蒼は今ではくすんだように痛ましい茶を覗かせていた。#カタストロフメル美

2013-07-15 20:51:56
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

これを見たらメルのことだ、枯らすなと言ったのに本当に君はダメだな、と言って、まるで免罪符を得たかのように嬉々としてまた私のことを困らせようとして来るに決まっている。 ノックスの生原稿を奪われたのも、ハードディスクに残っていた原稿を消されたのも記憶に新しい。#カタストロフメル美

2013-07-15 20:56:15
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

そう考えるとメルに対して怒ってもいい気がする。というか常々怒ってはいるが歯牙にもかけないだけだ。色褪せて変色し始めた花弁を撫で大きく息を吐いた。 「あいつ、帰ってきたら今度こそ縁を切ってやる」 もう何度目か分からない決意を胸にして、花に触れていた指を離した。#カタストロフメル美

2013-07-15 21:09:16
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

―――――――――――それが決してかなわない決意であることなど、この時の私は、思っても居なかったのだ。 そんな風に無理難題を吹っ掛けてくるアイツが。殺しても死にやしないだろうと思っていたアイツがあっさりと死ぬだなんて、その時の私は、思ってすら、いなかったのだ。#カタストロフメル美

2013-07-15 21:10:31
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

机の上に置いてあった花瓶の中の蒼い薔薇は既に茶色く変色してしまっている。まるで滲むように蒼を浸蝕していった茶は当の昔に蒼い薔薇が力尽きていたことを認めたくなかった私にまざまざと現実を見せつけた。 メルが戻ってこない。メルがいない。メルはもう何処にもいない。#カタストロフメル美

2013-07-15 21:39:46
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

あの腹立たしいほど自信に満ち溢れた顔を見ることも出来ない。 屁理屈と無茶苦茶な暴論を掲げて無理を通して道理を引っ込ませるやり方で困らせられることもない。 それは――喜ばしいことだ。そうだろう、美袋三条。やっと縁を切ることが出来たのだ。それも、未来永劫。#カタストロフメル美

2013-07-15 21:43:06
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

縁を切る縁を切ると言って数年続いていた縁が切れたのだ。そうだ、今日は祝杯を上げよう。 蒼い薔薇を枯らしてしまったことを気に病まなくてもいいのだ。それこそ喜びを持ってしてささやかな祝宴を上げたっていいはずだ。蒼い薔薇の残骸を手に、顔面の表情筋を無理やりに動かす。#カタストロフメル美

2013-07-15 21:48:29
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

モニターに映る自分の顔を見る。―笑おうとして笑いそびれた、それでいてなんとも泣き出しそうな不思議な顔をしている。左右非対称の表情。腹の底から笑ってやりたいのに、そんなことも出来ない。口を開いて、笑ってやろうとしたら―笑い声の代わりに、嗚咽が漏れた。#カタストロフメル美

2013-07-15 21:51:23
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

「メル」 名前を呼んでみる。返答はない。当たり前だ、此処は私の私室なのだから。 名前を呼んで返答があるはずがないのだ。それでも、嗚咽交じりに名前を呼ぶ声が、止められない。 メル。メル。メル。メル。メル。メル。 何度名前を呼んでも思い浮かぶのは、あの不遜な表情。#カタストロフメル美

2013-07-15 22:02:17
仏壇フェスティバル!(ふみん) @insomnia_23

腹が立つ。あんな奴嫌いだ、縁を切りたいとさんざ願っていたのに。 これ以上ないほどに嬉しいことのはずだ。アイツに煩わされることはもう、この先二度とないのだ。 これほど嬉しいことはない筈だ。そのはずなのに。 なぜ、こんなにも、胸に穴が開いたように空しくなるのだ。#カタストロフメル美

2013-07-15 22:10:30