『月見里日誌』(呉鎮守府の一室より発見さる)

2-4クリア記念ということでいちおう……完結? ある女性提督の手記。漫画読みきりとか蛇足とか書き足していくかも。こういう提督いてもいいおもうんですよ。
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里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 紀26** */* 月見里** 記 呉に着任しはや**日が過ぎました。鎮守府は非常に賑やかです。公的な軍務日誌は別途つけておりますが、後に顧みるための覚書とするため、この雑記帳を用意したものです。恐らく私以外読まぬであろうものに此の様な書きぶりは、正直に申しまして

2013-07-17 13:27:19
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 馬鹿ばかしく思わぬでもないのですが、手癖のようなものです。両親には大層叱られた思いでがあります。 呉鎮守府での私(流石に此の場に小官と記すには抵抗があります)の主たり仕事は、主として艦霊の管理、及び依童である彼女たちの出講停止願に判をつくことです。一枚の書類へ朱を

2013-07-17 13:33:15
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 捺す度に、自分が彼女たちの贖い難い日々を奪い取っているのだと感じずにはいられません。これは軟弱な事です。彼女たちの助けが無ければ、我々はこの、実に陸地に三倍する面積の海を備え、海に引き裂かれた惑星で、今のように生き延びることはできないのですから。深海棲艦が航空種

2013-07-17 13:37:50
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 という種を得るまでは、あるいは遠くない未来、テペリンの子らが我々の救いとなるであろうと、夢を見ることもできました。しかし今や我々は、以前の時代より遥かに肥大化した人口、あるいは文明を支えるため、幼い子供達を殺さぬために、シーレーンの確保を義務とせねばなりません。

2013-07-17 13:41:21
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 私が女学生であった時分、軍学校に志願させられるより以前に、艦娘となれと命じられたとして、果たして首肯し得たかといえば(結果どうなったかはともあれ)疑わしいものです。事実、私という人間は、今も安全な鎮守府の(粗末とはいえ)私室で、安穏と彼女らの帰りを待っています。

2013-07-17 13:44:17
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 恐れるものではない、と「川内」は言います。ともかく川内と呼びます、彼女の艦娘の名を記すことは、内規に触れるためできないのです。戦への高揚感があり、誰かの為に戦う喜びがあるのみだと。だから夜戦をやらせろと。その様なものかもしれません。その様であってくれればどんなにか

2013-07-17 13:46:45
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 楽な事でしょうか。いずれ彼女の笑顔に嘘を見出すことは、私にはできないのですが。それは真実そうなのかもしれず、私の如き小娘の人物眼が鈍いだけかもしれず、あるいは罪悪感が目を曇らせているのかもしれません。何れにせよ私は、彼女らが外海へ出ている間、無電と兵棋盤に向かう

2013-07-17 13:49:35
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 ことしかできないのです。いま、緊急招集がかかり、比較的安全であろう護衛任務に出ている「北上」以下の艦隊の他は、私の指揮下にある娘たちは皆、鎮守府で待機しています。彼女らが本来いるべき場所でなく。暇を持て余した「多摩」に遊んでくれとねだられていますので、一度、筆を

2013-07-17 13:52:13
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 置こうと思います。日の光にすっかりとだれている「川内」が、あのままの心持ちであってくれたらよいのですが。

2013-07-17 13:53:07
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 本艦隊に新たな艦娘着任ス。といっても、日常茶飯事ではある。大きかったのは、重巡級の艦魂憑依者「加古」と、数々の伝説を残したという「雪風」の着任だろうか。とくに興味深いのは雪風だ。幸運艦と呼ばれ、あるいは死神と呼ばれたという、彼女の魂。私の彼女たちに、吉と出るか凶と

2013-07-17 23:05:11
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 本日本艦隊は、鎮守府周辺第四海域に突入した。戦艦級の深海棲艦/それは限りなく人に近い姿であるという/との交戦報告であり、夜戦を仕掛ければ打通可能と主張する「川内」を止めなかったのは、私の判断だ。結果、川上を含む六人中四人が大破。されど戦艦級以外を撃沈し、敵を撤退に

2013-07-18 00:26:31
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 重症を負った依童たちは、修復を施した艤装とは別に、基地の医務室で手当を受けている。私はいま、彼女らの通う学校への出講停止願いを送付し終えたところだ。実は私は、ごく少数の例外を除き、艦娘ではない依童たちと会ったことがない。その勇気がない。傷を負わせた負い目があれば尚

2013-07-18 00:37:07
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 御国のため。人のため。誰かがやらねばならないことを私が代行する。それが軍人としての努めであると理解してはいる。しかし、それを盾に、彼女たちを死地へ追い遣ることが許されるとも思えないのだ。事実上、彼女らにそれを選ぶ権利はないのだから。医務室の様子を見に行くかまた悩む

2013-07-18 00:38:41
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 紀26**/**/** 月見里** 記 第四海域での戦闘にて、敵空母級と交戦。川内はじめ数名が重症。 医務棟を尋ねる。 はじめましてと声をかけるのは勇気必要だった。傷だらけで、はじめましてではないですと微笑む**の姿が、ひどくまぶしく見えたのを覚えている。私は

2013-07-18 21:06:46
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌  艦霊を下ろしていない**と会ったことはなかった。顔を合わせることを避けていた。だからきっと、殆ど覚えていないものと思っていた。 **とは幾らか話をした。夜が嫌いではないこと。星空が嫌いでないこと。静かな海が嫌いでないこと。「川内」とは、だから気が合うということ。

2013-07-18 21:09:17
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 鎮守府のライスカレーが美味しいということ。補修が大変だという少しの愚痴。謝った。恐縮された。卒業したら看護師になりたいということ。戦いが怖いということ。深海棲艦は好きではないということ。私のことは嫌いでないということ。  /  叫びたい気分で、これを書いている。

2013-07-18 21:12:21
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 紀26**/**/** 月見里** 記 本日付で中佐昇進の辞令届く。呉の外では通じない身分ではあるものの、喜ぶべきことだ。それとともに「鳳翔」が配属された。其れに伴い ごく個人的な 上層部からの要請。製油所沿岸に進出する敵・戦艦級撃破の実績が必要であると。確

2013-07-18 23:12:12
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 かに我が艦隊には戦艦級の敵の撃沈経験がない。一艦隊でも多く外洋航路へ送り込みたい軍令部としては死活問題なのだろう。戦力を遊ばせる余裕はない。理解していた。不安は残る。 / 鎮守府で「雪風」と遭遇す。艤装なく、つまり人間としての。鎮守府付の軍学校制服、確かにここ

2013-07-18 23:14:59
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 「蒼龍」および「利根」着任す。故郷の川の名を見て少し嬉しくなる。当人 も話しやすい人でありがたい限り。いよいよ背を押される立場となり、製油所沿岸に居座る戦艦級に挑む。「川内」いわく、週明けに**の試験がある、それまでにはかならず無事帰ると。蒼龍艦載機群の戦闘力は上

2013-07-19 10:23:16
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 々、前哨戦というべき重巡級を中心とした艦隊をほぼ無傷で撃破したとの報。羅盤の機嫌も良く、あと小一時間ほどで作戦海域。戦艦級の根城だ。  /  通信途絶。  / 全滅はありえない。少なくともひとりは。「雪風」は? 彼女ならどうだろうか。

2013-07-19 10:26:22
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 大破4、中破1、欠員なし。  /  高速修復用の禊材を浪費する。軍務。私情ではありません。大丈夫。 いよいよ第四海域に挑む。 ところでボーキサイトのやりくり、どうしよう。

2013-07-19 10:28:39
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 紀26**/**/** 月見里** 記 我艦隊にもとうとう、鎮守府周辺海域の果てへ挑む日が来ました。挑むといっても幾度かの挑戦は行っており、その度に敵空母級により甚大な被害を蒙っては撤退を繰り返していたのですが。危険な海域であり、皆を、■■ 送り出すのに躊躇があ

2013-07-19 20:33:06
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 るのも事実です。しかし鎮守府の提示する事情は、この私の我儘を許しません。一人でも多く、一つでも多くの艦隊による、外洋航路への結界突破。シーレーン確保の至上命令に、幾ら戦力があっても不足はなく、むしろ無尽蔵の深海棲艦により、人類は追い詰められてもいるのです。少女たち

2013-07-19 20:36:14
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 の青春を資源として浪費せねばならない程度には。**は大丈夫だと言います。**は、提督は気の回しすぎだと朗らかに笑って呉れました。「川内」も「雪風」も同じ心持ちだと。艦隊の皆も覚悟はできていると。月見里艦隊は大きくなりすぎました。戦艦「榛名」と、正規空母「蒼龍」。

2013-07-19 20:46:51
里村邦彦 @SaTMRa

#月見里日誌 つまり、ただの学生でない、然るべき訓練を受けた依童による艦娘は、内洋で遊ばせていてよい戦力でなく、その配属された意図は、考えるまでもありません。きょう、お二人の慣熟訓練が終わりました。「川内」は夜戦で負けないと約束してくれました。「雪風」は必ず皆を生きて返すと誓

2013-07-19 20:49:55