【暴力とゆるし②】

宗教学者 島薗進氏による、第2弾です。 知的ハンディの人びとの共同体ラルシュの創始者で独自の思想家でもあるジャン・バニエは「弱い」人「貧しい」人こそ「開かれる」あり方を教えてくれるという。9.11を念頭に平和を論じた『暴力とゆるし』の紹介 です。
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【暴力とゆるし①】

まとめ 【暴力とゆるし①】 宗教学者 島薗進氏の連続ツイートをまとめました。 バニエ氏の9.11後の著書『暴力とゆるし』の紹介です。 3143 pv 30 1 user 35

島薗進 @Shimazono

1【暴力とゆるし②】知的ハンディの人びとの共同体ラルシュの創始者で独自の思想家でもあるジャン・バニエは「弱い」人「貧しい」人こそ「開かれる」あり方を教えてくれるという。9.11を念頭に平和を論じた『暴力とゆるし』の紹介 ttp://togetter.com/li/542218 続

2013-08-02 10:22:08
島薗進 @Shimazono

2【暴力とゆるし②】「わたしたちは、強い人に立ち向かっていくのを恐れます。そのためもっとも弱く、抵抗する力をもたない人たちを、わきに追いやろうとするのです。こういうことはとりわけ、人間として十全な扱いをされず、性的に虐げられてきた女性たち、また虐待をされた子どもたち」

2013-08-02 10:22:45
島薗進 @Shimazono

3【暴力とゆるし②】「自らを守ることのできない障碍者の身に、本当に起こることなのです。拒絶あるいは暴力の連鎖が断ち切られ、弱者が心から迎え入れられ、愛され、尊重されたときに、はじめて平和が訪れたといえるでしょう」心の平和こそ世界の平和の基礎。だが、それは葛藤を避けることではない。

2013-08-02 10:23:36
島薗進 @Shimazono

4【暴力とゆるし②】「いたるところで繰り広げられる争いは、人を無力感に陥れます。臆病になってしまって、争いを見詰め、その原因をつきとめて解決する手だてを考えようとしなくなります。…現実から逃れて、小さな幻想の世界に閉じこもろうとします。平和は、争いを押さえ込むのではなく、」

2013-08-02 10:24:01
島薗進 @Shimazono

5【暴力とゆるし②】「そのさなかに身をおいて、対話を試みることにありまっす。個人であれ集団であれ、劣っているとか、理解力がないなどと見下されず、尊敬をもって扱われたと相手が感じるように。壊れた関係を修復し、争いと分裂が見られるところに、平和と一致をもたらすことはできます。」

2013-08-02 10:24:26
島薗進 @Shimazono

6【暴力とゆるし②】「しかしそのためには、謙虚であり続けることによって変貌していくことが必要です」「わたしたちは、相手が変われば愛せるかもしれないのに、とつい思ったりします。しかし、こういうときに違う態度をとることができる人たちもいます。彼らは自分が相手を大切に思っていることを」

2013-08-02 10:24:50
島薗進 @Shimazono

7【暴力とゆるし②】「まず伝えようとします。そこではじめて、相手は変わり、またそれによって自分も変わっていきます。人が心を開き、変わっていくためには、愛に基づいた信頼がなくてはならないのです」。ここがバニエの経験の中核か。ラルシュ共同体で日々行われ学ばれていることを反映している」

2013-08-02 10:25:05
島薗進 @Shimazono

8【暴力とゆるし②】「自分に深い存在価値がある、と実感できたときに、人は成長します。ものではない、「人」であると認められることが、とても大切なのです」p35-36「見捨てられている」と感じることが孤独と絶望と悲しみの源泉。しかし、人はそこに好んで立ち戻ろうとする、こうバニエは言う

2013-08-02 10:25:58
島薗進 @Shimazono

9【暴力とゆるし②】「平和とは、戦争がないだけの状態を言っているのではありません。また他の人が存在しないかのように無関心な態度で、避けたりしながら、近くで暮らすことでもありません。互いに相手のことを知ろうとし、互いの価値を認めつつ、助け合っているときのことを言うのです」p46-7

2013-08-02 10:26:34
島薗進 @Shimazono

10【暴力とゆるし②】アウシュヴィッツで殺されたエティ・ヒルサムの言葉が引かれている。「最終的に、わたしたちは道徳的にただ一つの義務を負っています」「心のなかに平和な場を広げ、その平和を他者にも伝えることです」。また「ゆるす」ということについては、バニエはこう言っている

2013-08-02 10:27:17
島薗進 @Shimazono

11【暴力とゆるし②】「ゆるす気持ちが「自然に」心の中にわいてくることはめったにないでしょう。むしろ、復讐心、失望、怒りといった感情が、しばしばわき起こってきます。ゆるすという恵みは、与えられるものです。未来に向かって現在を生きることができるのは、他者と自分自身をゆるす力が」

2013-08-02 10:27:46
島薗進 @Shimazono

12【暴力とゆるし②】「神から与えられるからです。こうした恵みをとおして、他者と出会うことができるようになります。受けた傷がいつしか生きるための力となり、傷口をとおして新たなエネルギーがわき出てくることに、気づくことができるでしょう。わたしたち一人ひとりのなかに、この生命」

2013-08-02 10:28:15
島薗進 @Shimazono

13【暴力とゆるし②】「このエネルギーがあるのです」p.54-55。これは「悲しみから生まれる力」についての語りでもある。それは知的ハンディをもった人たちが教えてくれていることでもある。「弱い立場にいて、人とのかかわりを心底求めている人たちが、平和の使者となります。様子や態度で」

2013-08-02 10:28:41
島薗進 @Shimazono

14【暴力とゆるし②】「人を恐れさせるどころか、反対に思いやりをもって分かり合うように、心を開かせる人たちだからです。何か神秘的な道をとおって、わたしたちの心の恐れを取り除いてくれるのです。弱い立場にたった人びとに寄り添ったとき、自らの弱さをも受け入れはじめます。」

2013-08-02 10:28:59
島薗進 @Shimazono

15【暴力とゆるし②】「自分にできないことがたくさんあることに気づいて、自分もまた、他の人を必要としていることに気づくでしょう。自分の傷つきやすさ、弱さに気づいたときに、自分で築いた砦から出て、コミュニティをつくるようになるでしょう」。ゆるすことができるためにはそれが必要だという

2013-08-02 10:29:32
島薗進 @Shimazono

16【暴力とゆるし②】注記。共同体の閉塞についてもバニエは多くを語っている。『人間になる』では個の自律とコミュニティの力とのバランスについて論じ「不安定性の原理」が必要だという。「私たちには人とつながる必要があり、同時に自分自身を確保する必要もある」。以下『暴力とゆるし』に戻る。

2013-08-02 10:30:13
島薗進 @Shimazono

17【暴力とゆるし②】p75に本書の論旨が短く要約された一文が。「自分の弱さに気づいたときに、平和をもたらす人となるのです。ここにある神秘が隠されています。優位な立場にいるから、あるいは権力をもっているから、といって平和を実現することはできないのです。わたしたちの奥深くに潜む」

2013-08-02 10:31:18
島薗進 @Shimazono

18【暴力とゆるし②】「もっとも傷つきやすい部分からわき出る生の力によって、平和はもたされます。あなたにもわたしにもある、しなやかで力強い生命力が源となっています」。なお生きる「心の平和による平和」の理念、ガンジーらの非暴力主義の理念に新たな光を当てた思考を体感できる書物だ。

2013-08-02 10:31:35
島薗進 @Shimazono

ブータンの幸福指数のような考え方も参考になりそうですね。@ann_irie 大震災と原発事故は否が応にも定住型社会における「生産性」概念の問い直しを迫っています…「コミュニティの再生」が鍵と感じている人は多いのを痛感します。

2013-08-02 13:05:51
島薗進 @Shimazono

バニエは「弱さ」「貧しさ」「傷つきやすさ」を手掛かりにしていますね。「愛」や「聴く」ことにも独自の読みを加えています。@ann_irie …不特定多数の個人からなる「都市的」なコミュニティにおいて、人と人とを持続的に結びつけるのは…「普遍的なルールや原理」…どんなものでしょう?

2013-08-02 13:08:39