【暴力とゆるし①】

宗教学者 島薗進氏の連続ツイートをまとめました。 バニエ氏の9.11後の著書『暴力とゆるし』の紹介です。
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島薗進 @Shimazono

1【暴力とゆるし①】ジャン・バニエというカナダ人が始めた「ラルシュ」という共同体がある。「ノアの方舟」の「方舟」の意。知的障害のある人々と共同生活を行う。カトリックがベースだが世界数十か国に広がり、諸宗教の人々が関わってきた。バニエの9.11後の著書『暴力とゆるし』の紹介。

2013-08-01 08:12:23
島薗進 @Shimazono

2【暴力とゆるし①】『暴力とゆるし』2005年。バニエは9.11の後の祈りの集いに参加した経験から語り起こしている。「こうした祈りの夕べに参加したわたしは、少々居心地の悪さを覚えたのでした。わたしには人びとが、国民や国家間に新たな良き秩序が生まれることを祈っているようには」

2013-08-01 08:13:00
島薗進 @Shimazono

3【暴力とゆるし①】「感じられなかったのです。自分たちの暮らしや世界観を揺るがすような変化、あるいは危険を受け入れることができず、現在の自分たちの生活が保てなくなる不安から、ただ祈っているように見えたのです」「そのなかで少数のアメリカ人が、しかるべ問いを発するようになりました」

2013-08-01 08:13:26
島薗進 @Shimazono

4【暴力とゆるし①】「なぜアラブ諸国、イスラム教諸っ国の人びとは、自分たちのことを嫌っているのだろうか。貧しい国々で民主主義を推し進めるためにさまざまな援助をしてきたにもかかわらず、なぜ彼らから嫌われているのだろうか。テロ攻撃の背後に、何があるのだろうか。こうした少数の人たちの」

2013-08-01 08:14:16
島薗進 @Shimazono

5【暴力とゆるし①】「問いは、政府が報復せざるをえないような恐ろしい攻撃にどう対応するかということではなく、憎しみがどこからくるのかを理解し、それに対してどうしたらよのか、人びとの間や異なる文化の間に見られる隔たりをどうしたらなくせるか、というものでした」これは「平和」への問いだ

2013-08-01 08:14:57
島薗進 @Shimazono

6【暴力とゆるし①】どうすれば平和に近づけるのか。「わたしたちみなが望んでいる平和を、政府まかせにするのではなく、一人ひとりがその実現に向けて働かなければならないことに、少しでも多くの人が気づいてくれることを願っています。わたしたちは、だれでも平和の使徒になれるのです。」

2013-08-01 08:15:12
島薗進 @Shimazono

7【暴力とゆるし①】「ラルシュ・コミュニティーで知的ハンディをもつ人々と38年間いっしょに暮らしながら、わたしは平和や争いについての考えを形成し、深めてきました。」「ラルシュ・コミュニティーは、家をもたない人には家庭を、見捨てられた人には尊厳を与えることを使命としています。」

2013-08-01 08:15:37
島薗進 @Shimazono

8【暴力とゆるし①】しかし、実は援助者自身が学び、平和への歩みを助けられてもいる。この経験の核には「心の壁を打ち砕く」ということがある。「わたしたちが、本当に自分自身を開いて、真の人間関係が結べるよう変貌し、心の壁を打ち砕くならば、平和と希望への道はきっと見つけられます」。

2013-08-01 08:16:02
島薗進 @Shimazono

9【暴力とゆるし①】バニエは社会の問題から目を背けて個々人の心の問題に解消しようとしているのではない。現実的な融和・和解のための行動と結び付けて考えている。コミュニティで例示される「平和」が世界の難問の解決のモデルとなりうると考えている。楽観的かもしれないが学ぶところは多い。

2013-08-01 08:16:27
島薗進 @Shimazono

10【暴力とゆるし①】「世界はいくつもの、多かれ少なかれ閉ざされた集団に分かれています。そうした集団がそれぞれ自分たちのほうが優れている、と確信しているとしたら、平和は訪れるでしょうか。もしも、自分たちが正しくてすでにもっている権力や技術力が、人間性と善の象徴であると傲慢にも」

2013-08-01 08:16:55
島薗進 @Shimazono

11【暴力とゆるし①】「思い込んでいるとしたら、他の人との対話は難しくなります。人は言葉の壁にも隔てられますが、恐れが障害をつくるのです。他者が、自分たちのアイデンティティを脅かす存在に思えるのです」。9.11後の状況での言葉だが、東アジアの緊張や原発後の状況にも妥当では?

2013-08-01 08:17:21
島薗進 @Shimazono

12【暴力とゆるし①】「そのため他者に向かって心を開くことに抵抗します。わたしたちはみな、多かれ少なかれ、自分の宗教、家族、仕事の人脈、友人関係といった安心できる集団に閉じこもってはいないでしょうか。家族やそのほかのさまざまな集団が人類の繁栄のためには必要なのですが」

2013-08-01 08:17:39
島薗進 @Shimazono

13【暴力とゆるし①】「閉鎖的になると競争や争い、エリート主義を生み出すことになります」「お金に恵まれた人や権力をもった集団は、貧しく、力をもたない人びとを助けようとします。これは、ときに大切なことです。しかし、金持ちや権力者は多くの場合、達者を自分たちでは何もできない」

2013-08-01 08:18:00
島薗進 @Shimazono

14【暴力とゆるし①】劣った人たちとみなし、道場して恩に着せようとするのです」「人びとが自らを表現し、自尊心を高められるように助けることもなく、相手にその人のもつ価値を知らせないのです。権力を握る人びとは、状況を支配しようとします。というのも、弱者が本来の自分に気づいたときに」

2013-08-01 08:18:31
島薗進 @Shimazono

15【暴力とゆるし①】「何が起きるか、その変化を恐れているからです」。しかし、その恐れは誰もがもっているものでもある。文化圏や国々の間にある恐れと家族の間での争いとに同質のものだある。「わたしたちはみな自分が正しく、他の人が間違っている、と主張しようと」していないだろうか。

2013-08-01 08:18:48
島薗進 @Shimazono

16【暴力とゆるし①】「競争と対立は、わたしたちの社会の多くのものごとの基盤となっているかに見えます。みな、成功し、勝者となりたいのです。競争はもちろん重要ですし、価値あることです。競うことによって新たなエネルギーが生じて、前に進んだり、創造的になったり、それぞれの分野で」

2013-08-01 08:19:03
島薗進 @Shimazono

17【暴力とゆるし①】「さらに能力を高めようとするからです。競争に価値を認めるとしても、競争の上に成り立つ社会は、本質的に危険をはらんでいます。こうした社会にあっては、勝者はつねにわずかで、敗者のほうが多いでしょう。犠牲となる人は、さらに多いかもしれません。」

2013-08-01 08:19:24
島薗進 @Shimazono

18【暴力とゆるし①】「ある人びとが頂上まで上り詰めるいっぽう、うつや嫉妬、怒りの深淵に陥る人も出てきます。怒りは、自分自身や親、社会、教会、神、そして幸福を自分から奪ったと思える、すべての人に向けられるでしょう」。自ら成功の道を降りて、シンプルな生活を歩んできた人の言葉(続)

2013-08-01 08:19:52