晴豆探偵事件簿

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葵希患い @10ve_suki

風俗・金貸し・キャバクラ・ホストクラブ・・・少女はどこを見回しても怪しげな店しか見当たらない路地裏に目的のビルを発見した。 ビルの名前は「ピンクドリーム」 いかにもな店名がビルの内に収まっているなか一つだけ職種の違う店があった。 「晴豆探偵事務所」 #続きはWEBで

2013-08-08 18:09:43
葵希患い @10ve_suki

いざ目的地に辿りついたはいいが、少女は建物の中に入るのを躊躇った。それは、こんな場所で事務所を構えている人物に相談しても大丈夫なのか、という不安からくるものだった。それでも、ここしか相談する場所はない・・

2013-08-08 18:23:49
葵希患い @10ve_suki

なぜならここは「未解決殺人のみ」を解決してくれるという変わった探偵事務所だからだ。 ・・・たとえどんなに怪しいところでも私はあの中に入らなければならない。 ある”殺人事件”を解決してもらうために #続きはWEBで

2013-08-08 18:34:49
葵希患い @10ve_suki

少女が中に入ろうとしたその時ビルの階段から誰かが降りてくる音がした。 ビルの入り口はとても狭く、すぐに入り口と同様に狭く急な階段が上へと伸びている。おそらく、今から降りてくる人と正面からぶつかってしまうと考えた少女は一旦外に出た。

2013-08-08 18:48:40
葵希患い @10ve_suki

降りてきたのは2人の女性だった。風俗が立ち並ぶビルの住人には珍しく黒髪ショートカットのスーツ姿の凛々しい人と、同じくスーツ姿のふんわりとしたボブカットの人だった。ショートカットの人は少女に気づくと、申し訳なさそうに会釈をした。少女の状況に気づいたようだ。

2013-08-08 18:56:35
葵希患い @10ve_suki

少女は気にしなくてもいいという意味を込め会釈を返した。 「知り合い?」 「いや、私たちが降りてくるのを待っててくれたようだ」 「あ、そうか、ここのビル狭いものね。ごめんなさいねお嬢さん」 「いえ、大丈夫です」 軽く言葉を交わして中に入ろうとしたとき、あることに気づいた。

2013-08-08 19:00:14
葵希患い @10ve_suki

「すいません、晴豆探偵事務所って何階かご存知ですか?」 そう、このビルには見取り図もなく、事務所が何階かわからないのだ。 少女の言葉に二人の女性は驚いたように顔を見合わせた。 「もしかして依頼人なんじゃない?」 「そうかも。」 小さく2人は言葉を交わし、少女のほうに向き合った。

2013-08-08 19:05:52
葵希患い @10ve_suki

「私が、晴豆探偵事務所の所長ですが、もしかして依頼ですか?」 ショートカットの人が尋ねてきた。 思わぬ出会いに逆に少女が驚いた顔をした。 「はい。ここは未解決の殺人事件を解決してくれる場所だと聞いて。」 「そうですか、ここでは話はなんですから事務所の方に戻りましょうか」

2013-08-08 19:09:02
葵希患い @10ve_suki

「事務所は4階なんですよ。今日はエレベーターが故障してて、階段しか移動手段はありませんが・・すみません」 「あ、いえ、気にしないでください」 「先輩ごめんなさい。今から仕事ですだから、先に喫茶店に行っててください」 「了解、後で戻るわ」 「はい。」

2013-08-08 19:14:20
葵希患い @10ve_suki

事務所は思ったより広かった。 恐らくビルの中で一番広い間取りを確保したのだろう。 革張りのソファや観葉植物など、目の前の所長が決めたであろう雑貨にもセンスを感じる。 「どうぞ、そこのソファにお座りください。今紅茶を用意しますから」 「すみません」 「いえ、お気になさらず」

2013-08-08 19:18:45
葵希患い @10ve_suki

「先ほどの方と用事があったのではありませんか?もしそうなら私また出直します。」 ふとさっきの二人の会話を思い出して席を立とうとしたが、止められた。 「ただ、コーヒーを飲みに行こうとしただけですよ。気にしないでください。」 「では、用件をお聞きしたいのですが。」

2013-08-08 19:23:45
葵希患い @10ve_suki

「と、言ってもここは”未解決殺人のみ”の探偵事務所ですから、用件はわかるんですけどね」 と言って苦笑いをした。 「あまり依頼が来ないから聞き方が分からないんですよね。なんだろう自己紹介から始めればいいのかな。

2013-08-08 19:28:54
葵希患い @10ve_suki

さっきも言ったから知ってると思うけど私はこの事務所の所長の晴豆です。」 「あの、私は、西園寺 翠(ミドリ)です。今日は父のことについて、依頼をしようと思って・・」 2週間前の7月25日、私の父である西園寺 努(ツトム)が死亡した。 原因は絞殺であった。

2013-08-08 19:32:41
葵希患い @10ve_suki

「絞殺ですか。失礼ですが、自殺という可能性も・・」 「今でもあります。警察の方は自殺とほぼ断定しているようです。」 「そうですか。翠さんはなぜ殺人だとお考えに?」 「それは、家の人間関係が問題だからです」 「人間関係・・」 晴豆さんは小さく呟くと、話しの続きを促した。

2013-08-08 19:40:24
葵希患い @10ve_suki

私、西園寺 翠の家は父、努と祖父、曽祖父の三代で築き上げた、この地域では有名な資産家だ。 三代目の父は所謂「ドラ息子」と呼ばれる人物で今まで築いた財産を食い潰すしか能のない人だ。 だが、母はとても有能な人だ。西園寺家がまだ成り立っているのは彼女の力のおかげだ

2013-08-08 19:46:09
葵希患い @10ve_suki

しかし、やはり父はどこまでも堕落した人だった。 父はキャバクラのホステスに貢ぎ始め、最後は妾にした。だが母は対して気にも留めず、今までもさらに仕事に勢を出すようになった。 それに気を良くした父は妾と共に旅行に出かけるなど金遣いの荒さに拍車をかけた。 「それが前提の話です。」

2013-08-08 20:18:40
葵希患い @10ve_suki

「ご兄弟はいらっしゃらないのですか」 「はい。一人っ子なんです」 「ちなみにその愛人となったホステスの名前は知ってますか?」 「畑中 博美(ヒロミ)です。何度か母が仕事で留守にしている時に父が家に連れてきていました。」 「そうですか。では事件当時の出来事を教えてください」

2013-08-08 20:23:45
葵希患い @10ve_suki

事件が起こった7月25日。珍しく家族全員が家にいた。と言っても、母は書斎、父はリビング、私は自分の部屋、と別々の場所にいた。 事件が起こる2時間前。突然妾である博美が家を訪問してきた。 家に上げるの嫌がった母に対して、「奥さんにも関係がある大事な話をしたい」と博美が言ったのだ。

2013-08-08 20:30:05
葵希患い @10ve_suki

その時点で何かを悟った母は、渋々博美を家にあげた。 「それからは、何の話をしていたのか分からないんですが・・」 だが、段々母と博美が争うような声にびっくりした私はリビングに向かった。 その時だ、母の 「そんな子供なんか中絶しなさい!」 という怒り狂った声が聞こえたのは

2013-08-08 20:40:56
葵希患い @10ve_suki

「それから母は大きく取り乱して、そこらへんにあった雑誌や本を父と畑中さんに投げつけ始めたんです。それで怖くなって私、夢中で母を止めて一緒に外に出ました。その後です、父が死んだのは」 「事件が起こるまでの間、翠さんはお母さんとずっと一緒だったんですか?」 「いいえ。」

2013-08-08 20:47:46
葵希患い @10ve_suki

「と、言うのは?」 「最初はずっと一緒だったんですが、その時に仕事の電話が掛かってきて・・。それで母はそのまま会社のほうに向かいました。」 「会社はどちらに?」 「家の近くです。元々は父が社長だったんですが、母と結婚してからは母が社長に・・。だからよく仕事の電話が来るんです」

2013-08-08 20:50:51
葵希患い @10ve_suki

「翠さんは、お母さん分かれてからはどちらに?」 「家に帰りたくなかったので、図書館にいました。家からは近いです」 「畑中さんの動向は知ってますか?」 「話によると母と喧嘩した後、そのまま店に出勤したそうです。」 「そうですか・・」 そう言うと晴豆さんは黙って考えこんでしまった

2013-08-08 20:59:00
葵希患い @10ve_suki

そしてふと視線を私に戻すと今の状況を聞かれた。 「父は死んだと親戚に知らせたので、ずっと親戚の皆さんの相手をしてます。そして困ったことがひとつ・・」 「困ったこと?」 「遺産のことです。父が祖父や曽祖父の遺産継いだので、その遺産の分け方で揉めて・・・」

2013-08-08 21:03:42
葵希患い @10ve_suki

「畑中さんが、親戚が集まっているときに遺産の分け前を渡せと言ってきたんです。もちろん親戚はそんな話は知らなくて戸惑ってしまって。けど母が『あんたには一銭も渡さない』と言ってて、それでまた・・」 「揉めたんですか」 「はい・・。流石に親戚の前でしたので取り乱しはしませんでしたが」

2013-08-08 21:07:06
葵希患い @10ve_suki

「その時は弁護士も何も決めてなかったので。ただ畑中さんが言うことを聞くことしかできませんでした。」 「今、弁護士の方は決まっていますか?」 「いえ、とてもそんな状態ではないらしくて・・でも毎日畑中さんが遺産をせびりに来るので精神的に参ってるんです」 「それなら・・「私に任せて!」

2013-08-08 21:11:53