水蜜

フラ花後日談。あるいは甘い果実と、さらに甘いもの。たつさやなのかその逆か(ぷ)。そのうちテキストとして書き直す予定(は、未定)
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犬子 @27000hz

緒方家にお手持ちにする桃を見つけられてしまった。そこはかとなく匂いがしたのだという。「何、これ」と髪袋を開けられ、出盛りの、食べごろの香りがぷん、と強く漂うのに鼻を鳴らして、向けた視線がじとりと責めている #水蜜

2013-07-28 22:13:40
犬子 @27000hz

「花白さんたちへのお土産、ですよ…」以前花白さんたちに食べてもらったときのご機嫌振りが忘れられず、この時期はついつい奮発したくなる。勿論、家主の二人にも美味しいだろう品物だ。「そう」「タツキの分も冷蔵庫に冷えていますよ?」本当はそこが問題ではないのだけれど #水蜜

2013-07-28 22:20:47
犬子 @27000hz

タツキは私の元バディとは決定的に気が合わない。お互い大人同士だから周囲に気を使わせるような対峙の仕方はしないけれど。「今日は和人は留守らしいので一緒に行きますか?」「行かない」言うと同時に、ぷい、とそっぽを向いてもおかしくないニュアンスで返してくる #水蜜

2013-07-28 22:33:35
犬子 @27000hz

恋心を抱いた時期があるとはいえ、今は元バディで、油断はできないが数少ない気の置けない友人の伴侶も、あちらの認識は知る由もないが、私にとっては大切な友人である、ことも知っているから「行くな」とは言わない。言えば私が他方を切り捨てて傾くのがどちらかも知っているから #水蜜

2013-07-28 22:44:09
犬子 @27000hz

他者の愛情の大切さを知っているからこその思いやりを有難いと思う。奔放そうに見えて、本当は自分のわがままをめったに言わない優しい人と一緒にいることを幸せに思う。だけど、どこかで少し寂しく思うのも、わがままを言わせてなんでも聞いてあげたいと思うのも確か #水蜜

2013-07-28 22:53:08
犬子 @27000hz

そんなことを考えていると「あんたは、あっちで食べるの」とぼそりと言う。「さあ」花白さんたちのおいしそうに食べる姿を見たいから一つ二つは切ってもらうつもりだけれど。「これ、あんた、味見したの」「いいえ?」何度か他の果物を入手して外れの無かった店のお勧めを買ったから #水蜜

2013-07-28 23:02:20
犬子 @27000hz

「へえ。慎重派にしちゃ」らしくない、と続けながら冷蔵庫で一つぽつねんと冷えていた桃を取り出して「じゃあ、毒見してやるよ」と、人肌じみた柔らかな毛のはえた果物をそっと私の掌に預けてくる。「剥くの苦手なんだよ」「洗えば皮ごと食べられますよ」と言えば「毛がちくちくして厭だ」#水蜜

2013-07-28 23:14:34
犬子 @27000hz

そんな些細で、こちらを甘やかしてばかりいて、めったに言わないわがままは、まだ出かける時間まで余裕があると測って言い出したのだと分かっている。それに桃の汁はしみになって取れない。包丁を出そうとすると「まるかじりしたい」というのが微笑ましく、つい笑ってしまえば #水蜜

2013-07-28 23:26:07
犬子 @27000hz

憮然として「子供っぽいと思うんだろ」というけれど「Kも、そうやって出してくれたんでしょう?」とかえせば、ほんのちょっぴりぎょっとした顔をのぞかせて、神妙な表情の中に埋もれさせたのは、見なかった顔で薄い皮を丁寧に剥いて、大きな皿に果肉が痛まないようにそっと乗せる #水蜜

2013-07-28 23:38:35
犬子 @27000hz

「汁、こぼさないようにお願いしますね」「…あんたたちって、変なところだけそっくりだな」と呆れたように、しかしどこか嬉しげに無防備な果実を両手でもって口元に持っていったところで止めて、眼を細めるのが、なんだか可愛らしい。言えばきっと怒るだろうから、言葉は喉元に閉じ込める #水蜜

2013-07-28 23:56:57
犬子 @27000hz

そのままかぷり、とかぶりついた先から、芳香と果汁が滴る。咀嚼する音もどこか水めいた潤いを感じる。うまい、と一言落とすと、気に入ってくれたらしく、無心にかじりついているのを眺めながら、いくらか落ち加減、かもしれないから、彼らにも早く食べてもらったほうがいいだろうと思う #水蜜

2013-07-29 22:11:38
犬子 @27000hz

この人は食べ物を有難がって、とても美味しそうに食べる人だ。私はそんなに量を食べれず、あまり執着もしないほうだったけれど、この人と一緒にいるようになってから、本当の食べる楽しみを知ったような気がする。今もどんどん小さくなってゆく果実と反比例して、心が満ちてゆくのを感じる #水蜜

2013-07-29 22:28:14
犬子 @27000hz

そうやってタツキを食べる様子をもったりと愛でていると、いかにもしまったと言いたげな鋭い声で「あ」と一音。ころり、と皿に種を転がし「ざまあねえな。あんたにも毒見させようと思ったのに」と置く言葉に僅かに振りかかる後悔の色が愛しい感じだ。「美味しかったならいいんです」 #水蜜

2013-07-29 22:39:31
犬子 @27000hz

なんだか自分も一緒に食べたような達成感が気持ちだけではなく腹まで満たしている。「貴方が美味しいと思ったものなら私も安心ですし」そういうと、珍しく「でも」と返してきそうな視線を投げてくるから。「それに」と言いながらタツキの手を取って #水蜜

2013-07-29 22:46:09
犬子 @27000hz

まだ濡れたその指で、皿の上に随分滴っていた果物の雫をぬぐうようにさせて。「こうすれば私も味わえますから」それを自分の口元まで引き寄せて、そっと吸ってやる。「莫迦。自分から汚れに来て」とたしなめる中に動揺が潜んでいるのに密かにほくそえんだ #水蜜

2013-07-29 23:01:30
犬子 @27000hz

たしなめる割におとなしくされるがままに手を預けるひとに、いい気になって。ひとしきり不埒にしゃぶりつくしたところで、帰ってきたら、もっと甘いものをあげますよ、と生意気に言おうとしたその時。「もういいや」と腕の中に囲い込まれたのだった #水蜜

2013-07-29 23:28:21
犬子 @27000hz

まあ直後から暗転(釣りバカだと黒地に白で2文字のアレな)して、約束を1時間近く遅刻して、蓉ちゃんと花白さんたちに額づくようにして謝るでしょうな(爆)そしていたしてきたというのも多分ばれると(核爆)しかし桃旨いですね。毎日喰ってるけど飽きないね! #水蜜

2013-07-29 23:33:00
犬子 @27000hz

遅刻以外何事も無かったように蓉ちゃんに切ってもらった桃を花白さんたちに食べてもらって、愛らしさを満喫すると思われますが、直前のどたばたがほんのり見え隠れしてバレバレであると。「あのさやせんせいがちこくとは あのたつきとやらの せいであるな」(したり顔の花白さん)#水蜜

2013-07-29 23:39:43
犬子 @27000hz

しかしうさぎにしたり顔などあるのだろうか。うさぎを崇め奉ってる友人曰く「ある」んだそうだけど

2013-07-29 23:40:35
犬子 @27000hz

花白日記:なぜ おとこたちは くだもののかわをむくのが めんどうだから ともうして たべぬのか おがたやタツキは むいたらたべるというさらに あまったれたことを もうしておる きたえなおすべきだが ああっ ようさま あまやかしてはなりませぬ さやせんせいもですぞ!(ぴょんたか)

2013-07-31 12:22:44
犬子 @27000hz

花白日記:くだものは かわと みの ごくわずかな せつごうぶぶんに ほんとうに たいせつなえいようははいっているのだと ぶんめいのりきで うさぎさえしっておる たべてもしぬことはないのだ むくのがいやなら そのまま たべるがよい そこのおがたとタツキ(仁王立ち)

2013-07-31 12:25:10