第二大罪大戦《第四の狭間》【戦闘フェイズ1】

紅(ルージュ)は嫉妬、アンヴィ・ナルシス(@HeNotShe_Envie) 黒(ノワール)は傲慢、ベルカイン(@fusui_kouryu) 狭間に出で遭い、交叉する。
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黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

粘つく視線で【紅】を見る。 「その、通り。我は己が大切なのだよ……我が、世界となるために。そうであるために此所にいる――だからこそ!!」 完全に進化し、最たるモノにならねばならぬのに! 「あァ、う、ア」 かきむしるが如く、左手が頭を覆う触手を千切り始めた。→

2013-08-07 03:42:46
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

「ダ、メ――あ、あああ、ア、ぐ、やめ、ロ、出テ、くる、ナ」 男女混合の声音が大鐘のようにに鳴り響く。【紅】の声すら耳に入らない。 千切られた触手は沼にそのまま落ち、水面に浮く。 ――そして、触手の半分をも無くしたとき、カインの姿が変容していく。 大人から、子供へ。

2013-08-07 03:44:46
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

大人から子供へと、黒の傲慢の姿が変わっていく。一度の『不信』で失われるのは一つだけ。だからこの変化は、僕のもたらしたものじゃない。 「きみは、誰だい?」 罪科の力を抑えて問いかける。それは、できるなら僕自身の言葉で殺(こわ)してやりたいと思うから。僕は、自分の罪科にすら嫉妬する。

2013-08-07 11:35:57
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

『不信』は込めず、泥中の足を一歩歩み寄せて、甘く睦言を囁くように。 「ねえ、きみ、本当は世界なんて大嫌いなんじゃない? だってそうでしょう。きみ自身が世界に成り代わるというなら、今ある世界はどうなるの? ねえ、きみは本当は世界を恨んでいて、消し去ってしまいたいだけなんじゃない?」

2013-08-07 11:36:02
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

さらに一歩、近づいていく。 「ねえ、きみ、本当は自分なんて大嫌いなんじゃない? だってそうでしょう。きみは自分のことを『化物』と言ったよね。右腕のことを『一番の力作』とも。どんなに理想に近付いても、卑下してしまう、しなければ受け容れられない、そんな自分が、疎ましいんじゃないの?」

2013-08-07 11:36:08
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

異形なのは足と左手、左の側頭部。 【黒】の前で見せているいつもの姿に戻った彼は暫く呆けていた後【敵】の言葉にふるふると首を振った。 「ボク、の名前はナイショ、なのヨ。大切なモノにしか教えられない、ネ」 【黒】の誰かなら不思議に思ったろう。初対面である相手に『媚びぬ』彼を。→

2013-08-07 15:28:09
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

【敵】の問いに微笑み、無造作に近付きながら首を傾げる。 「世界を壊す、嫌う、良くないヨ。今ある世界を革命、するのネ」 眼前にある赤い胸飾り、否、別のことに瞳を輝かせながら。 「そのための、進化ネ。皆、みんな、みぃぃいいんなボクと同じになれば、ボク、は変じゃない、デショ?」→

2013-08-07 15:31:58
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

「ボク、はまだ化物だけど、不出来だから、なのネ。皆もそう。だから、ボク、がどうにかしてあげるのヨ」 眼に浮かぶは海のように深い『愛』。 自己愛を越え、傲慢と成り果てた『愛』。 「……爆ぜロ」 刹那、沼地の触手が破裂した。中から出た【外れ】が瞬く間に沼をぶ厚い氷土と変える。

2013-08-07 15:37:36
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

子供の姿に変わって振る舞いもまるでそのようなのに、あるいはだからか、近付いてくる彼に、ゾッとする何かを感じ取る。『不信』でも『理解』はできる。これは『理解できないもの』だと理解できる。 ――ボクトオナジニ―― 記憶の中の紅の皆やシェスやクァートの姿が、目の前の異形と重なって歪む。

2013-08-07 17:21:44
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

頭を振る。嫌だ、嫌だ、嫌だ! そんな世界は信じない! 僕が望んで手に入れた、美しい『人』の形が、なくなってしまうなんて信じない! 彼にそれが成せるなど、信じない! 信じられるわけがない! 後退ろうとしたその時、命ずる声とともに飛び散った何かが黒の沼地を白く凍て付かせた。

2013-08-07 17:21:46
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

当然、泥中に沈んでいた足は捕らわれる。僕の肉体には、ただの人間が備えている程度の力しかない。 『不信』を解き放つ。僕にはもう、それしか抗うすべはない。彼にありったけの『不信』を植え付けて、全てを失わせなければいけない。 「きみの罪科は何!?」 問いかける声は、焦燥に上ずっていた。

2013-08-07 17:21:51
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

ふと、今自分が何をしていたのか分からなくなる。黒――否、凍土たる地面から昇る白い靄。 これは、液体窒素だ。触手の中の【外れ】の一つ。 ……どうしてそんなものを使ったのだろう。 自分の足すら氷に挟んで。 《君の罪科は何!?》 困惑する脳裏の中、抜け落ちた記憶を撫でる声。→

2013-08-08 18:49:08
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

広く、無限に続くような空間に置き去りにされ、不安が募る。誰もいない世界。誰も自分を見ない世界。 ――そんなもの、いらない。 《君の罪科は何!?》 声音は強く大きくて、シェスを思い起こさせる。 彼は生きているのだろうか。大きな掌で、また頭を撫でてくれるのだろうか?→

2013-08-08 18:50:17
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

寂しくて辛くて悲しくて、一人という事実に耐えきれずすがりつく。 声だけでもいい、自分を認識してくれるなら。 「愛、ヨ!! ボク、の罪科は、愛――」 狂乱をまぜて応えた瞬間、脳裏から何か大切な誰か? 何か?が硝子のように砕けて、消えた。→

2013-08-08 18:52:43
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

そして瞳孔が開いた目に映るは、【紅】。 「あ、あぁあああああああああ!!!!!!」 いた、いた、いた! 自分を見る存在がそこにある! 正気などない。早くこれも染めなければ。自分の愛で染めなくては! 左腕の分厚く長い触手は、温もりを求め【敵】へと向かい瞬時に踊り出す。

2013-08-08 18:56:31
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

何を失ったのか、見ているだけではわからなかった。ただ、彼は答えた。失われたのは、目に見えない何かだ。あるいはそれが、『座』や『罪科』であれば……と、その逡巡が、次の問いかけを一瞬遅らせた。 その隙に轟いた絶叫に身を竦ませる。足は氷に囚われていて動かせない。伸ばされる異形の触手。

2013-08-08 20:25:39
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

こちらを見る目に理性的な光はなく、読み取れるのは狂気。加速する危機感。 「嫌だ、来るな、触るな……!」 両手を伸ばして、迫り来るそれをせめて遠ざけようと足掻く。掌ではたき落とすように腕を振る。 「黒が、僕を捨てた、僕を■した、僕を忘れた、黒(ふるいつみ)が、僕に触るなッ!」

2013-08-08 20:25:43
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

【紅】の輝くような目が、柔らかそうな肌が、優しそうな手が、声が、顔が。 自分を拒絶し続ける。 「ボク、は、ふるいつみ、じゃあないッ!」 幼子が泣き叫ぶような咆哮を返し、弾かれる触手を一見無造作に――だが本能に従い相手の隙を窺いながら蠢かせた。

2013-08-09 03:26:51
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

「見てヨ! 大罪のボクをっ」 爪を立て、相手の声をかきけす。 「ボクはっ」 唇を縫い合わせていた糸が切れ、覗く犬歯。 狂気と不安に塗れた激情に、触手は踊る。 「ボクの真名は幸せな毒《グリュックギフト》! キミをっ、世界をっ! 愛するために産まれたんだヨォオオオッッ!!」

2013-08-09 05:43:32
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

鉤爪の生えた触手が、僕の顔を掠めた。咄嗟に庇おうとした右腕と、右頬、右耳を引き裂かれて、黒く腐った毒血が噴き出す。噎せ返るような、濃い、水仙の香りが立ち込める。 その痛みを感じると同時、僕は、現実を忘れた。 僕の目は狭間の風景を映さず、夢を見る。あたたかい、ここは、水仙の湖。

2013-08-09 12:11:36
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

僕は湖底に沈んで、ゆらゆらと水面に揺れる光を見上げている。 ここでは、どんなに泣いても、涙は流れない。どんなに叫んでも、声は聞こえない。 「ああああああアアァァァアアァ」 慟哭。 夢の外から見れば、虚ろな目で立ち尽くし、滂沱の涙を流して叫ぶ僕の姿は、どう映るだろう。

2013-08-09 12:11:39
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

幾つかのかぎ爪が確かに相手を捉えた。 途端、散布される毒血の芳香と触手にかかる熱さに笑う。 「あ、ハッ」 生の証、温もり、それらをしかと感じて。 「嬉しいの、ネ」 【罪科】の効果に彼は哭いている。きっと何よりも優しく、愛しい夢を見ているのだろう。→

2013-08-09 14:49:13
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

ああ、こんなにも喜んでくれているなんて。 愛を感じてくれているなんて! 大気に響く声音と溢れ流れる涙が愛おしい。 「でも、ダメヨ」 狂喜と哀愁と、少しの憐れみを込め。 「ボク、を、拒絶するモノは、いらないの、ネ」 首へ狙いをつけ、全てのかぎ爪を一気に横凪ぎに振るった。

2013-08-09 14:53:30
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

それは大罪としての本能か。僕は自分の頭を両腕で抱えて、叫ぶ。 「――信じない!!」 首を狙って襲い来た鉤爪は、首でなく僕の腕と顔面を引き裂いて通り過ぎた。黒い血が飛沫く。まだ夢のなかにいる僕に痛みはない。 信じない。僕が■■■なんて、君が■■■なんて、『愛』なんて信じない。

2013-08-09 15:21:59