平行世界編

東京で狡噛がみんなに尻を触られている中、道頓堀川を眺めていた槙島はとある世界にスリップする…そこは数ヶ月後の東京だった
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@maximabailiff

その頃東京】縢「今日は…つか、れ、た…」朱「さすがに疲れましたね」狡噛「……」征陸「どうしたコウ」狡噛「…なんでもない」征陸「なんだ?」弥生「触られたのよね」征陸「なにを」弥生「お尻」征縢朱「!!」狡噛「なんでお前、知って!?」弥生「別に(見てたから」狡噛「助けろよ!」

2013-08-10 23:02:30
@maximabailiff

縢「待って待って、相手が男か女かで俺の今後の対応が変わってきちゃうよ〜?」狡噛「…言うわけないだろ」征縢朱(男だな)弥生「両方よ」征縢朱「!?」狡噛「だからなんで知って…っていうか助けろよ!」弥生「嫌がってないようだったから」狡噛「そんなわけないだろ!」縢「振り払えばいいじゃん」

2013-08-10 23:06:41
@maximabailiff

朱「あの、他の方はそういうセクハラありましたか?」一係首を横に振る)朱「じゃあ狡噛さんだけ、なぜ」縢「そんなに触りたくなるのかねえ」征陸「どんなケツだ、老若男女が触りたくなるケツってのは」弥生「そこにいい見本があるじゃない」縢「コウちゃん見せてー」狡噛「は?」

2013-08-10 23:13:48
@maximabailiff

朱「立ってください狡噛さん」征陸「そうだ、お前にはその宿命があるぞ」狡噛を立ち上がらせ)縢「なるほど、これが男も女も虜にするお尻かあ」征陸「形はたしかにいいな」朱「ぷに)意外にやわらかい」弥生「ぷにぷに)本当ね」縢「ぷにぷに)おお、これは」狡噛「お前らバカだろう」

2013-08-10 23:20:51
@maximabailiff

グソンからのメール「✲゚。.(✿╹◡╹)ノ☆.。₀:*゚✲゚*:₀。 今晩はダンナ、狡噛監視官のケツがみんなに狙われていますよ」槙島「コミケの警備で頭やられたか」

2013-08-10 23:31:33
@maximabailiff

槙島「少し席を外すよ」佐々山「おう、行ってらっしゃーい!」ギノ「俺もついて行く」槙島「いや…少しだけ外の空気を吸うだけだ。気になるならGPSで追ってくれてもいい」ギノ「…わかった、一応そうさせてもらう」槙島「すまないね」外に出る槙島「ふう…夜でも蒸し暑いな…」

2013-08-10 23:54:15
@maximabailiff

道頓堀川を眺めながら)槙島「ここは面白い街だ…混沌としている。まるで迷宮だな」目を閉じ、人々の喧騒を聴く。やがて喧騒が遠ざかり、ふわりと体が浮いたような気がした。槙島「ん?」目を開くと、そこは見知らぬ場所、目の前に道頓堀川などない。いや、見知らぬ、というよりも良く知った風景だ。

2013-08-10 23:57:46
@maximabailiff

あたりを見回して、そこが東京の風景であることを認識した。風が冷たく、身体がぶるっと震えた「寒い…どういうことだこれは…」腕にかけていた上着を着るが夏物なのであまり防寒効果はない、だが、ないよりはマシだ。腕時計型のデバイスで温度を確認しようとしたところ日付が目に入ってきた。

2013-08-11 00:05:28
@maximabailiff

2113,2,6,「これは? 8月10日だったはずだが…」デバイスの故障かとも思ったが、体感気温はデバイスの表示通りの季節と一致する。槙島は人の多い通りへと出てみた。ビルの上の電子広告を見るがやはり日付はデバイスと同じだった。「2月…6日」一人つぶやく槙島。この日付に覚えがある。

2013-08-11 00:12:16
@maximabailiff

「たしかもう一人の僕と狡噛がノナタワーで…」その刹那、上空を低空飛行でティルトローターが飛び去って行った。一呼吸しない間にビルとビルの間から爆音とオレンジ色の炎が見えた。そして足元に、赤い本が落ちてくる。拾ってみるとサドの「悪徳の栄え」だった。「これは僕が藤間に…いや僕じゃない」

2013-08-11 00:17:48
@maximabailiff

すぐさま目に付く高層ビルの屋上を見上げた。あのティルトローターから飛び降りるなら…どのビルにするのだろうか。僕ならばどこに…ティルトローターの墜落する直前、ぎりぎりの高度で避けたビルが一つだけある。そこならば、もしかすると…槙島は赤い本を投げ捨てて走り出した。

2013-08-11 00:21:54
@maximabailiff

ビルのセキュリティは公安には未承認でグソンに作らせたキーを使用することでロックが解除された。システムの内容は変わらないらしい。ほぼ、ドローンが行き交うビルのセンターエスカレーターで一気に最上階へと向かう。エレベーターが止まると、そこからは階段で屋上へ出なければならない。

2013-08-11 00:27:02
@maximabailiff

階段を登り切り、さらにキーを使って扉を開く。いくらなんでも、あのティルトローターから飛び降りて無事なわけがない。たとえパラシュートの類を使ったとしても…風が槙島の体を取り囲む。ここにいる保証はない、だが、探さずにはいられないのだ。ヘリポートの真ん中に立ち周囲を見渡す。

2013-08-11 00:32:46
@maximabailiff

隅のほうに、くしゃりと潰れた布が転がっていた。近寄ってみると、やはりパラシュートの残骸だった。丸まった布を手で掻き分けると、そこには検査着を着た彼が目を閉じて眠っていた。自分とよく似た、もう一人の槙島聖護。たった今、唯一の仲間の消滅とシビュラの真実を知ったばかりの……

2013-08-11 00:37:19
@maximabailiff

平行世界の自分に触れると時空に歪みが生じる、なんてSFの本で読んでいたせいか触れるのを少しだけ躊躇った。恐る恐る指先で頬を軽く突っつく。だが、何も起こる気配はない。今度は大胆に頬をつねる、がもう一人の槙島聖護は起きる気配がない。「さて、ここからどうすべきか…」槙島は目を細めた。

2013-08-11 00:40:29
@maximabailiff

ここに放っておいても、この物語は筋書き通りに進むかもしれない。だが、それならばなぜ自分はここに呼ばれたのだろうか、なんのために…槙島は聖護(もう一人の自分をこう呼ぶことにした)のハーネスを取り、両腕に抱えた。検査着が風に揺れ、傷を負った脚が覗いた。「どこへ運ぶか…」

2013-08-11 00:45:11
@maximabailiff

数時間後──とある一室のベッドで眠っていた聖護は、顔を一瞬歪ませてから目を開いた。ぼんやりとした室内は見覚えがある。ここは歌舞伎町のセーフティハウスだ。どうやってここまで来たのか記憶がない。痛みのある頭を抱えて起き上がると、ベッドの脇に人影がいた。

2013-08-11 00:49:52
@maximabailiff

ぼんやりとした視界に、その人影の輪郭がはっきりと形を成してゆく。白灰の髪、黒いスーツを着込んだ人物…その男は立ち上がって聖護の顔を覗き込んだ。「これは何本に見える?」差し出された指の本数を数える「三本、だ」男は納得して「意識ははっきりしているかな」と誰ともなく呟いた。

2013-08-11 00:53:12
@maximabailiff

「誰…だ?」頭を抱えながら問う。すると男は静かに笑った「この顔を見れば自ずと答えは出るんじゃないかな」「だとしても、訊きたい。なぜ僕がそこにいるのかを…それにその格好は…まるで公安の犬だ」男は自嘲気味に笑いを止めない「言い得て妙、だよ。僕は君だけど、君じゃない。幻のようなものだ」

2013-08-11 00:57:05
@maximabailiff

「幻、なるほどね…僕はそれだけ頭部を強く打ったのかな…」「そう思ってくれて構わない。一応手持ちの装備品で手当はしておいた。おそらく治療に関しては君より知識と経験はあるかもしれないね」「ふうん…」「それで、これからどうするんだい」「……」「まだ策は残っているんだろう」

2013-08-11 01:00:49
@maximabailiff

聖護「ドッペルゲンゲルの出現は、しばしば当事者の死を予告するからでございます」槙島「…芥川龍之介の「二つの手紙」かね」聖護「僕は無意識のうちに死期を具現化して視ているのかもしれない」槙島「……」聖護「まだ、策はあるよ」槙島「実行するのかい」聖護「そのつもりだが…」

2013-08-11 01:06:35
@maximabailiff

聖護「まるで君はこの未来(さき)のことを知っているかのようだね」槙島「…さあ、どうかな」聖護「君がドッペルなのか、はたまた未来か、違う世界から来たのか…本当に幻なのかわからないが…君は僕の傍で何をするつもりかな」槙島「…君の魂の輝きを…見守る」聖護「…ははっ、なるほどね」

2013-08-11 01:11:08
@maximabailiff

聖護「たしかに僕ならばそうするに違いない。なるほど、君は僕だ」槙島「邪魔をするつもりはないよ」聖護「わかっている」しばらくの沈黙のあと、聖護は目を閉じて鼻をくんくんと匂いを嗅いだ。聖護「なにか匂いがするね」槙島「トマトリゾット、食べるかい」聖護「君が料理を?」槙島「いろいろとね」

2013-08-11 01:15:39
@maximabailiff

トマトリゾットを皿に盛り、聖護の元へと運ぶ。聖護「いい香りだ」槙島「とあるカウンセラーに教えて貰った」聖護「カウンセラー?」槙島「こっちの話だよ」聖護「ふうん…」一口咀嚼すると聖護は「うん…」とだけ言った。槙島「君の邪魔はしないが、ご飯ぐらいなら作るよ」聖護「フフ…妙な話だ…」

2013-08-11 01:19:49
@maximabailiff

徐々に体力が回復し始めた聖護は、ネットで何かを調べたり道具を揃えている。槙島はそれを横目で見ながら、彼のためにご飯を作る。もう一人の自分のために、そんな奇怪な生活が二日ほど続いた。その間に、聖護は本の話をした。二人の会話はそれぐらいで、お互いに何かを探り合ったりはしない。

2013-08-11 01:24:31