【twitter小説】イミルアの心臓#2【ファンタジー】
誰しもがここで昔失くした忘れ物を見つけるというがらくただらけの館に、観光客のフィルとレッドが訪れます。 @decay_world はツイッター小説アカウントです。この話は#4まで続きます
減衰世界
@decay_world
「いつまでもこんなこと続けるわけにはいかないのです。忘れ物たちはどんどん増えています。いずれ許容量を超え、忘れ物たちは暴走し館を飛びだすでしょう。お願いです、イミルアを……ここから連れ出してください!」 57
2013-08-05 21:21:00
減衰世界
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「そういえば君も忘れ物を取りに来たのかい? 随分ここに詳しいみたいだけれど」 「私は……」 そのときフィルは”静かに”のジェスチャーをして会話を遮った。何か機械の駆動音のような音が聞こえる。 58
2013-08-05 21:27:22
減衰世界
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ミシッ……ミシッ……と館の床板を重い物が踏む音が聞こえる。やがて大きな鎧が闇の中から姿を現した。滑らかな群青に光る装甲、関節で稼働するモーター。フィルとレッドはこの鎧に見覚えがある。モスルート製の戦闘機動鎧だ。 59
2013-08-05 21:33:29
減衰世界
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「あの女性……イミルアと言うのか。素晴らしい名だ。ますます……貴様らには渡したくないものだな」 鎧の隙間から市長の声が聞こえる。意識が戻って出直してきたか。シンクアイは市長をきっと睨む。 60
2013-08-05 21:41:13
減衰世界
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「他人の思い……他人の記憶を踏みにじることなど許されません。あなたにはきっとイミルアは微笑まないでしょう。もう、やめてください!」 シンクアイは市長に訴える。市長の表情は窺い知れないが、そんな言葉で考え直すようなら観光客狩りなどしないだろう。 61
2013-08-05 21:47:22