空想の街・ハンツピィの宴 4日目

空想の街・ハンツピィの宴の4日目です。 編集可にしてあります。編集を入れているので時間順はご遠慮ください。 漏れ等ありましたら主催か公式アカウントまでお願いします。
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木船田ヒロマル @hiromaru712

警部の娘……。 いや、人の名前を吸うネームサッカー……「吸名魔」か‼ 長い髪。パジャマ姿の少女は、低くくしわがれた老人のような声を絞り出す。「生きていたとはな。ネームハンター。私の操り人形が、確かに落とした筈だがな。死と静寂の異次元世界に」 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:07:04
木船田ヒロマル @hiromaru712

宴の……祭囃子に誘われてな。地獄の底から舞い戻って来たぜ。 「私の食事の邪魔は大概にしてもらおう。人間にはこういう時に言う決まり文句があったな。そう、確か……『食べ物の恨みは怖い』」 仮面の警部が俺に殺到し腹に重たいパンチを叩き込む。ぐぉっ⁉ #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:07:20
木船田ヒロマル @hiromaru712

遠のく意識を歯ぎしりで繋ぎ留め、警部の膝裏を捉えた俺はそのまま体を浴びせて警部を強かに転倒させる。後頭部を打った警部は動かなくなった。銃を両手で構え、少女の眉間に照準を重ねる。 ……お前の悪事もここまでだ吸名魔‼ その子を解放しろ!3つ数えたら撃つ。 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:07:36
木船田ヒロマル @hiromaru712

ひとつ! 「ハッタリだ。この娘を撃てばこいつは死ぬが、私を殺すことはできないぞ」 だが次の宿主を探す間、お前の凶行を防げる!代価が子供一人なら安いもんだ。 ふたつ! 「この娘にはなんの罪もないぞ?本当にたまたま、私の目に止まっただけだ」 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:08:06
木船田ヒロマル @hiromaru712

「それでもこの娘を撃つのか?そんな権利が貴様にあるのか?」 俺が撃たなくてもどうせお前に取り殺されるんだ。事故や病気と一緒さ。同情はするが余計な情けはかけねえ! 「……なら撃つがいい。撃たれる瞬間だけはこの娘の意識を戻してやろう」 ……みっつ‼ #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:08:18
木船田ヒロマル @hiromaru712

俺の放った弾丸は一直線に少女に飛び、左の頬を掠めてその長い髪に刺さって抜けた。 ……クソッ‼ お前は銃の背で自分の額を叩く。 「やはり無垢な少女は殺せんか。正義の味方のネームハンター!」 再び仮面の警部がぎくしゃくと起き上がる。手に例の短剣を持って。 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:08:43
木船田ヒロマル @hiromaru712

そして凄まじい速さの連撃をフラフラの俺に容赦無く打ち込み始めた。銃を盾に防戦一方の俺。 「ひひゃひゃひゃひゃ……抉り出したお前の名前、お前の目の前で喰ろうてやるわ。ばりばりと、音を立てて、味わいながらゆっくりと、な!」 勝ち誇った奴が高らかに嗤う。 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:09:01
木船田ヒロマル @hiromaru712

【ガ、ギン‼】 強打に弾かれて銃が後ろに大きく逸れる。 【サクッ】 ガラ空きの左胸に、仮面の警部は欠片の迷いも無く黒い刃を突き立てた。 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:09:17
木船田ヒロマル @hiromaru712

「お別れだ!ネームハンター‼」 奴の勝利宣言は聴こえていたが、それより俺は自分の胸から、刃の深々と刺さった傷口から聴こえる音に驚いていた。 ……風の音。車や、電車の音。建築機械の工事の音。そして……数え切れないほど多くの人々の、声。 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:09:49
木船田ヒロマル @hiromaru712

泣き声、笑い声、囁き、罵倒、怒声、そして……愛の言葉。 次の瞬間、傷口は光を放つと刃を吹き飛ばして粉々に砕いた。そこから溢れ出たものは宝石ではない。無数の……大小様々の光の「手」だった。 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:10:18
木船田ヒロマル @hiromaru712

幾千の「手」は空に上がった花火のように爆発すると、すぐに光の粒子になって傷口に吸い込まれた。光の粒を全て飲み込んだ傷が閉じると、後には仮面の警部が大の字になって倒れていた。 悪魔の少女は初めて動揺の色を見せる。 「今の名前は……貴様は!一体⁉」 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:10:36
木船田ヒロマル @hiromaru712

そういや、誰かが言ってたな。俺は普通の人間じゃない。剥がれて失われた、この不思議の街の「名前」なんだ、と。 「街の……名前⁉」 悪いが俺も憶えちゃいねえ。だが親代わりのお節介が付けてくれたダサい名前があるから、不便はしてねえのさ。 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:10:51
木船田ヒロマル @hiromaru712

「お前は私を撃てない。撃てば死ぬのはこの娘だけ。なんの工夫もない普通の弾が、高貴な悪魔である私に通用すると思っているのか?七篠権兵衛!」 そんなこと、これっぽっちも思ってないさ。 ……ファウルフェザー!!! #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:12:57
木船田ヒロマル @hiromaru712

驚愕の表情で言葉を失う少女から銃口を外すと、俺は倒れた警部の被る黄金の仮面に狙いをつけた。 「ま、まさか!ヤメロ‼」 教えてやるぜ。人間にはな、こういう時の決まり文句があるんだ。即ち……。 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:13:11
木船田ヒロマル @hiromaru712

「因果応報!!!」 【タァァァ…ン‼】 【ビシッ…‼ ピキピキピキピキ…ッ】 【パリン…】 「ぅぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ……ッッ‼」 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:13:20
木船田ヒロマル @hiromaru712

割れた仮面からもうもうと立ち昇る黒い煙の渦は、一瞬苦悶の表情の怪物になると、すぐ力を失って夜の風に散って消えた。 糸が切れたように倒れた少女は、すーすーと安らかな寝息を立て始める。身体に透き通った箇所はなく、幼子らしい張りのある肌が月明かりに映えた。 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:13:39
木船田ヒロマル @hiromaru712

終わった、か……。 俺はふらふらと倒れた警部に近づくと、そのすぐ隣にあぐらをかいた。 ……生きてるか?怪盗の旦那。 警部は泣いていた。 「……すまない」 俺は火を着けたタバコを咥えると、警部の隣で同じく大の字に寝転んだ。 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:14:11
木船田ヒロマル @hiromaru712

空には満天の星。そして気が狂いそうな程に煌々と輝くフルムーン。 「自首するよ。犯した罪は、償う」 ……必要ねえんじゃねえか?悪さしたのはあんたに変装した怪盗で、その正体は悪魔だった。そしてその悪魔は、正義のネームハンターが成敗した。一件落着だ。 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:14:26
木船田ヒロマル @hiromaru712

「しかし……」 誰になんと聴かれても、俺はそうとしか答えないからな。俺に取っては、それが真実だ。あんたもあの子も被害者さ。それに……あの子には、あんたが必要だ。 「……」 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:14:38
木船田ヒロマル @hiromaru712

「頼みがある、七篠権兵衛」 悪いが明日にしてくれ。地獄帰りのその足で悪魔と戦ってちょっと疲れてるんだ。 「名前を考えてくれ。名前を失くした娘に付ける、新しい名前だ」 あんたの娘の……名前? #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:15:01
木船田ヒロマル @hiromaru712

……マナ、だな。 「マナ?」 字はあんたが決めろ。子供の名前は、親がキッチリ責任を負うべきだ。 「マナ……なら、真の名前、と書こう。不運に翻弄されたあの子が得た、正真正銘の自分の名前だ」 真の名前、と書いてマナ……か。 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:15:52
木船田ヒロマル @hiromaru712

……いい名前だな。 深い息と共にタバコの煙を夜空に吹き付け、タバコを地面にねじってその火を消す。 遠くに聴こえる祭囃子と気の早い秋の虫たちのさえずりに身を委ねがら、俺は深い谷に呑まれるように、眠りの深淵に落ちて行った。 #ネームハンター #空想の街

2013-09-02 11:17:42
独双笛の魔王 月々紛〈The DuetOcarina : YuehYueh-Fung〉 @yyphoen

俺の名前は園腰彦。しがない土木作業員だ。 俺は今、青いイクチオステガとなってこの街の周辺をうろついている。 倒れていた森から目当てのもうひとつの祭りの場所は近い。 そのままのそのそ歩いて、その場にたどり着いた。 #金柑スプラッシュナイト #空想の街

2013-09-02 16:00:09
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