原発ADRは機能不全 弁護士中所克博先生解説(2013.9.14)

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弁護士中所克博 @K_Nakajo

紛争を解決する,公平に解決するには基準が必要。基準は具体的紛争から抽出され,形成される。そんな基準には,内在的な制約がある。紛争Aから抽出された基準はあくまでも紛争Aのもの。紛争Bに当て嵌めるとき,齟齬の補正,ブランクの補充が不可欠。これを失念したため,原発ADRは機能不全。

2013-09-14 23:18:05
弁護士中所克博 @K_Nakajo

特定の紛争を解決する過程で基準は生まれる。具体的紛争に依拠して得られた基準なので,その基準には説得力がある。だが,所詮その基準は特定の紛争に根ざしたものに過ぎない。常に異なる別の紛争に使うには変化させることが必要。油断すると,紛争解決に資する基準は逆に人の思考を縛ってしまう。

2013-09-14 23:38:24
弁護士中所克博 @K_Nakajo

中間指針や総括基準。公平な紛争解決のために必要であり,有益である。だが,それが全てではなく,全てであってはならない。目の前の被害を見,聞こえてくる声を素直な心で聞く。すると,基準の限界が見えてくる,いや,見なければならない。機械的な基準の当て嵌めは逆に罪作りである。

2013-09-14 23:42:03
弁護士中所克博 @K_Nakajo

迅速で公平な賠償をするには基準が不可欠。それがごもっとも。ただ,常に基準の功罪を失念してはならない。基準というものは,基準という名で存在した瞬間から人の自由な発想を阻害し,その紛争について本質に的を絞った解決を遠ざけてしまう危険がある。基準を盲信せず,限界の認識が必要だと思う。

2013-09-15 00:26:32
弁護士中所克博 @K_Nakajo

法の化学第44号,民主主義科学者今日か法律部会編「東日本大震災・福島原発事故と法」(日本評論社)を読んでいる。特に除本理史准教授の論文「原発事故の被害と補償・回復に関する一考察 『ふるさとの喪失』を中心に」は必読だと思う。

2013-09-15 23:04:47
弁護士中所克博 @K_Nakajo

同書籍で,松本克美教授はこう述べている。「このような被害が,個々の財産的損害・・・や慰謝料を個別に積み上げて把握できるものではない。人生の発展可能性の喪失として,人格的権利の侵害も含む被害の相対的把握・・・と,・・・「人間の復興」「生活の復興」が明確化されてゆく必要があろう。と。

2013-09-15 23:09:45
弁護士中所克博 @K_Nakajo

複数の原発ADRを担当し,怒っていること。被害者に過大で細かな立証を求めてくること。自宅に立入り,本当にその動産があることを証明すえく写真撮影して提出せよ。いつ買ったか?いくらで買ったか?あと何年使えたか?領収証を探せ,なければ類似品のカタログを出せ・・・等。過酷すぎる。

2013-09-15 23:21:07
弁護士中所克博 @K_Nakajo

@hirono_hideki 私ども原発被災者弁護団では,着手金はゼロ。交通費や通信等の実費分として被害者1人当り1万円だけで闘っています。私どもに「中間搾取」は該当しない筈です。対して,東電側代理人がいかなるフィーを受取っているのかは不明。公開されるべきだと思っています。

2013-09-15 23:27:11
弁護士中所克博 @K_Nakajo

例えば農業のために農機具を買い,農作業に使っていた。特に台帳は作っておらず,減価償却もしていなかった。領収証は直ぐに捨てた。こうなるとは思っていなかったから。しかしADRで東電はこう言ってくる。台帳がない以上,その農機具が本当に自宅に存在したのかすら分からないと。

2013-09-15 23:33:59
弁護士中所克博 @K_Nakajo

仲介委員はこう言ってくる。確かに,その農機具がご自宅に存在したのかどうか証拠がない。ご自宅に立ち入り,写真を撮影してきて欲しい,と。やむなく自宅に戻ると荒れ放題。戸外より室内の方が線量が高い。壁を破って屋内に入り込んだネズミや獣が屋内にセシウムを持ち込んできたからである。

2013-09-15 23:36:15
弁護士中所克博 @K_Nakajo

避難者は,仲介委員に命じられたところに従い,自宅にある動産類を写真撮影する。大震災で崩壊したがれきを取り除き,高い線量を浴びながら。撮影した写真を提出し,領収証がないのでネットで探した新品類似品の価格表を提出する。東電代理人は言う。存在することは分かった。しかしゼロであると。

2013-09-15 23:39:10
弁護士中所克博 @K_Nakajo

写真に撮影された農機具について,購入時の領収証の提出がない。だから,取得時期も,取得価格もわからない。写真によればとても古そうに見える。耐用年数がとっくに経過している可能性が高い。だから賠償額はゼロである。・・・・・こう言ってくる。これが原発ADRの実情である(=私の事件)。

2013-09-15 23:42:02
弁護士中所克博 @K_Nakajo

千歩譲り,その農機具が存在した写真を出そう。だが,それ以上の資料を求められるのは心外。しかも,その農機具をダメにした東電に「証拠が乏しい。ゼロだ」と言われると向かっ腹が立つ。ADRで精密な損害認定など不要。ニギリで良いから,軽い立証だけで迅速に賠償して欲しい。これが被害者の心。

2013-09-15 23:50:35
弁護士中所克博 @K_Nakajo

@attractgood 私が担当しているある件の仲介委員と調査官は,とても細かいものの,何とか救おうという心があると感じています。辛くても立証の努力をすると,応えてくれると信じています。応えてくれた結果が前例となり,他の事件に良い影響を与えてゆくことを願っています。

2013-09-15 23:57:55
弁護士中所克博 @K_Nakajo

@attractgood 被害を受けたとき,被害時点での物の交換価値相当額の賠償を与えるべきであり,それを肥えた賠償を与えるのは逆に不公平。穿たれた穴を埋め,フラットに戻すだけが賠償だ。これが従前の損害賠償の基本的な理念でした。本当にそれで良いのか?見直すしてみるだと思います。

2013-09-16 00:06:15
弁護士中所克博 @K_Nakajo

誤解のないよう繰り返す。原発ADRの仲介委員には,心ある方もたくさんおられる。対して,同じ弁護士でありながら,情けない,恥ずかしいと感じる仲介委員もいる。当りとハズレの差は,既存の不法行為理論が想定していなかった事象に直面し,ブランクを埋め,被害者を救おうとする気概の有無。

2013-09-16 00:19:25
弁護士中所克博 @K_Nakajo

@attractgood 税法上の減価償却期間を過ぎていても,十分使用でき,愛着があり,現に農業生産に寄与している農機具があります。いや,それが普通です。その物は,使用者に愛されることで魂を宿しているかもしれません。使い捨てが主流となり,直して使う方が貧乏臭いと思われる歪み。

2013-09-16 00:25:43
弁護士中所克博 @K_Nakajo

90歳超の祖母,70代の娘,40代の孫の一家が避難。途中で一家は離散。90超の祖母は9箇所もの移転の末に突然死亡。亡くなった翌日がADRの口頭審理期日だった。娘と孫は涙をこらえ臨んだ。仲介委員に祖母の死を報告。だがお悔やみの言葉一つなし。それがどうした?との質問。二次被害の例。

2013-09-16 00:49:37
弁護士中所克博 @K_Nakajo

90歳超の祖母。原発事故前はピンピンしていた。長い道のりを独り歩き,買物に出掛けてもいた。突然の死は,原発事故による9箇所もの移転のせい。多分そうだが証明できず,娘と孫も損害賠償請求の意思はなし。仲介委員には,「辛かったですね」の一言を期待。一言あれば娘と孫は救われたはず。だが。

2013-09-16 00:56:44
弁護士中所克博 @K_Nakajo

ハズレの仲介委員に当り,虚しさともどかしさを感じたとき,なぜか頭の中にこの曲が炸裂する。http://t.co/hMZbJD0Pcs

2013-09-16 00:59:52
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弁護士中所克博 @K_Nakajo

@ozakita 1件目の判決は非常に保守的,2件目の3件目もそう。そうこうしているうちに,我慢できない裁判体が被害者の視点に立った質的に異なる本音の判決を言い渡す。その途端,安心したかのように,リベラルな判決が続き始める。残念がら裁判所はこのように動く・・・と予測する。

2013-09-16 01:04:02