#琥珀おじ なちバージョン 【腐あり】

スパン(@supan_call)さまの呟きから生まれたため息と涙から琥珀を生んじゃうおじさんのなちバージョンです。 萌えに任せてダダッと書いたので細かい設定は笑って流して下さいませ(汗)。 気分的には一人リレー小説?www そしてオレっち的には兎虎(うん、兎さんは名前も出てこないケド)ですが、最初にモブ虎表現があります。ご注意を!
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スパン@とりまタイッツー @supancall

涙と溜息をつくと、それが琥珀になる虎徹さんは、富裕層の有力者に飼われて、哀しい辛い思いばかりさせられていました。毎日、「ほら、琥珀を出せ」といじめられるのです。けれど、むやみに琥珀を出してはならないのが一族の掟、虎徹さんは日々耐えて暮らしていました。みたいなお話クレ下さい。

2013-10-02 16:46:05
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

苦痛にはすぐ慣れた。鎖に繋がれる身の上にも、もう心は揺れたりはしない。でも、これはダメだ。これだけはやり過ごせない。「…っ、やぁっ」強制的も与えられる快楽にため息が漏れ、涙が零れ落ちた。その度にばらまかれる琥珀、琥珀、琥珀。枉げられ、歪められ、それでも俺は死ねずにいる。#琥珀おじ

2013-10-02 19:24:23
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

壁に背を預け座り込んだ虎徹は格子越しの満月に苦く笑う。「後、何回かね」幾ら頑強でも本来大地を駆ける虎が閉じ込められ変節を強いられているのだ心身に掛かる負荷は尋常ではなかった。「疲れたな」コツンと壁に頭を打ち付け虎徹は琥珀を生む瞳を閉じる。だから月を過ぎった影を知らない。#琥珀おじ

2013-10-02 21:47:56
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

何時の間に眠っていたのだろう、虎徹は屋敷のあちらこちらから聞こえる怒号に我に帰った。「何だ?」ふらりと立ち上がるが天井近くにある格子付の窓からは何が起きているのかは解らない。「関係ないか」苦笑して座り掛けた虎徹はギクリと動きを止めた。見詰める先、重い音を立てて扉が開く。#琥珀おじ

2013-10-02 22:00:09
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

開いた扉から飛び込んで来たのは見飽きたこの屋敷の主人と用心棒だ。虎徹はずるりと壁に預けた背を滑らせる。またかと思ったのだ。だが険しい顔をした主人は虎徹の腕を掴んで無理矢理立たせる。「誰が渡すものかっ」欲にまみれた声に虎徹は顔をしかめた。だがその手を振り解く事は出来ない。#琥珀おじ

2013-10-02 22:17:26
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

虎徹の一族は『石』を生む。その瞳に似た石を。だがそれが出来るのは一族でただ一人。その一人が世を去らねば次は目覚めない。だから虎徹はその次代を守る為にここから逃げられなかった。次代は己が娘かもしれないと思えば死ぬ事も出来ない。その手を振り払う事もまた。だが運命の輪は回る。#琥珀おじ

2013-10-02 22:30:56
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

「僕の欲しいものはどこです?」突然涼やかな声が聞こえて来た。虎徹はハッとして顔を上げる。そこにいたのは全身黒尽くめの男だ。わかるのは仮面から覗く翠玉だけ。「し、知るかっ!この盗人風情が!」その遣り取りに虎徹は何が起きようとしている事を知った。この目の前の男は盗人なのだ。#琥珀おじ

2013-10-02 22:47:22
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

その男は主人の後ろにいた虎徹に目を止めた。そして忌々しげに舌打ちをする。「確かに僕は盗人だ。でもそういうのは好きじゃない」言うなりぶんと音を立てて蹴りが飛んだ。全てはあっという間だった。気付けば主人も用心棒も倒れ臥している。「それ外しても?」問われて虎徹は一瞬固まった。#琥珀おじ

2013-10-02 23:00:39
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

そんな虎徹に男は肩を竦めると踵を返す。「失礼。そういうご趣味ですか」言われて虎徹は怒鳴った。「ばっか、んな訳あるかっ!」慌てて伸ばした手に捕まってくれた男はくるりと振り返る。「外しても?」「頼む」必死なその声に男は膝をついた。そしてガキリと音がする。それは枷の外れた音。#琥珀おじ

2013-10-02 23:08:03
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

だがそこで虎徹は再び固まった。『逃げたらどうなるかわかるな』かつて言われた台詞が彼を縛る。立つ竦む虎徹に、男は訝しげに声を掛けた。「逃げないんですか?」虎徹は苦しげに唸る。「に、逃げる訳にはいかねぇんだよ。俺が逃げれば…」男はふんと鼻を鳴らすと何故か虎徹の顎を掴んだ。 #琥珀おじ

2013-10-02 23:16:04
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

「な、何だよ」戸惑う虎徹の瞳を覗き込み男は笑う。「僕ね、結構有名な盗人なんですよ。宝石専門のね。決めた、今晩は貴方を盗みます」晴れやかな声に虎徹はポカンと口を開けた。何だこの男。だが次の瞬間、虎徹はぎりっと男を睨み付ける。「次はお前が俺の主人になるってのか!」 #琥珀おじ

2013-10-02 23:22:23
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

「は?誰がおじさんの主人になんて」ツンと顎を反らせる男に虎徹は戸惑う。「だってお前今」男は虎徹の目尻に触れた。「盗むのはこの二つの琥珀です。貴方は単なるオマケに決まってるでしょ?」小馬鹿にした物言いに怒鳴り掛けた虎徹は、だが楽しそうな光を浮かべた翠玉にハタと気付く。#琥珀おじ

2013-10-02 23:29:51
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

何処からどう見ても自分は捕らわれ人だ。なのに逃げられないと言った。だから?「盗んで、くれるのかよ」震える声で訊ねれば男は肩を竦める。「しょうがないでしょ?僕は宝石専門の盗人でここに欲しいものがある」虎徹は泣き笑いの体で手を伸ばした。男がその手を取る。二人の旅の始まった。#琥珀おじ

2013-10-02 23:42:02

おまけ

なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

「貴方には解っている筈だ。僕は相応しくない?」力任せに抱き締められ俺はその暖かさに涙を流す。転がり落ちるのはかつてと同じ琥珀。あぁ俺は嘘は吐けねぇんだよ。知られてしまう。お前に望まれる事を望んでいる事を。手を取るべきでないお前の手を俺は欲しい。真っ直ぐに俺を見る翠玉を。#琥珀おじ

2013-10-08 22:50:33