「どーなってるのよ、ホントに誰も居ないじゃない」一方、兵舎にて。部屋を片っ端から開けては首を傾げているのは、電に連れられてここにやってきた少女である。いつまで立っても電が帰ってこないので、仕方なく兵舎の中に入ったのだが、見事なまでにもぬけの殻だ。26
2013-10-06 23:36:26「ここ、軍人さんの基地よねえ。こんなのでいいのかしら?」食堂にあったラムネを拝借しながら、彼女は建物の中を見て回る。深海棲艦の脅威は、この世界に住む人間なら誰でも知っている。もしも今、深海棲艦が攻めこんできたらどうなってしまうのだろうか。不安が胸中をよぎる。27
2013-10-06 23:39:38その時、キィンと高い音が響いた。「――ッ!?」咄嗟に辺りを見渡すが、そんな音を出しそうなものはどこにもない。不思議に思っていると、また同じ音が聞こえてきた。廊下の先、建物のもっと奥から、聞こえてくる。少女は音に導かれるように、ふらふらと歩き出す。28
2013-10-06 23:44:58耳をつんざく高音は、頭の中で混ざり合い、徐々にノイズ混じりの音声へと変わっていく。不思議な感覚だった。知らない声が、聞いたことのないような爆音が、酷く懐かしく、そして悲しいものに聞こえる。気がつくと、少女は一枚の扉の前に立っていた。鍵はかかってない。29
2013-10-06 23:49:48申し訳ないと思いつつも、好奇心を抑えられない。中は牢屋のように殺風景な部屋で、窓のない扉がいくつも並んでいる。その中の一つに、少女の心が強く惹かれた。開けようと思ったが、こちらには鍵がかかっている。だけど開けなくちゃ。そんな思いが、彼女の頭の中を一杯にしている。30
2013-10-06 23:53:11おまけ
「水上機母艦千代田です。千歳お姉」グシャ、と鈍い音がした。翔鶴が、建造されたばかりの千代田の頭に、ハンマーを振り下ろした音だ。返り血を気にすることもなく、翔鶴は次の資材を投入し、バーナーの炎を吹きかける。
2013-10-06 23:59:39「貴様が司令官か、私は」グシャ、と一発。「軽空母りゅうじょ」グシャ、ともう一発。炎の中から現れた艦娘を、翔鶴は表情一つ変えずに淡々と解体していく。「やっと会えた!」「ご指導ご鞭撻」「よろしゅうな」三回連続、音が響く。「艦隊のアイ」カーンカーンカーン。
2013-10-07 00:01:41