“夏、煙草、君と二人”

設定未定の小話。
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浅欺@TO THE TOP!! @asagi01dog

蝉が鳴いていた。絶え間なく、ノイズの様に耳にまとわりついている。ただでさえ暑いのにと、目を閉じてはその蝉たちを踏みにじるビジョンばかり想像した。

2013-08-07 20:13:25
浅欺@TO THE TOP!! @asagi01dog

木陰に寄り添い、遠くを見やる。其所にいたガキ共は何処かからホースを引っ張り、水浴びに興じている。ポケットしまった煙草の箱は少し潰れていたが、火を点けるのには何の支障もなかった。

2013-08-07 20:16:57
浅欺@TO THE TOP!! @asagi01dog

咥える、吸い込む、吐き出す。薫り付きの呼吸はこの体に安定をもたらす。ふわりと生温い風が吹き、葉擦れが鳴る。あんなに煩い蝉の声が止んだ気がした。

2013-08-07 20:30:08
浅欺@TO THE TOP!! @asagi01dog

そこに割り込んだ音。聞き慣れたはずの、けれど夏のせいだろうか、鋭くも熱く色気を含んだようで何とも艶かしく響いた。

2013-08-07 20:38:58
浅欺@TO THE TOP!! @asagi01dog

そうして後ろからの気配に振り向く間もなく煙草は奪われたのだ。ゆっくり、首を巡らせれば(…やっぱり)彼奴の姿があった。蝉がまた鳴いている。

2013-08-07 20:43:25
浅欺@TO THE TOP!! @asagi01dog

「お前また煙草の数増えたんじゃないのか?」奪った煙草を平気で咥える。

2013-08-07 20:46:03
浅欺@TO THE TOP!! @asagi01dog

「…君こそ、やめたんじゃなかったの」彼は一瞬きょとんとして、それから思いを馳せるように小さく笑うだけだった。

2013-08-07 20:48:46