創作BLSS本編以外ログ(2)

Twitterにて#シロクロBLで流している創作BLSSのまとめ。本編後の単発SS。初めてのお宅訪問編。大体いちゃいちゃしてるだけ。30ツイートで完結です。 本編(未完)→http://togetter.com/li/576749 夜道でもにょもにょ(10ツイート)→http://togetter.com/li/577656
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熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL ぎい、とドアが軋む。ゆっくりと開かれるその隙間から、ひどく懐かしい匂いが溢れた。幼い頃よく行った、田舎の祖父の家を思い出す。くすぐったいような、濃縮された草の匂いだ。「畳?」俺はドアの前に立つ彼に尋ねた。 #シロクロBL

2013-10-13 12:46:20
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 「その方が落ち着くから」答えたその面持ちは堅い。普段から彼は表情に乏しいが、それとはまた、別の堅さだ。開けられたドアの内側には、暗い踏み込み。「どうぞ」横に避けて、彼は俺を室内へと促した。言われるままに、部屋へ。 #シロクロBL

2013-10-13 12:47:27
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 俺と黒崎が、同僚から恋人という関係になってふた月が経つ。俺は今夜、初めて黒崎のアパートを訪れた。退勤後に外で食事を済ませてきたから、時刻は既に九時過ぎだ。更に明日は土曜で、仕事は休み。――さすがに、これで意識するなという方が難しいか。 #シロクロBL

2013-10-13 12:49:37
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 今夜ふたりの間に何かが起こってしまうかもしれない。むしろ、起こしたい。キス以上のことをしたい。俺の頭の中だって、そんな考えで一杯なのだ。同性である黒崎だって同じような心境だろう。――そうであって欲しいという、俺の希望でもあるが。 #シロクロBL

2013-10-13 12:51:14
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 「緊張してるわけじゃない」消え入りそうな声が耳に届く。「そう? 俺は緊張してるけど」俺がそう言うと、彼は驚いたように顔を上げた。「白谷が?」「何せ、初めて恋人の部屋に入ったんだからな」家主より先に。そう付け加えると、彼の表情がようやく和らいだ。 #シロクロBL

2013-10-13 12:52:52
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 開け放した襖の向こうから、シャワーの水音が聞こえる。そこに時折、ユニットバスの床が擦れる、きゅ、という音が混じった。俺は真新しい若草色の畳の上に胡座をかき、一見それらの音に無関心を装いながら、頭の中ではシャワーを浴びる黒崎の姿を想像した。 #シロクロBL

2013-10-13 12:53:42
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 上気した肌を湯が流れ落ちていく。うなじや額にはりつく濡れた髪は、普段よりも更に黒く艶めいているだろう。少し考えただけで、くらくらと目眩がしそうになる。「中坊か、俺は」妄想だけで膨らみかける熱に対する罪悪感に溜息をつき、小さく肩をすくめた。 #シロクロBL

2013-10-13 12:55:05
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL やましい考えから気を逸そうと、俺は周囲を見渡した。和室の向かいは台所だ。天井付近には、小さな神棚が据え付けられている。白く細い花瓶が一対並び、そこに榊が差されていた。その横には玄関。同じく天井付近には、細い注連縄が張られている。 #シロクロBL

2013-10-13 12:56:33
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 黒崎の実家は神社だ。彼の祖父が宮司をしており、黒崎自身も神職の資格を持っていて、時折祖父の仕事を手伝うらしい。加えて彼は『見える人』だった。俺には見えないものが、彼には見える。玄関の注連縄は、それらに対する防御策なのかもしれない。 #シロクロBL

2013-10-13 12:57:47
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 俺と黒崎が付き合うようになったきっかけは、その『見えないもの』だった。俺に憑いていたそれを、彼が赦ってくれたのだ。そういったものの存在を信じていたわけではない。しかし俺のために必死になってくれた彼の姿に、俺はひどく胸を打たれてしまったのだ。 #シロクロBL

2013-10-13 12:59:51
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 当時のことを思い出し、懐かしさに浸る。そうしていると、黒崎が祝詞を唱えている際の、研ぎ澄まされた刃にも通じる凛とした横顔が、不意に頭に浮かんだ。それだけで、心臓が大きく脈打つ。ああ、重症だな。内心呟き、俺はひとり、苦笑をこぼした。 #シロクロBL

2013-10-13 13:01:08
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 視線を、台所スペースから今俺がいる和室へと移す。ここが主な生活空間だろう。しかし畳の上には、殆ど物が置かれていない。前に住んでいたアパートから引っ越して日が浅いせいかもしれない。目に入るのは壁に掛けられたスーツと、畳んで置かれた洗濯物だけだった。 #シロクロBL

2013-10-14 12:20:31
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL きっちりと畳まれた洗濯物からは、彼の性格が窺える。そういえば、職場の彼のデスクも、綺麗に片付けられていたことを思い出した。「あれ、これって……」ふと、あるものに気がつき、俺は思わず呟いた。洗濯物の一番上、真っ白なそれを手に取る。 #シロクロBL

2013-10-14 12:21:43
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 「……白谷、それ、どうするの」突然背後から声をかけられ、背筋が反射的に伸びる。両手でそれを持ったまま。「これは、その、だな」恐る恐る振り返る。Tシャツにスウェットパンツというラフな格好の黒崎が、僅かに眉を顰め、濡れた髪をタオルで拭っていた。 #シロクロBL

2013-10-14 12:23:38
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 「……勝手に触って悪かったって。機嫌、なおしてくれよ。な?」手に持っていたそれ――白い着物を畳に置き、それを挟む形で、黒崎と向き合う。足は正座に組み替えた。「別に怒ってない。ただ、どういうつもりなのかと思って」淡々と彼に言われ、口ごもる。 #シロクロBL

2013-10-14 12:24:49
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 俺は想像していたのだ。この白い着物を身に纏い、あの時のような神職の顔をした彼を。着物の下に重ねてあった浅葱色の袴も、共に身に着けるものだろう。清廉な白と浅葱色が黒髪に映え、見えぬものに臨む彼の凛々しい表情をさぞ引き立てるに違いない。 #シロクロBL

2013-10-14 12:26:59
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 溜息がひとつ、彼の口からこぼれた。「うち、テレビもないし、退屈したんだよね。ごめん、気が付かなかった。……ビールでも飲もうか」取って来る。そう言って彼が腰を上げた。「退屈なんて」その腕を掴む。「してねぇよ。ずっと、黒崎のこと考えてたし」 #シロクロBL

2013-10-14 12:27:50
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 立ち上がることができず、中途半端な姿勢のまま、黒崎が動きを止める。既に顔が真っ赤だ。動揺のためか掴んだ腕が震えている。僅かに開いた彼の唇にキスをしたい気分だった。「今も、その着物を着てる黒崎を想像して――」膝立ちになり、彼の腕を緩く引く。 #シロクロBL

2013-10-14 12:28:29
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 「も、もういい、分かったから」ゆっくりと顔を彼へと近付けると、彼は空いた手でそれに抗ってきた。しかし弱々しいその動作が、俺を余計に興奮させる。「分かってない。黒崎、俺は――」目の前にある腰を抱き寄せる。バランスを崩し、畳の上に彼の体が倒れた。 #シロクロBL

2013-10-14 12:30:06
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 性急にことを進めるつもりはなかった。彼とキス以上の行為をするのは、初めてなのだから。けれど今の俺に、そんなことを考える余裕なんてなかった。倒れた黒崎に覆い被さるように、唇を寄せる。「ばか、白谷、話を……!」「う、わっ」途端、視界が真っ白になった。 #シロクロBL

2013-10-14 12:32:34
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 顔に何かを被せられたのだ。慌ててそれを剥ぎ取る。「着物……」取り戻した視界の中、俺の両手に収まっていたものは、先程まで折り畳まれていた白衣だ。俺の下で荒く呼吸をしている黒崎は、潤んだ目でちらと俺を見ながら、「想像だけで、満足なの」ぽつりと呟いた。 #シロクロBL

2013-10-14 12:36:04
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL ――どうしてこんなことになってしまったのか。ぴっちりと閉じられた襖を背にして自問する。初めて訪れた恋人の自宅。ほんの少し酒の力を借りて、語らいつつムードを高めながら、ことに及ぼうとしていたのに。襖の向こうからは、黒崎が着替える衣擦れの音がする。 #シロクロBL

2013-10-16 11:28:00
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 変に気を遣わせてしまったようで申し訳なく感じる一方、和装をした彼を実際に目にすることができるという嬉しさもあり、複雑な気分で彼を待つ。鼓動が大きく、速い。先程組み敷いた際の彼の表情が、頭の中に焼き付いて離れないからだ。 #シロクロBL

2013-10-16 11:29:11
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 潤んだ目、紅潮した目元、頬。まだ乾かぬ黒髪がはりつくうなじ、額。それらに啄むようなキスを落としたら、彼は今度はどんな顔をするだろう。張りのある唇から紡がれる、落ち着いた響きのよく通る声。そこに甘い色を引き出して、何度も名を呼ばれたい、と思う。 #シロクロBL

2013-10-16 11:30:20
熊猫二郎笹助◎BL沼 @Xpandanchu

@Sbl00TL 襖が開く気配がした。どきりとして、体が小さく跳ねる。「……もう、いいのか」尋ねると、彼は短く「どうぞ」と答えた。俯いたまま体ごと彼の方へと向き直る。ゆっくりと視線を上げていく。自分の膝、そして畳を挟み、まず目に入ったのは白い足袋に包まれた足元。 #シロクロBL

2013-10-16 11:33:53