旅猫『明』

御近所の三毛猫の話。
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だいけ @daike0000

やっぱりその家でも『明』は気紛れで、だからたまには『ハナ』として愛想を振りまくこともあっただろう。

2010-10-09 01:04:21
だいけ @daike0000

目を閉じれば浮かぶ。

2010-10-09 01:04:42
だいけ @daike0000

古い民家の縁側に座る老夫婦。お婆さんの膝の上で午睡にまどろむ三毛猫。お婆さんがその背を優しく撫で、お爺さんが隣で目を細める。

2010-10-09 01:05:57
だいけ @daike0000

夏休み。小学生達が元気に走り回っている。『明』は素知らぬ顔でいつも通りにまどろんでいた。

2010-10-09 01:06:49
だいけ @daike0000

小学生の男の子が目を輝かせて『明』に近寄って行く。

2010-10-09 01:07:32
だいけ @daike0000

『明』が危機を察して逃げ出すより早く、男の子がややもすれば乱暴に抱き上げる。

2010-10-09 01:08:03
だいけ @daike0000

「オスかな、メスかなー」「メスだよこのコ」「へぇー」なぁんて会話。

2010-10-09 01:09:03
だいけ @daike0000

秋になって涼しくなってきて、夜になると『明』はどこかの家に潜り込む。旅猫の本領発揮だ。

2010-10-09 01:10:57
だいけ @daike0000

そして昼間、暖かくなって来た頃にはその猫らしい気紛れさでフラっとお世話になった家を出る。そしてお気に入りの道路でまどろんでいる。

2010-10-09 01:11:52
だいけ @daike0000

――だから、きっと。

2010-10-09 01:12:08
だいけ @daike0000

夕方になって気温が下がって肌寒さを感じるようになった頃。『明』の毛並みでも寒さを感じるようになった今の季節

2010-10-09 01:13:25
だいけ @daike0000

きっと『明』は、旅猫らしくどこかの馴染みの家に向かう途中だったのだろう。

2010-10-09 01:13:48
だいけ @daike0000

いつものお気に入りの道路では無く。1本だけ道を外れた道路。

2010-10-09 01:14:20
だいけ @daike0000

私はいつも通り、「今夜も寒いなー」なぁんてことを思いながら自転車を走らせていた。そんな、帰宅の途中。

2010-10-09 01:16:31
だいけ @daike0000

丁度、ライトを煌々と照らした自動車が向こうから走って来ていた。だから、それに気付いた。

2010-10-09 01:17:25
だいけ @daike0000

最初は道路の真ん中にゴミでも落ちてるのかと思った。

2010-10-09 01:18:00
だいけ @daike0000

迫る自動車のライトが、『ソレ』の様子を段々と露にしていく。

2010-10-09 01:18:57
だいけ @daike0000

多分、何度か自動車が。

2010-10-09 01:20:25
だいけ @daike0000

――見間違いであれば、どんなに心が楽になることか。

2010-10-09 01:21:20
だいけ @daike0000

――勘違いで思い違いで、ほら、夜は『柳が幽霊に見える』みたいな。

2010-10-09 01:21:46
だいけ @daike0000

その場所は、毎朝毎晩通る道だ。

2010-10-09 01:22:55
だいけ @daike0000

だが明日、私にはそこを通る勇気が無い。

2010-10-09 01:23:18
だいけ @daike0000

日が照らす昼間でも、月が出ている夜でも、堂々と道路の真ん中で堂々とまどろんでいた『明』

2010-10-09 01:24:47
だいけ @daike0000

彼女は、旅猫だ。だから。

2010-10-09 01:26:02