茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1065回「イエスタディ・ワンスモアの、距離感」

脳科学者・茂木健一郎さんの10月15日の連続ツイート。 本日は、昨日なんとはなしに思っていたこと。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第1065回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、昨日なんとはなしに思っていたこと。

2013-10-15 07:02:08
茂木健一郎 @kenichiromogi

いき(1)ぼくが中学校で英語を勉強し始めたとき、よく聞いていたのがカーペンターズだった。カレン・カーペンターの発音はきれいで聞き取りやすく、またその歌詞も、比較的わかりやすかったので、おぼえてよく歌っていた。日本語とは異なる英語の語感に、強く惹きつけられていたのだろう。

2013-10-15 07:03:22
茂木健一郎 @kenichiromogi

いき(2)カーペンターズの楽曲の中でも、最高だと思っていたのが、イエスタディ・ワンスモアだった。 http://t.co/JvEWqefGHt 出だしの一音から、一つの世界観に引き込まれる。When I was young I'd listen to the radio....

2013-10-15 07:07:30
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茂木健一郎 @kenichiromogi

いき(3)イエスタディ・ワンスモアは、よく聞くと悲しい曲である。昔よくラジオを聴いていて、かかっていた曲は、ラブソングで、その歌詞を暗記しているくらいだったのだけれども、今は時は流れて、すべてが変わってしまった。でも、曲を聴いていると、往時がよみがえってくる。。。

2013-10-15 07:08:57
茂木健一郎 @kenichiromogi

いき(4)When they get to the part where he's breaking her heart it can really make me cryと言っているので、歌っているのはどうやら女の子で、曲をよく聞いていた頃、失恋したらしい、ということがわかる。

2013-10-15 07:10:28
茂木健一郎 @kenichiromogi

いき(5)イエスタディ・ワンスモアが凄いのは、このように、回想、失恋、時は流れてしまったソングであるにもかかわらず、曲全体に、まるでタンポポの綿毛に太陽が当たって黄金に拡散しているような、やわらかい光が回り込んでいるようなところだ。記憶の後光が差している。むしろ、至福。

2013-10-15 07:11:56
茂木健一郎 @kenichiromogi

いき(6)こう書いてくると、カレン・カーペンターの人生が思い出されてくる。ドラムスの腕は素晴らしかったが、背が低くで、そこで歌っていると見えないというので、マイクのところに立って歌うようになったのだという。結婚したが、不幸だった。そして、摂食障害で、32歳の若さで急死する。

2013-10-15 07:13:34
茂木健一郎 @kenichiromogi

いき(7)あんなに才能があって、美しく、成功を収めたのに、カレン・カーペンターは若くして死んでしまった。人生は苦しいところもたくさんあったと思うのだけれども、『イエスタディ・ワンスモア』では、そんな人生に、ふしぎな距離感をとって、ふわふわと光の中に浮いている。

2013-10-15 07:14:38
茂木健一郎 @kenichiromogi

いき(8)人生の苦しさとか悲しみを、それに寄り添って、演歌的に歌い上げるすぐれた楽曲はたくさんあるけれども、「イエスタディ・ワンスモア」の不思議な距離感は、私が「23世紀的」と比喩的に呼ぶ、浮遊感に満ちている。なんだか、境地に達してしまっているのだ。

2013-10-15 07:16:21
茂木健一郎 @kenichiromogi

いき(9)で、しみじみ思うのは、イエスタディ・ワンスモアを熱心に聞いていた中学生の頃、私は確かにそのクオリアをとらえていたのだけれども、その構造というかキモを言語化できるのに、こんなに長い時間がかかるのだなということ。それだけ楽曲って深いし、脳の記憶の再組織化は長い。

2013-10-15 07:17:44
茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第1065回「イエスタディ・ワンスモアの、距離感」でした。

2013-10-15 07:18:07