センスレス・アクツ #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺のジツを……撥ね除けるとは!」ソードフィッシュは体勢を整える。「すぐには殺さぬ。タダオ大僧正について聞きたい事がある」ニンジャスレイヤーはヌンチャクを納め、自らも素手のカラテで睨み合う!そして真正面からの打ち合い!「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」 25

2013-10-20 19:29:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」ソードフィッシュのカラテは実際かなりの段位であった。だが金属しか動かせない彼のサイコキネシス・ジツでは、殺戮者の圧倒的カラテの前にジリー・プアーは否めない。カラテは非情なのだ。「イヤーッ!」「グワーッ!」ガードを崩され、顔面に痛烈なカラテの一撃! 26

2013-10-20 19:33:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」敵は反撃の上段カラテスピンキックを繰り出す!だがニンジャスレイヤーはこれを巧みなオジギ姿勢で回避した後、攻防一体のメイアルーア・ジ・コンパッソを死神の大鎌めいて閃かせた!「イヤーッ!」「グワーッ!」ソードフィッシュはメンポを粉砕され、窓際へと弾き飛ばされる! 27

2013-10-20 19:39:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエエ!」己の完全敗北を知り恐怖に呑まれたソードフィッシュは、割れたガラス窓から脱兎の如く跳躍し、低空飛行マグロツェッペリンの上を跳び渡った。室内には折れたカタナが残されている。粉々に砕かれた彼の戦意と誇りを象徴するかのように。後方からは地獄の猟犬が迫っていた。 28

2013-10-20 19:48:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

救援到着まであと数分。「イヤーッ!」彼は手頃な金属片に手を差しのべジツを行使せんとするが、巧く行かぬ。追いつめられ乱れた精神では、とてもこの精密なジツは行使できぬのだ。平安時代の哲学者ミヤモトマサシのコトワザ「急ぐと失敗する」が、辛辣な皮肉めいて前方のネオン看板に明滅する。 29

2013-10-20 22:39:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

後方から断続的に飛来する敵のスリケンを回避しながら、ソードフィッシュはマグロツェッペリン編隊やビル屋上を跳び渡り、逃げる。(((奴は……ブラックロータス=サンの秘密を追って……)))彼は左腕のハンドヘルドUNIXを見た。そして最悪の事態に備え、データ抹消コマンドを入力する。 30

2013-10-20 22:43:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だがコマンド入力直前、後方から強烈なスリケンが飛来!これまでとは比べ物にならぬレールガンめいた速度で、それは彼の左肘から先を一撃で刈り取った!「グワーッ!」スリケンは「ローン」と書かれた前方のカンバンを貫通し、彼方へと消える!これはニンジャスレイヤーの奥義ツヨイ・スリケン! 31

2013-10-20 22:48:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウカツ!」彼はビル屋上のトリイを使って急角度ターンを決める。そして後方に落とした己の左腕を……正確には己の左腕に備わったUNIXをジツで引き寄せんと、右手をかざした。だが遅かった。それは追跡者によって無慈悲に踏みつけられていたからだ。「オヌシは後悔するだろうと言った筈だ」 32

2013-10-20 22:55:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

UNIXに作用したジツにより、殺戮者の足元に転がった腕が、ビクビクとまるでゾンビめいて動く。だがそれ以上は為す術が無かった。「ア……ア……」ソードフィッシュは膝をつき無防備を曝す。ニンジャスレイヤーは腕とUNIXを回収して強化フロシキに納めると、死神めいて歩み寄った。 33

2013-10-20 23:06:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

死神はソードフィッシュの頭を掴み、手短なインタビューを行う。そして鋭いカラテチョップの一閃により、首を撥ねた。「イヤーッ!」「グワーッ!」敵は壊れたスプリンクラーめいて血を噴き出し、爆発四散!「サヨナラ!」……短い静寂の後、彼方から武装ヘリの音が接近し、彼はそちらを睨んだ。 34

2013-10-20 23:15:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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2013-10-20 23:15:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

書斎に残されたカムロは、ホロオスモウ装置を抱えながら立ち上がる。負傷した足を引きずりながら、高級マンションの一室を出て内廊下へ。だが今まさに、エレベーターから1ダースのクローンヤクザ軍団が迫ってきていた。クローンヤクザは全員同時にカムロを睨み、懐のチャカ・ガンに手を伸ばす。 36

2013-10-20 23:23:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カムロは表情ひとつ変えず室内へ戻り、施錠。間一髪、銃弾が強化扉に命中する音が伝わってくる。アマクダリの刺客か。それとも作戦失敗と知った依頼者……すなわち暗黒メガコーポの一部門が差し向けた始末屋か。どちらにせよ同じ事だ。カムロは脱出方法を探す。恐怖が彼の判断力を乱す事は無い。 37

2013-10-20 23:31:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

書斎へと戻った彼は、机の上にホロオスモウ装置を置き、それを作動させる。電子ドラム音とともにドヒョウと2人のスモトリがホロ投影され、トリクミを開始する。決着がつくと、またすぐに新たなスモトリが自動演算される。彼は虚ろな目で、身長5cmのスモトリと箱庭めいた電子世界を凝視する。 38

2013-10-20 23:38:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リラクゼーションによって自殺衝動を振り払うと、カムロは静かで心地よい世界から、危険でサツバツとした現実世界へと帰還する。何故彼がこのような奇妙な依存症に陥ったのかは不明だ。むしろ虚無感を排除できる方法が見つかったのだから幸運ではないかと、執刀した闇サイバネ医者は言ったものだ。39

2013-10-20 23:47:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

無論カムロはその医者を射殺した。そしてもう一人、彼には射殺したい男が残っている。彼のトラウマの元凶たるタダオ大僧正だ。思いがけず巡ってきた今回の仕事を、高リスクと承知しながら請け負ったのには、そのような背景がある。カムロは床に転がる死体にいささかの感傷も抱かず、窓へ向かった。40

2013-10-20 23:55:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤクザスラングが聞こえてくる。クローンヤクザ軍団が扉を破壊したのだろう。彼は割れた窓へ足をかけようとして、止める。恐怖ゆえの躊躇ではない。その下に落ちていた小さなバッジを発見したのだ。彼はそれを拾い上げると、再び割れた防弾ガラスの窓枠に足をかける。凄まじい突風が吹き付ける。 41

2013-10-21 00:01:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

高層階から身を乗り出す。目が眩むほどの高さだ。だが彼はそのような恐怖感を感じない。ではニンジャのように跳べるとでも?それは不可能だ。彼はそれを冷静に判断する。「あの赤黒のニンジャは何者だったのか」カムロは言った。「俺は夢を見ていたか?ついに現実の境がおぼつかなくなったか?」 42

2013-10-21 00:05:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そんな事は無い。これは現実だ。いや、あるいは俺はもう死んでいる。そしてあれは俺の分身だ。射出された弾丸なのだ」夢遊病者めいて呟き、距離を測る。目標地点を狙い澄まし窓枠を蹴る。ネオンの海が視界に広がる。その足が低空飛行ツェッペリンの端に着地。雨で滑り落下する。右手を伸ばす。 43

2013-10-21 00:15:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カムロの手はマグロツェッペリンの錆びた金属外皮に何度も切り裂かれながら、やがて下腹部に吊られたショドー垂れ幕を掴む。それから強風にあおられた殺し屋は、ホロオスモウ装置を抱えたまま再び落下し、蔦状植物の如く大通りに張り巡らされたLANケーブルの天蓋へと吸い込まれていった。 44

2013-10-21 00:24:56