大罪大戦Lite 第一戦闘フェーズ 六の間

色欲 ルクスリア @luxuria_lite 救恤 リベラリタス @Liberalitas_lit
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『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

ふわりと中空が歪む。 白いジャケットが、青い奇妙の形の帽子が、一つに結われた後ろ髪が―― ――つまりは背中から現われて、落ちる。 見る者が居れば惨劇を予想したかもしれないが、此処に観客は無く。 そして青年はくるりと体を丸めると甲高い音を立て地面を叩いたのはヒールだった。→

2013-10-20 01:45:28
『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

「おっと、危ない危ない」 帽子の位置を整えながら立ち上がり、周囲を見回せば。 放置された、動かされた、除けられた、纏まりのない長椅子。 その奥に立てられた十字架、朽ち果てた『神』の像。 「――はっ」 祈るもの無き聖堂は、何のために在り続けるのだろう――

2013-10-20 01:45:46
救恤:リベラリタス @Liberalitas_lit

法衣の女も皆を見送り、中庭へ向かう。そして扉の前で祈るように小声でつぶやく。「……『欠けてはならない』、ですか。私の成した奇跡を知っておきながら、厳しいお方ですね」そして、微笑みながら扉をくぐった。

2013-10-20 12:19:24
救恤:リベラリタス @Liberalitas_lit

割れたステンドグラス、ガラスの抜けた壁、ひび割れ朽ちた壁の隙間、それぞれから光が差し込む。その光はその廃れた聖堂の奥に集まり、そこに白き法衣の女を顕現させた。そして、目を瞑ったまま対峙する相手に顔を向ける。「……はじめまして、私は救恤を司る者、リベラリタス」→

2013-10-20 12:33:10
救恤:リベラリタス @Liberalitas_lit

→そう言うと法衣の女は瞼を開いた。その淡い虹色の瞳は相手を見据えるわけではなく、ただ真っ直ぐ前に向けられている。「あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?」

2013-10-20 12:39:08
『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

雲が途切れたのか、光がさす。 幾つかの筋の当たる場所、其処に女はいた。 「キュウジュツ?そうか、救恤」 「俺はツいてるねえ。美人じゃないか!」 腹から出される声はこの空間によく響く。 「俺はルクスリア。色欲の権化とは俺のこと!」→

2013-10-20 14:16:28
『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

「あんたの言葉を真似するなら初めまして」 視線が交わることはない。男の目は布で覆われたまま。 その上に吊るされた金属飾りが、ちゃりりと鳴くだけ。 「そしてさようなら、と続けようか?」 にやにやと笑いながら、長椅子に寄りかかる。男は得物を構えない。

2013-10-20 14:17:09
救恤:リベラリタス @Liberalitas_lit

法衣の女はただ前を見たまま答える。「『色欲』、ですか。」僅かに鳴る金属音を聞き届けながら、言葉を続ける。「さようなら、貴方は去っていただけるのですか?自らの欲望を律して、この世から去っていただけるのですか?」ただ祈るように手を胸の前で握り締めながら問いかける。

2013-10-20 14:27:01
『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

視線を感じない。『見られていない』というべきか。 「ははっ」 「ははははははは!」 「去る?」 「欲を律して?」 「巫山戯たことを言うものじゃないよ《祈りのお嬢さん》ぉ」→

2013-10-20 14:40:45
『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

「美徳っていうのはあれかい?頭の中が楽園の花で満たされているのかい?」 「俺が消えることも、俺が《俺》を縛ることも、絶対に有り得ない!」 「そんな生温いだだ甘い夢を見ながらここに来たのかい?」 椅子から体を起こし、数歩近づく。 「そんな幻想の為に俺達は呼び出されたのかい?」

2013-10-20 14:41:21
救恤:リベラリタス @Liberalitas_lit

「『大罪』たるあなたが己を律することなどありはしない。それは『節制』の成すべき所業。」瞼を閉じる。「それでいいのです、それが『大罪』。人々の欲望の果ての在り方。『大罪』は欲を満たすためにここに現れ、『美徳』は願いを叶えるためにここに現れた」もう一度、目を開く。→

2013-10-20 15:04:18
救恤:リベラリタス @Liberalitas_lit

→「私は『救恤』。恵み、施しを与えることが私の在り方。『色欲』、貴方が欲するものはなんですか?」法衣の女は微笑む。「私がこの身を以って、貴方の欲を満たしましょう。」

2013-10-20 15:04:30
『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

「なんだ、わかってるじゃん」 「……ふうん」 男の声音が変わる。 起伏の無い、冷たいトーン。 「じゃあ、叶えてよ」 「満たしてごらんよ」 「消えてくれよ、『美徳』」 風も無いのに顔の布が揺れる。ちらりと覗いた黒い黎い瞳に、感情は無い。

2013-10-20 15:19:26
救恤:リベラリタス @Liberalitas_lit

「『美徳』が失われた世界、それが貴方が求めるものなのですか。喪失によって貴方が満たされるのですか、『色欲』?」瞼を閉じる。「まるで、『強欲』や『傲慢』のように分を越えた欲望です。」やや俯いてそう告げた。「では、勝ち取りなさい。恵み、与えること以外、私にはできないのですから」

2013-10-20 15:30:26
『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

「満たされるには邪魔すぎたんだよ、あんたたちは」 「喪う痛みは『最初』(はじめて)だけさ。すぐにそれ以上に『気持ちよく』なれる」→

2013-10-20 16:05:47
『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

「……」 「そうだなあ。『奪う』(もらう)のが俺の本分」 「ヤろうぜ?救恤」 芝居めいた声と共にくるりと回転。再び向き直るその手には槍と呼ぶには些か大きな刃を持つ長巻。 突きつけた切っ先は少しも揺れない。

2013-10-20 16:07:05
救恤:リベラリタス @Liberalitas_lit

法衣の女は動かない。構えない。ただ、女の背中から足元に三つの赤い雫が落ちた。「このふれ合いの中で、あなたが自らの欲望を見つめなおすことを」その雫がすっと光の粒となって消える。

2013-10-20 17:06:20
『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

触れあい?これは殺しあいだ。 気に入らない。気に食わない。甘い物好きな暴食でも喰うかどうか。 「――チッ」 舌打ち一つ。 祈りに引きずられるな。『聖なる数字』(まもりのさんてき)に操られるな。 突きだした手元が、ぶれる。 振り払ったのは、穂先だけではないような気がした。

2013-10-20 21:54:06
救恤:リベラリタス @Liberalitas_lit

小さな舌打ちの音。穂先振るわれ、穂先が風を切る音。「……苛立ちを捨て、心を落ち着かせるのです。憤ることは『憤怒』の罪。しかし、あなたは『色欲』。さぁ、自らの欲望に目を向けるのです」まるで見透かすように、諭すように言葉を投げかける。そして頭巾の隙間から金髪が七本はらりと抜け落ちる。

2013-10-20 23:13:46
『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

「そんなに『色欲』(おれ)を見直せ、なんて」 槍を引き戻す。肩に担いだりはしない。 いつでも次の手に移れるように。 「なに?美徳の救恤さんはもしやすると」 「俺に『抱かれ』たいのかい?」→

2013-10-21 00:23:47
『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

「残念だけど」 「それで『大罪』(おれ)が満たされると思ったら、大間違いさ」 「突いてもついても満たされない」「次を求める」「もっと高いところにイきたくなる」 「たとえ『美徳』でも、満たせやしないさ」

2013-10-21 00:24:37
救恤:リベラリタス @Liberalitas_lit

――『抱かれたい』「ええ、私はいつもそうしてきましたから……」突き出された穂先が『色欲』の元へ引き戻される。「ですが、私では力不足ですか……それでも私は満たすことしか知らない」支払った犠牲を糧に、『色欲』を照らすように頭上に光が現れる。「だから、受け取ってください」→

2013-10-21 00:44:57
救恤:リベラリタス @Liberalitas_lit

→淡い光の柱の中に白い羽根が無数に舞い降りる。それは優しさ。しばしば愛とも呼ばれる人の温もりの具現。触れれば優しさに包まれる、ただそれだけの力。

2013-10-21 00:45:04
『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

「――っ」 『本能』(いきものとしてのおれ)が叫ぶ。これは良くない。 此処に立っていてはいけない。 解っているのに。解ってはいるのに!足が、動かない。 「やめろよ」 吐きだされた言葉は、絞り出すのもやっと。→

2013-10-21 01:00:57
『色欲』ルクスリア @luxuria_lite

危険、叫ぶ、危険危険危険じわりとせりあがる何かに心が浸る沈む冒されていく危険このままじゃ 「いらない!」 「今更《こんなもの》」 「《そんなこと》!!!」 「遅いんだよ。どの面下げて《こんなこと》ぉ!」 「ヤれりゃあいいんだよ!要らねえんだよお!!」→

2013-10-21 01:01:22