pw秋組　秋の待ち伏せ　連詩個人のまとめ

春森しゆう @junju_usako

耕して肥やしを入れて土を寝かせる 畝を作って蒔くだけの床 ひとつぶ、ひとつぶ、 たまに、ふたつぶ、 耕された土に、ただ眠ればいい 右手、左手、ふりながら 芽が出る のを、待ち伏せている 小松菜も、からし菜も、私も対だ はみ出した方がよく育つ 「秋の待ち伏せ」 ＃pw秋組

春森しゆう @junju_usako

通りすがりに呼び止めて お話しましょう。唐突に。 私を知らせたい。あなたを知りたい。 どこまで踏み込んでいい。 どこまで話せばいい。 誰かが聞き耳を立てている。 誰かが一字一句逃さず見張っている。 そしてあなたのなかに出来上がった私を 私は知らない。 「秋の待ち伏せ」 ＃pw秋組

春森しゆう @junju_usako

簡素な電子音が、君の存在を告げる。 視覚的な認知の在り処。 声は聴こえてこないから温度が計れない。 文字の羅列に熱を持たせるのは、私の心だ。 常温の液晶の中に棲む君を、抱きしめる。 「秋の待ち伏せ」 ＃pw秋組

かとう たか @taka423kato

秋に出会った人は その秋で ずっと待っていた 誰かの待つ駅が 時間の終わりまで連なる 透明なプラットホームの 傍には 碧い種子の 待つことも知らないまま 十月の花たちが 枯れてゆく そして 遠い約束の日 君の待っている駅で 僕も君を待っている (秋の待ち伏せ) #pw秋組

春森しゆう @junju_usako

種が、ほしい。 黒い小さな種が。 渇いて零れる直前を、見極めたい。 ずっと待っていたものを、 いつのまにか、土と同化していた。 掘っても、掘っても、掘っても、 もう遅い。 土の中で咲いている。 「秋の待ち伏せ」 ＃pw秋組

末松 努 @dejodajo

咲き誇れない悲しみに 暗闇の種は涙を流す 地下へと染み込んでいく涙は やがて朧げな思い出とともに 地上へと湧き出る 待ち伏せしていた陽の光に 涙も種も救い出される どこか寂しげな日差しに 咲いたコスモスが微笑みかける もう 泣かなくていいのだ、と (秋の待ち伏せ) #pw秋組

雑感❕ @mimi_4567

知らないでいて欲しかった。あなたはあなたのままで、小さな小高い城に捕らわれていて、幸せなんだと、いつまでも。窓を開けると、秋は突然やってきて、哀しい素顔を見せた。淋しい王子様、色とりどりの美しい葉を纏い、こんなはずじゃなかったと泣かないで。（秋の待ち伏せ）#pw秋組

春森しゆう @junju_usako

こわくて張り巡らせた茨を、ほどいてくれる人を待っていた。 待ちながらも茨を強化していた。 諦めていく人たち、理由に気づく人がいなかった。 茨は自分の脚に刺さる。 今度は傷を舐めてくれる人を待ち 待っているうちに朽ちてしまう。 残ったものに色がない。 （秋の待ち伏せ） #pw秋組

宮尾節子＊新刊『明日戦争がはじまる 対話篇』好評発売中です。 @sechanco

みんなが、よすぎて、じぶんが、いらない。さようなら。なんて、しあわせな、いきかただ。いかん、まだいっては。いかん。のっては、いかん。りむじんに。なっては、いかん。あきのけむり。まけんき、だして。われも、ことのは。あおく、なったり。あかく、なったり。葉派。（秋の待ち伏せ）#pw秋組

春森しゆう @junju_usako

ああ、わたし、このときを待っていました。 並ぶ顔ぶれに、高鳴る鼓動。 繋がれる嬉しさ。 触れられる優しさ。 言葉を使えるから 人間で よかった。 母の匂いを思い出す、温かな組。 （秋の待ち伏せ） #pw秋組

春森しゆう @junju_usako

起きたなら、お腹を見せて喉を鳴らす。 あおむけの親密度の証。白を撫で回す、朝の儀式。 キッチンに立つ間、前脚を揃えて待っているのがかわいい。 なうん、なうん、お散歩にいこうよ。 雨降りは、飛びかかる。 雨の数だけ、抱きつくのなら、雨が好きになるよ。 （秋の待ち伏せ） #pw秋組

こひもともひこ @kohimon

カチャリと開けたらチリンと鳴る。 カチャリと閉めたらチリンと鳴る。 きみがいることは知っているけれど、 なかなか姿は見せてくれない。 すばやくしなやかに。 飼われているくせに野性の本能をもつ。 たまには顔を見せてくれよ。 にゃー。 （秋の待ち伏せ） #pw秋組

西原真奈美／来春詩集を上梓します @m_a31354363

中央線沿いの 古い回廊には 一匹の猫が住んでいる やわらかい肉球が 硬くなる前に 不意にいなくなったおまえ 毛布とミルク入りのマグ 抱えて月明かりのなか 探した 今も回廊で 一番美しい目の住人のまま 微かに首を傾げ 両脚を揃え 私を待っている （秋の待ち伏せ） #pw秋組

葉月野 @hadukino_tc

昨日と同じ窓から寒風が吹きこんできた。季節の変わり目は過ぎていたんだな。まだ緑が街路の主色だというのに。春は悲しく、夏は幻のようだった。冬は温かさを知ることにしよう。近くの学校から流れて来る演奏の隙間。生まれたフレーズを空に指で。なぞって。始める。（秋の待ち伏せ） #pw秋組

春森しゆう @junju_usako

去年の楓の赤さを覚えていますか。緑からのグラデーションを見せてくれました。 何色と言えないものにも綺麗さがあって、一本の木を揺らします。 銀杏並木はかなしさが積もるから、ひとりでは歩きたくないの。 木枯しが吹き溜まる場所で、待ちぼうけしています。 （秋の待ち伏せ） #pw秋組

末松 努 @dejodajo

待ち伏せていました 風になり こちらへ来るのを 透き通った身体で 果たしてあなたは そこにいるのに 私に気づかず 何も告げないまま 立ち去ってしまうのです ずっと吹きつけていたのに あなたは私をくぐり 真っ直ぐに 散りゆく紅葉だけが 綺麗でした (秋の待ち伏せ) #pw秋組

チャラチャラのチャンピョン @knstkino

首元を擦り抜ける風。 ひらり、スカートが揺れる。 あの子が笑った。 手を伸ばした僕に 「ね、さよならね。」と。 落ち葉のように自然に 秋の足音に合わせるように 「手が冷たくなる前に、ね。」 笑顔のまま、スキップして ねえ、この季節を待ってたの？ (秋の待ち伏せ) #pw秋組

春森しゆう @junju_usako

小雨の降る中、赤、桃、水色の傘をさし、小菊の苗を買ってきた。 鉢に植え替えてお腹が空いたといえば雨をあげた。 のびのびした小菊が一年後、蕾をつけるのを待ち伏せた。 はじめに黄色。次に白が咲きそうで、桃色はようやく蕾。 いっしょに育っても咲くのは順々。 （秋の待ち伏せ）#pw秋組

チャラチャラのチャンピョン @knstkino

順に咲いて、色とりどり。 涙の雨はもう要りませんか？ ふわり、風に揺れ (あったかいお日様の光がほしいわ。)と 自由気儘な彼女たち。 僕が咲くのを待ってはくれないの。 俯き頭垂れた、秋日和。 包まれた温もりのなか、 (貴方が咲くのももうすぐね。) (秋の待ち伏せ) #pw秋組

春森しゆう @junju_usako

蹴られた石が硬く凍っていく。 溶かし方を見失ない、熱を伝える手段がない。 それでも同じ山にいたいと、踏みとどまる。 粉々になれれば簡単だろう。 許しを請いたいのにただ見上げている。 枯れ葉のベッドは柔らかいか。 同じ高さで見る日を待ち望んでいる。 （秋の待ち伏せ） #pw秋組

こひもともひこ @kohimon

「まもなく来るはずだ。今年はひとりだろうか、それともふたり、さんにんだろうか？」 住家は、 誰かが住まないと、あっという間に滅びていく。 洞穴もまた、 熊の帰りを楽しみに待っている。 (秋の待ち伏せ) #pw秋組

黒鍵の調べは反転した虚ろな悲しみ @kuroikenban

熊倉さんは今日も寝ている、美人だけど口からよだれを垂らしている、きっと夢を見ているのだろう 熊井さんはなんだってうまくいかない、寝坊は生活習慣病でもないから保険もきかない 腹減った、熊倉さんも、熊井さんも 寒くなってもご飯は友達、もぐもぐ秋をはむはむ （秋の待ち伏せ） #pw秋組

春森しゆう @junju_usako

山ー洞穴ー熊、楽しいです⭐️

末松 努 @dejodajo

台風の過ぎた午後 生まれたてのような陽光に まだ世界を温める力はない 葉も声も枯れた庭に佇み 後ろに組んだ手をほどくこともなく 夕暮れを待つ間に現れた一番星を 見ることができない （待ち伏せているの、それとも、踏み出せないの） 孤独の秋が囁く （秋の待ち伏せ） #pw秋組

春森しゆう @junju_usako

大声で誰かを呼ぶきみの姿が羨ましくて、 小さな声で嘆いている。 声が枯れてしまうくらいに求めてみたい。 カサカサと葉擦れの音が、胸の中で囁く。 砕けてしまえたら、い、い。 風が冷たい。 陽が射している。 （秋の待ち伏せ） #pw秋組