農協問題に係る論点について(川村教授日経記事)

平成25年11月7日(木)の日経朝刊に掲載された、宮城大学の川村教授が書かれた記事が、タイミング的にとても良かったのでまとめ。内容も良質。 かなり前から「農協のヘテロ化」を指摘している川村教授は、近代経済学の視点で農協を論じられており、現在の農協問題に係る議論においても新鮮な指摘も多い。 規制改革で盛り上がる農協問題について、冷静かつ的確な課題提起であり、毎度のらりくらりの農協組織も、川村教授の指摘は真剣に向き合うべきだろう。
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Archer.K @Archer_K

11月7日(木)の日経新聞の経済教室「農業改革の視点(下)」で、宮城大の川村保教授が農協についての記事を書かれている。農協関連記事を色々とウォッチしているけど、日経新聞に掲載された記事の中では抜群に出来が良く、建設的と思われる。JAグループはこの指摘を真摯に受け止めるべきだろう。

2013-11-10 10:59:05
Archer.K @Archer_K

農協は、法が求める「組合員に対する最大奉仕」という協同組合性を基礎に、経済環境の変化により多様化する組合員のニーズに合わせた事業展開を進め、地域の1経済主体として成長してきた。川村教授はこうした個々の農協の変質を「ヘテロ化」と表現しており、農協を一括りに議論することを牽制する。

2013-11-10 10:59:24
Archer.K @Archer_K

これは極めて妥当で、色んな事例を見ていると、本当に熱心に営農・経済関連事業を行い農業生産力の向上に寄与している農協もあれば、景観維持や教育的な意義から都市農業の維持に努める金融中心の農協もある。どちらも一定の価値があるが、ヘテロ化した事実は否定できず、個別的な論点整理が必要だ。

2013-11-10 11:00:08
Archer.K @Archer_K

画期的なのは、セブンHDやイオン等の大手小売の寡占化が進む今日では、むしろ農協の重要性は増しているという協同組織の性質を汲んでいる点だ。「法と経済学」の理論ではごく自然な発想で、公正取引委員会も平成23年に見解を示しているが、政治的には独禁法の適用除外廃止が叫ばれており歪である。

2013-11-10 11:01:16
Archer.K @Archer_K

ある意味で情けないが、世間的なイメージに反して農協には寡占的な価格決定能力は無く、農業がそんなに優遇されて儲かるならもっと参入が進んでいるはずだが、企業ですら仕入の代替としての参入程度しかない。もちろん、そもそも国内生産の必要がないという主張はありうるが、これは今回とは別の議論。

2013-11-10 11:01:33
Archer.K @Archer_K

川村教授の提起する論点は大きく①准組合員制度②総合事業③共同販売の3つと見る。農業者でない准組合員については、単純な議決権付与を牽制する。組合員側にこのニーズがあるか甚だ疑問だが、法技術的には二重総会制度や割合のキャップを設けるなど、准組合員に直接議決権を与えることは可能だろう。

2013-11-10 11:02:06
Archer.K @Archer_K

しかし、多くの論者が「農業者のための農協」を問題視しながら、准組合員の経営参画を促すのは論理的に整合性がない。私は地域協同組合論には疑義があるが、准組合員制度や総合事業は、経済合理性から健全経営、ひいては農業者の利益のために不可欠なので維持し、共益権は正組合員に限定すべきと思う。

2013-11-10 11:02:55
Archer.K @Archer_K

准組合員が多いと農協が金融に集中して農業分野の事業がおろそかになるという主張は誤っている。生産性の低い農業分野に経営資源を割けるのは金融があるからであるし、EUに伍して日本の中で圧倒的な農業生産力を誇る農協のあるべき姿を体現する北海道でも准組合員割合がとても高いという実態がある。

2013-11-10 11:03:33
Archer.K @Archer_K

農協が無ければ専業農家が拡大するというのは論理の飛躍が甚だしいが、協同組合という「非効率」なガバナンス体系では格差の付与が難しいため、理論を飛び越えて法的に政策誘導するしかないだろう。これは、利用配当や議決権において大規模・専業農家が有利な仕組みを強制することが経済的に妥当だ。

2013-11-10 11:04:41
Archer.K @Archer_K

協同組合をやめろ、という主張もあるが、地学的制約から小規模農家の存在を前提とせざるをえない日本では、一定の共同経済行為が必要であり、生産局面での独禁法適用除外は必要だ。これは国際的にも一般的で、日本でだけ排除する必要性が無い。一方、加工・販売局面では会社化をするのも合理的だろう。

2013-11-10 11:05:36
Archer.K @Archer_K

兼業農家の存在自体を悪とするロジックが議論をこじらせていると思われる。小規模・兼業農家は、少量・多品目ながら農業基盤を維持することに一定寄与するが、転用期待で農地を保持し、政策にバンドワゴンで虫食い的に農業を行う層がいるのも事実だ。しかも資本主義社会ではこれを排除するのは難しい。

2013-11-10 11:09:50
Archer.K @Archer_K

これらを解決するための手段の一つとして補助金の与え方や農地整理の新たな仕組みが検討されているところだが、産業が全く無いような地域もあり、日本全体のグランドデザインの問題になるのでかなり時間がかかるだろう。道州制の議論もしかり、「地方の中の地方からは人間を撤退」という根本的な話だ。

2013-11-10 11:10:42
Archer.K @Archer_K

川村教授が①准組合員制度②総合事業③共同販売の論点において、見直しの決着にどのような想定をされているかは分からないが、農業実態や法理論に関して地に足の着いた論理展開でありながら、制度の変質に曖昧に対応してきた農協系統にクサビを打ち込む実に素晴らしい記事だと思う。

2013-11-10 11:12:12