#フォロワー病人化　なかつver

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

彼には紙とペンを用意する。 彼の病室は霊安室の真下にある。 彼女にはとびきりきれいな水を用意する。 彼女の病室は屋上に行く階段の近くにある。 みんなどこかを病んでいて、私がとびきり重症だ。 なかつバージョン　#フォロワー病人化　、11月16日公開！ (忘れないようメモ)

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

まずは洗濯だ。私のはじめの仕事は洗濯である。洗濯の間に新聞を読んで、綺麗になった衣類をカゴにいれ、ポシェットに包帯が入っているか確認をして、私は四階まで向かう。この病院は四階建てで、そこから屋上に向かう階段をのぼる。洗濯物を干した私は、四階の病室から見回る。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

四階1　彼女の病室は屋上の階段のそばにある。私が病室を覗くと、彼女は大抵起きている。おはようと声をかけながら彼女に近づく。彼女はぼんやりとこちらを見て、手の甲の傷を気にせず笑った。私はポシェットから包帯を取り出し、ガーゼの上から巻いてやる。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

四階1　彼女はときたま、意識が「現実でない何処かへ」飛んでしまうことがある。そこは確実にここではなく、そして今でもないそうだ。院長は「多次元性現実失調症」と呼んでいた。彼女はここが「現実」であることを確かめるため、自分を傷付けることがままある。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

四階1　彼女曰く、「現実が一番痛い」のだそうだ。ここが現実であることを確かめるために、彼女は自分を傷つける。何の傷もなかった日の朝の笑顔は、この病室から見える青い空のようだ。 /401号室の入院患者→　@0tk_166 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

四階2　次に向かう部屋の患者は、私が行ってもほとんど寝ている。私が彼の体を揺さぶり起こすと、彼はおはようの代わりに羽を一本くれる。それがとても綺麗だから私はつい許してしまうけれど、そろそろお寝坊さんであることを注意しなければならない。枕のそばに散らばった羽を #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

四階2　集め、ポシェットにつめて調子を聞く。彼は飄々と「今日も飛びたい気分だ」と答える。彼は背中に小さな翼を持っている。肩のあたりから二の腕まで、鳥のお化けにとりつかれたようになっている。その翼は動かせないらしい。「今日も飛べないけどね」彼の毛はよく抜けるが #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

どうやら冬毛と夏毛があるらしく、その時期にはぽろぽろと抜ける。そして違う色の羽がはえてくる。どれもきれいな色だと言うと、集めて作品でも作るといい、と笑ってくれた。私にそんな才能はないのだが。 /402号室の患者→　@_ka2_nohito #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

移動　四階の患者に別れをつげ、私は一階分階段を下りる。三階は手術室など治療に必要な部屋ばかりだ。しかし、一人だけ入院患者が眠っている。ひっそりと音もなく彼女はそこにいる。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

三階　彼女には、とびきりきれいな水を持って行く。おぼんの上にガラスのコップをのせて、その中には透明な液体。私は彼女に挨拶をし、体の調子を聞くが、彼女は答えず微笑むばかりだ。しかし、微笑んでいるということは、彼女の調子はよいということ。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

三階　彼女は声を出すことができない。いや、声自体は出せるのだ。彼女は声帯に病を宿している。病によって変化してしまった声帯が震え、その振動が空気に乗り私たちの聴覚を刺激すると、私たちの神経細胞は大きすぎる快楽を得られ壊死してしまう。だから、彼女は何も言わない。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

三階　彼女は不思議な色の髪をした美人だ。きれいな水で処方される赤い錠剤を飲み込むその滑らかな喉のラインを、私は毎日眺めている。彼女は時々、誰もいない時に歌うのだという。私の手のひらに、細い指でそう書いた。 / @Jane_Na_Doe →三階の入院患者 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

移動　私はおぼんとコップをおいて、二階へと移動する。二階にはナースステーションがあって、私はそうっとそこで休憩をとる。この病院はひっそりと静まっていて、お茶を飲む音すら、生命の妨げとなりそうだ。お茶を飲み、昼食をとり、私は再び見回りを再開する。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

診察1　さて見回りを再開しようというところで、私は背後から声をかけられた。振り向くと、そこにいたのは定期検査を受けている女性だった。彼女は真っ赤な高いハイヒールをカツカツと響かせて私のそばにくると、ニッコリと豪勢に笑った。 「おみやげ、買ってきたけど」 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

診察1　彼女は月に二回、この病院で診察を受ける。彼女は「怒り」というものが、すとんと抜けているのだそうだ。何をされても怒れない。恋人が殺されても、親友に騙されても、悲しむだけで怒りはしない。彼女から渡されたお菓子の箱を抱え、私は背の高い彼女を見上げた。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

診察1　彼女が診察される場面を見たことがないが、きっと気丈に振る舞うのだと思う。人間として欠けているものがある、その不安は私には計り知れない。もしかすると彼女は既に、恐怖もなくしてしまったのかもしれない。 /定期検査にきた女→　@Mi_rrk1 #フォロワー病人化

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二階1・2　「遅くなってすみません」 私がようやく病室に入ると、聞こえていた声がぴたりと止まった。「今日はここまで」　窓際で椅子に座っていた彼が言った。その向かいで、いかにも病弱そうな青年がうっすらと微笑んだ。スキップのような軽い足取りで自分のベッド脇まで #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

二階1・2　歩いてくると、私から白い袋を受け取って、ベッドに腰掛けた。そこから出てくるのは様々な形の錠剤である。普段の振る舞いからは少し離れた、丁寧な手つきで彼は薬の包装を剥き始めた。私は更に奥に進み、ベッドに座った青年のベッドサイドテーブルに飾られた花へ水を #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

二階1・2　やった。今月の花はガーベラだ。美しく咲いてくれている。ベッドに座るこの青年は、特別変わった病に侵されている。彼は、体に葉緑素を持ち、光合成をするのだ。うっすらと緑づいた肌の色が彼の異常を私に示し続ける。彼のそばに置いた花は、癒しであり彼の仲間だ。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

二階1・2　二階の、一番日当たりがいい病室で、彼は静かに生きていた。彼はもう一年ほど、口から栄養をとれずにいる。何を読んでもらっていたの、と私が尋ねると、後ろから声が聞こえる。 「葉っぱのフレディ」 私は思わず振り返った。 「違うよ、奴のリクエストだ」 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

二階1・2　「そう、ぼくが頼んだの」　月下美人のような声が応える。 「ほら見ろ」 彼はふてくされたようにそう言って、ざらざらと錠剤を口の中に流し込んだ。ベッド下のペットボトルでそれを一気に胃まで流す。尋常ならざる量に、私はいつもぞっとする。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

二階1・2　彼の病もまた特殊だ。臓器の中に別の臓器ができるのだという。その進行を抑えるため、彼には多種多様な薬が必要だった。 「点滴が終わりそうだぜ、ナースさん」 /203(相部屋)の入院患者→　@ourinouri @wakato_K #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

二階3　私は、隣の病室のドアをノックした。彼女の部屋はいつでも日が入らない。窓の前の大木が邪魔しているのだ。 「今日も晴れですか？」　ベッドの上の彼女が私に尋ねる。私は、薄暗い病室をぐるりと見回してから、ええ、と答えた。彼女の唇が嬉しそうに歪む。 #フォロワー病人化