#フォロワー病人化　なかつver

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

二階3　彼女が私の嘘に気付かないのは、その目を覆う真っ黒なマスクのせいだ。彼女は今、世界を何も見ていない。彼女の涙はおそろしく結晶化しやすい成分を多く含むため、目の表面で結晶化してしまうのだ。それでは目が傷付いてしまう。だから、常に目の表面を洗浄している。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

二階3　この治療には痛みもあるし、終わりがない。とても辛い治療だとは思うけれど、彼女は文句を言うこと泣く耐えている。だから私は、今日も一つ嘘を重ねる。 /202号室の入院患者→　@ruin_61219nt #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

初診　二階の見回りを終え、私は一階の診察室での仕事に向かった。この病院は待合室が満員になることがほとんどない。しかし、私が一階に降りると待合室には一人の少女が待っていた。こんにちは、と一応挨拶をしてみる。少女はハッと顔をあげ、私のほうを見た。 #フォロワー病人化

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初診　少女は初めて見る顔だった。ここに来たことのある患者はほとんど覚えているから、彼女は初診に違いなかった。 「どうかしましたか」 「いえ、あの、私、どうしてしまったのか、もふもふしてるものを異様にもふもふするようになってしまって」 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

初診　「ごめんなさい、おかしいでしょう」 少女は聡明な、はきはきとした語り口だったが、不安が見え隠れしていた。 「あの、この場合、私は何科になるんでしょうか？　皮膚科ですか……」 /待合室の少女→　@minat_mo #フォロワー病人化

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診察2　少女に初診のための書類を渡し、私は診察室に入った。白衣を着た医者の前で、整った顔の男が陰鬱な表情を浮かべている。彼も、「怒りを忘れた」彼女のように、定期検査を必要とする患者だった。きっちりとした髪と、その文学的な表情の組み合わせでまるで役者のようだ。 #フォロワー病人化

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診察2　彼は陰鬱な表情で、彼にしか見えない誰かのことを話している。彼の病の源で、誰にも理解できない存在のことを彼は医者に話し続けた。 /定期検査にきた男→　@muto628 #フォロワー病人化

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移動　午後も遅く、日が少し傾きかけてきた頃、私はようやく地下二階へ移動した。私が見回る最後の階。日の届かない最下の階。だから、午前にきても仕方がない。どうせ日の光は届かないのだから。私は患者一人一人のことを考えながら、廊下を歩いた。 #フォロワー病人化

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地下二階1・2　彼にはペンとノートが必要だ。毎日この病室に来るときは、ペンとノートを持ってくる。新品の、何の思考の痕跡もないノート。しかしそのノートはすぐに思考でいっぱいになって、病室の隅に作られた文字の山の一つになる。私がドアを開けると、 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

地下二階1・2　やはり彼は何かを書き綴っていた。執筆に集中する彼のそばへ新品のノートとペンを置いた。危ない、もう少しでノートのページがなくなってしまうところだった。これこそが彼の病である。とにかく、何かを書き続けてしまう病。思考を言葉にしなければいけないと #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

地下二階1・2　思い詰めてしまう病。彼の病室の床、天井、ベッドの足、至る所が文字で埋まっていた。文字の上に文字が重なり、何が書いてあるのか判別できない。しかし彼は書き続ける。何を書いているのかとノートを捲ったことがあったが、私には理解できなかった。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

地下二階1・2　熱心な病室の主を一旦置いておいて、私は壁のそばにいる美少年の肩に手を乗せた。少年は、この隣の病室に入院している患者だ。赤い唇を真っ黒になった壁に押しつけ、少年はずずと文字をすすった。少しだけ、壁の黒の密度が薄くなる。ぴくぴくと体を震わせ、 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

地下二階1・2　少年は壁の文字を食べ続けた。少年に必要な栄養素、それは文字である。僅かに頬を高揚させ、恍惚とした表情で少年は壁の文字を食べていた。綴られすぎた思考の残滓を、おいしそうに食べていた。私には何も読み取れないというのに、少年はこの部屋に #フォロワー病人化

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地下二階1・2　書かれた全ての文字が読めるのだという。この少年ならば、彼の思考の流出を知ることができるのだろうか。私は半ズボンのポケットに、あめ玉を一つ忍ばせた。 /-201号室と-202号室の入院患者→　@MACHINO_URYYYYY @nedutoka #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

地下二階3　私は次の病室に足を踏み入れた。ここの空気が少しだけ苦手だ。何故ならここは、霊安室の真下なのである。天井から死の匂いが降ってきそうだ。 「今日も、上に誰かいるのかな」 とても顔色の悪い男が、壁にかかれた偽物の窓の前に立って言った。 #フォロワー病人化

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地下二階3　「誰かいるような気がするよ」 「誰もいませんよ」 私はここでも嘘をつく。本当は先程、患者が亡くなったばかりなのだ。上には死体が眠っている。しかしそれを言っても、彼には理解できないだろう。彼は脳の高次機能に障害を持っていて、 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

「死」というものが理解できなくなっている。それはとても、羨ましいことだと思った。きっといつか、彼がこの部屋の真上に横になることがあっても、それは死んだわけではないのだ。ただ、もう起きれないだけなのだ。 /204号室の入院患者→　@YoShiTsuG_ #フォロワー病人化

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地下二階4　私は最後の病室に向かう。入院患者はこれで最後だ。私が部屋に入っても、彼は何も反応を示さなかった。近づいて、その顔を見て、視線のみがこちらに向けられたことを確認し、私はようやく安堵する。彼は高名な文豪だった。難解で高尚な内容から、 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

地下二階4　その作品はもはや小説ではなく、哲学書だと言われていた。しかし彼は、その才能を生かすことができず、日の当たらない地下二階で静かに横たわっている。それは突然だったという。彼の神経系は、突然、触覚、つまり圧力を感じることだけに過敏になってしまった。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

地下二階4　彼は何にも触れなくなった。服すらも肌に触れると苦痛になった。だから彼は、全身の感覚を麻痺させる薬を投与されて、一日ただここにいる。生きている。私は、そっとその病室を出た。 /-203号室の入院患者→　@abyss_akira #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

看護婦　私の仕事は様々な病を見ることだ。そして病に対処することだ。ここでは色んな病が存在する。皆が病んでいる中で、私がとびきり重症だった。私の思い病状は、生きることがわからないことだ。私には生きることの実感がない。毎日同じ仕事をして、毎日ここにいる。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

看護婦　病人の方がましなのかもしれない。彼らは皆、「生きている」のだ。私には何もわからない。私は彼らを見て、適切な行動をするしか考えられない。私は重篤な病に犯された人間だ。私は地下一階に寄り道し、開けなくてもよい霊安室の扉を開けた。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

看護婦　開けなくともよいのに。そこにはかつて、「生きていた」もの。私と違うもの。 私には生きている実感がない。まるでプログラムのような毎日だ。 それは、何より恐ろしい、不死の病なのかもしれなかった。不治の病に違いなかった。 #フォロワー病人化

なかつ🌗冬コミ12/30西2か24a @nktu_pdu

エピローグ　 ひよこのぬいぐるみを抱えたまま、わたしは先生に尋ねた。 「先生、私にこの紙を渡してくれたあのロボットは、看護婦のようなものですか？」 /不治の病に犯された看護婦→　@Arsenix33 #フォロワー病人化