茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1092回【自分のことを、わかっていたい】連続ツイート

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第１０９２回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、このところ時々思っていたこと。

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じわ（１）先ほど、ホテルでの朝食をとって、下のロビーに降りたら、養老孟司さんがいらした「あれ、もうこんなにお早く」と聞いたら、「散歩に行こうと思って」と養老さん。ところが、ホテルの人とエレベータに乗り込もうとしている。どうやら、自分の部屋の鍵を忘れてきてしまったらしい。

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じわ（２）ぼくはなぜ養老さんが好きなのかな、と思いながら、朝の小樽の街を散歩した。昨日、飲み会の時にプチ爆発したことを思い出した。最近では、爆発はできるだけ控えているが、カチンとくる発言があると、その場で爆発してしまうこともある。そのあとは後腐れがなく、すぐに戻る。

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じわ（３）最近、爆発することが少なくなったのは、それぞれの人が、なぜそのように振る舞うのか、ということをできるだけ理解しようとするからだろう。例えば英語圏に行って必死に向こうに適応しようとしている人が、日本のことを見下したり、英語の小さな間違いを揚げ足とるのはとてもわかりやすい。

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じわ（４）先日の「全力教室」で、東大生たちが、自分たちが合格してきた受験の価値を否定されて怒るのも、とてもわかりやすい。地位や肩書きで守られているおじさんが、威張ろうとするのも、わかりやすい。いろいろ考えると、カチンと来る振る舞いも、その人なりの生の必然性があったりする。

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じわ（５）ツイッター上だと、一人のひとをじっくり観察する機会があるから、大抵の場合、もう驚かなくなった。例えば、韓国がどうのこうのとか相変わらず言っていたり、人のことをお前は在日だろうと言ったり（どうでもいいことだが、私の両親、祖先はずっと日本人だ）する人も、必然性がある。

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じわ（６）韓国のことを相変わらずああだこうだと言う人は、どうも、本当は韓国に関心があるんじゃないか、と思う。ぼくは隣国としての温かい注意は払っても、それ以上の関心はない。このように、それぞれの人を突き動かしている衝動のようなものを分析すると、いろいろ見えて腹が立たなくなる。

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じわ（７）それで、なぜぼくは養老孟司さんのことが好きなのかと言えば、自分自身を、あるいは他人を突き動かしている衝動について、自覚的だから。適応することは素晴らしいことだが、それは不幸の始まりでもある。ある文脈で適応した人が、その余り周囲を否定することが多々ある。養老さんにはない。

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じわ（８）東大教授が、入試改革について懐疑的な理由はわかりやす過ぎるくらいわかりやすいし、文系の先生がグローバル化に対して異論皮肉を言うのもわかりやすい。新聞がネットを敵視するのもわかりやすい。できれば、みんな、自分を突き動かしている衝動にもう少し自覚的になればいいのにと思う。

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じわ（９）自分のことをわかると、あまり他人をあれこれ言わなくなるのかもしれない。自分のことをわかっていない人ほど、他人をあれこれ言うのかもしれない。できれば、自分のことを、わかっていたい。嫌いな人は、自分にとっての何かを含んでいる。関心を向けるのならば、まずは自分のことに対して。

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以上、連続ツイート第１０９２回「自分のことを、わかっていたい」でした。