アニメ監督・神谷純氏のウルトラシリーズにおける「怪獣」
アニメーション監督。 最新作は『やくならマグカップも 二番窯』 10月から放送スタート! 日常は怪獣とハロプロのことばかり考えて生きてます。 『大怪獣ラッシュ ウルトラフロンティア』、7月からTSUBURAYA IMAGINATIONにて配信中!
『大怪獣ラッシュ』をやるにあたって……というか、それよりもずいぶん前から個人的に「怪獣」ってなんだろうってのは、ちょくちょく考えてきた。で、掘り進めるとどこまでも行くんだけど、取り敢えずウルトラシリーズに関してはやはり「ウルトラQ」に行き着く。
2013-11-20 22:15:44ウルトラQは、元々は「UNBALANCE」というシリーズ名で制作はスタートした。タイトルの示す通り、この世界の秩序がふと壊れ、アンバランスな何かが起こるというのが番組の主眼。在るバランスが崩れ植物が巨大になったら? 意識が体から抜けだしたら?などなど。
2013-11-20 22:20:04そんな「アンバランス」な世界を毎回1話完結方式で見せていくというスタイル。その中にはいくつかの「怪獣モノ」も含まれていた。ただ、これではどの視聴者層をターゲットにしているのかわかりにくい。そこでTBSの栫井魏プロデューサーが「怪獣モノ」を中心とするようにオーダーを出した。
2013-11-20 22:24:53このオーダーにより番組「アンバランス」は「怪獣モノを中心とした番組」になった。ここに大きなポイントが有る。つまり「この世界の秩序が崩れたアンバランスな事象」が『怪獣』というシンボルになったのだ。ウルトラQに置ける『怪獣』とは、つまり「我々の常識・秩序の外の存在』なのだ。
2013-11-20 22:27:34テレビ番組というのは毎週観てもらわなければいけないものなので、何か明快なシンボルがほしいのだ。「ウルトラQ」はここで番組のフォーマットである「バランスが崩れた世界」のシンボルとして怪獣を得た。その結果、バランスが崩れ怪獣が現れるという魅力的かつ分かりやすい番組の輪郭を獲得した。
2013-11-20 22:31:51ウルトラQにおける怪獣とは、我々の常識を壊しに来る「得体のしれない何か」なのだ。そして「得体が知れない」からこそ「知りたい」と希求する我々人間の欲求にダイレクトに響いてくる魅力を持っているのではと考える。
2013-11-20 22:35:40その魅力が怪獣たちにあればこそ、怪獣はスターとなり、「ウルトラQ」は高い視聴率をはじき出すお化け番組になったのではなかろうか。そして次シリーズとしてその「分からない」がゆえの魅力にあふれた怪獣をスパッとやっつける「ウルトラマン」が登場する。これが面白くないわけがない。
2013-11-20 22:38:34とまあ、これ以降は「ウルトラマン」の魅力になっていくので『怪獣』としての考察はここまでにする。『大怪獣ラッシュ』で怪獣を描くとき、『我々の常識を壊しに来る』とまではストーリーの構造上いかないまでも、それを感じられるほどの原初なパワフルさは表現したいと意識している。
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