サブミッション・スリーピング・ビューティー #6

なんだかんだ言ってE5に突入した
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劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇◇ ←91式徹甲弾

2013-11-25 21:01:02
劉度 @arther456

鉄底海峡。数多の船が沈み、深海棲艦となった海。その最深部は一切の謎に包まれており、謎を明かそうと近づく者は、深海棲艦たちに例外なく沈められていく。今日も同じような犠牲者を探して、重巡リ級が駆逐級を連れて夜の海を巡回する。1

2013-11-25 21:02:25
劉度 @arther456

そのリ級が突然爆発した。後続の駆逐艦たちが驚いて辺りを見回す。だが、何が起こったか分からぬまま次々と彼らも爆発し、そして洋上には何もいなくなった。2

2013-11-25 21:06:01
劉度 @arther456

「進路クリア。進軍できます」「よし、突入するぞ」それより少し離れた夜闇の中に、横須賀鎮守府第一艦隊の姿があった。長距離狙撃と魚雷によって巡洋艦隊を葬った不知火を先頭に、巡洋艦『蔵王』と艦娘たちは進軍する。こうして彼女たちは鉄底海峡最深部、初めての侵入者となった。3

2013-11-25 21:09:32
劉度 @arther456

「あ、前方に浅瀬なのです」「む。左に避けて」提督の船が進路を変える。海峡なのだ、多少の浅瀬はあって当然である。海面を滑る艦娘には関係のない話だが。ふと気になって、提督は窓の外を見た。浅瀬らしき場所に、黒い大きな影が見える。5

2013-11-25 21:12:26
劉度 @arther456

目を凝らすと、それが船であることがわかった。提督の乗る船と同じタイプの巡洋艦だ。ここに侵入してしまった際に、深海棲艦に沈められたのだろう。穴の空いた横腹を上に向けて沈んでいる。自分の行く先を突然見せられたようで、ゾッとした。6

2013-11-25 21:15:44
劉度 @arther456

「縁起悪ぃ」沈没船から目を逸らし、提督は夜の水平線に目を戻す。いっそ敵が出てくればいいと思ったが、期待に応える気晴らしの餌は現れなかった。『提督』代わりに時雨の声が聞こえる。そちらの視界に注意を移した。「遠くに、船がいるよ」「船?」7

2013-11-25 21:19:00
劉度 @arther456

時雨の目には、遠くの海面に浮かぶ船の姿が映っていた。「あれは……」見覚えがある。手元のコンソールを操作して、ある資料を呼び出した提督は目を見張った。「古鷹、だと?」「え?古鷹なら第二艦隊に」「違う。船の方だ」時雨の視線の先にいるのは、『大日本帝国海軍重巡洋艦』古鷹。8

2013-11-25 21:22:23
劉度 @arther456

「なんで?だって古鷹は……」「近づくな、時雨。どうにも嫌な予感がする」艦船の古鷹は、太平洋戦争においてこの鉄底海峡で沈んでいる。当然、水に浮かべる状態では無い。ましてやここは深海棲艦の本拠地。中から突然砲撃してきてもおかしくはない。9

2013-11-25 21:26:43
劉度 @arther456

「……妖精さん、水上レーダーを起動させてくれ」「水上レーダー?なんでです?」「いいから、急げ!第一警戒体制!」「は、はいです!」対深海棲艦には使わない通常のレーダーが起動し、コンソールに光点が灯る。その数は、6つ。この船、正面の古鷹。そして後方に4つ。10

2013-11-25 21:30:13
劉度 @arther456

悪い予感が当たった。「非常体制に移行!機関最大戦速!モタモタするな、後ろから食らいつかれるぞ!」『提督、どういうこと!?』「時雨、目を離すな!その古鷹も敵だ!」時雨の視界が『古鷹』を向く。先ほどまで茫洋と海に浮かんでいた『古鷹』が、主砲をこちらに向けていた。11

2013-11-25 21:33:36
劉度 @arther456

轟音。更に轟音。巡洋艦『蔵王』と時雨たちの周りにいくつもの水柱が上がる。砲撃したのは『古鷹』だけではない。後方より迫る4つの艦影もまた、その主砲でもって彼女たちを攻撃したようだ。「被害報告!」「機関室異常なし!」「レーダー異常なしです!」『こっちも大丈夫だよ!』12

2013-11-25 21:37:17
劉度 @arther456

窓から艦の後部を見る。『蔵王』を追うのは戦艦『比叡』、軽巡『アトランタ』、フリゲート艦『ポートランド』、駆逐艦『アーレイ・バーグ』『ズムウォルト』。5隻。『ズムウォルト』を見直す。ステルス性に重点を置いた、板を張り合わせたような独特の形状。13

2013-11-25 21:40:42
劉度 @arther456

「全員伏せろぉぉぉ!」提督が叫んだ瞬間、かの艦に搭載された対深海棲艦用レールガンが火を吹いた。14

2013-11-25 21:41:48
劉度 @arther456

リンクされた視界が白く染まった。反射的に時雨は目を瞑りかけるが、それをこらえて目の前の敵に集中する。敵は『古鷹』。右手の高角砲を撃つ。爆発音が2つ響き、『古鷹』の船体が軋んだ。艦娘の名前は比喩ではない。彼女たちの扱う武器は、実際の艦に引けをとらない威力を持つ。16

2013-11-25 21:45:10
劉度 @arther456

裏を返せば、本物の軍艦との打ち合いとなれば、破壊力と防御力の点ではほぼ互角ということだ。「くっ!」『古鷹』の20.3cm砲を左に急旋回して避ける。魔法障壁がある程度ダメージを防いでくれるだろうが、駆逐艦の防御力では直撃すれば中破は免れない。17

2013-11-25 21:51:03
劉度 @arther456

砲撃を避けつつ、時雨は雷撃距離まで詰め寄った。足の魚雷発射管から、必殺の酸素魚雷を発射する。『古鷹』は回避行動をとるが、間に合わない。2本の魚雷が喫水線の下で炸裂し、『古鷹』が大きく傾きだした。海面に泡を放ちながら『古鷹』は水底へと沈んでいく。18

2013-11-25 21:54:27
劉度 @arther456

これはただの鉄の骸だ。動いている理由はどうであれ、時雨の知る古鷹ではない。そう思っていても、再び彼女を沈めることに、時雨は僅かな哀しみを感じていた。『ふっ……くはははは!ぶっ放せぇ!』その憂いをぶち壊しにする絶叫。そして、『蔵王』から火柱が上がった。19

2013-11-25 21:57:55
劉度 @arther456

放たれた火柱、否、対艦ミサイルは天高く舞い上がり、音速を超えて後方の艦隊へと向かって突撃する。追撃部隊は対空機銃を発射するが、間に合わない。『ミッソー、オッケェ―――イ!』火柱はそれぞれ一本ずつ、全ての船に突き刺さり大爆発を起こした。20

2013-11-25 22:01:12
劉度 @arther456

『蔵王』を砲撃した『ズムウォルト』は『アトランタ』と共に瞬時に撃沈。『アーレイ・バーグ』は大きく傾き、『ポートランド』は主砲に直撃を受け砲撃不能に陥った。ただ『比叡』だけは艦橋が抉れたものの、兵装はほぼ全て健在である。それでも戦力は1/5となった。21

2013-11-25 22:04:31
劉度 @arther456

「提督、大丈夫!?」『だいっじょーぶ!この原子力ミサイル巡洋艦『蔵王』は最新鋭の軍艦だぞ?深海棲艦ならともかく、ちょっと昔のフリゲート艦とか、ましてや太平洋戦争の頃の船ぐらい、ミサイルでイチコロよ!うはははは!』恐怖の余りハイになった提督が高笑いを上げている。22

2013-11-25 22:07:58
劉度 @arther456

「提督!『比叡』二射目、来るです!」『避けろぉぉぉ!』『蔵王』の横で水柱が上がる。だが、直撃には程遠い。『時雨、他の皆と一緒についてこい!逃げるぞ!』『蔵王』が加速する。「逃げるって、なんで!?」『新手だ!』振り返ると、『比叡』の後方に更に多くの艦影が見えた。23

2013-11-25 22:11:41
劉度 @arther456

「みんな、提督の船に追いつくよ!ついてきて!」「了解」「私、先に行ってるね!」島風が先行し、その後から時雨たちがついていく。提督を追う『比叡』たちとは同航戦の形になった。右舷に取り付けられた副砲が時雨たちを狙う。砲弾の雨の中を、彼女たちは果敢に進んでいく。24

2013-11-25 22:15:33