茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1104回「臨死体験といっても、脳に記憶ちゃんと残ってるからね」

脳科学者・茂木健一郎さんの11月29日の連続ツイート。 本日は、ツイートでリクエストがありましたので。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

続ツイート第1104回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、ツイートでリクエストがありましたので。

2013-11-29 07:17:11
茂木健一郎 @kenichiromogi

りの(1)エベン・アレクサンダー氏の臨死体験(http://t.co/YlsF8oUZuh)(邦訳はなんていうか知らないけど、原題は「天国の証明」みたいなタイトル)がアメリカで話題になっており、日本のテレビ番組でも取り上げられたらしい。今日は、臨死体験について考えてみたい。

2013-11-29 07:19:22
茂木健一郎 @kenichiromogi

りの(2)臨死体験の特徴は、その迫真性である。今回のアレクサンダー氏も、非常にビビッドなイメージを見たようである。本人は、それを現実と信じる。脳科学の立場から言えば、ある体験が本人にとってリアルだと感じられるというだけでは、その体験世界が実在するという証明にはならない。

2013-11-29 07:20:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

りの(3)そもそも、私たちがいる「現実」世界自体が、脳活動が生み出した脳内現象で、たまたまそれが間主観性において一致して、生存に資するからそれを「現実」と呼んでいるだけのことである。脳は簡単に主体を騙す。通常は、安全装置が働いて暴走しないだけのことで、思わぬ幻覚を見ることはある。

2013-11-29 07:22:10
茂木健一郎 @kenichiromogi

りの(4)奇想天外な夢のことを考えれば、脳が自律的に生み出すイメージがいかに詳細かということは納得できるだろう。通常はそれに覚醒時のような鮮明な感覚的クオリアは伴わないが、伴ってしまう場合もあり、その際は、臨死体験を含む、主体にとってきわめてリアルな体験となって残る。

2013-11-29 07:23:35
茂木健一郎 @kenichiromogi

りの(5)アレクサンダー氏の場合においてもそうであるように、臨死体験の特徴は、主体が強烈な変化を経験することで、その強さが、通常の夢とは異なる。生死の境をさまようという、生体にとってストレスのかかる状況が、感情や記憶の回路にかかっている安全装置を外してしまうのであろう。

2013-11-29 07:24:52
茂木健一郎 @kenichiromogi

りの(6)ところで、アレクサンダー氏は、「自分の脳活動が停止しても、意識は残った。これは、二元論を証明する」という趣旨の主張をしている。これは論理的におかしい。なぜならば、回復したアレクサンダー氏が、臨死体験を記憶していているということは、通常の記憶機構で脳内に痕跡が残っている。

2013-11-29 07:26:17
茂木健一郎 @kenichiromogi

りの(7)脳内に記憶が残っているということは、つまり、臨死体験時にも記憶痕跡に通じるような脳活動があったということ。全体的に見て、アレクサンダー氏の報告は、今までにある「臨死体験」とカテゴリー的に同じであり、二元論を証明するものではない。それは、氏の主観に過ぎない。

2013-11-29 07:27:36
茂木健一郎 @kenichiromogi

りの(8)臨死体験については、私はかつてエッセイ『生きて死ぬ私』(http://t.co/XJdPX2Rez8)の中で詳細に議論したことがある。引き続き興味を持っているが、あの時の見解を、本質的な点において変更しなければいけないような体験記には出会っていない。今回のもそう。

2013-11-29 07:29:36
茂木健一郎 @kenichiromogi

りの(9)結局、臨死体験は、そもそもなぜ脳の活動から意識が生まれるのかという心脳問題のスペクトラムの一部に過ぎないと現時点では私は考える。臨死体験も不思議だが、目の前に机が見えるということは同質の不思議で、後者を解明することの方が、臨死体験だけを取り上げるよりも筋がいいだろう。

2013-11-29 07:31:02
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第1104回「臨死体験といっても、脳に記憶ちゃんと残っているからね」でした。

2013-11-29 07:31:34