キリ番twnovel『@windcreator 記念回作品集』
- windcreator
- 2705
- 0
- 0
- 0
百通りの儀式を経ても解けない呪いを、男はロウソクの火のように吹き消す。世界中の軍を踏みつぶす巨竜を、男は片手で封じる。世界の穴を塞ぐヒーロー。敵になろうとする者さえいない完全無敵。しかし男は、ドジだった。「ごめん、またうっかり死んじゃった」相方の猫は鳴いた。 #twnovel
2010-12-11 00:04:47回る世界、巡る命、猫。男は八つ目の命をうっかりよそ見であっさり失った。「まだまだ不幸とか悲劇の穴を埋めたかったなぁ」死に慣れた男が嘆くと猫も一緒に落ちてきた。返すわよ、あなたの九つ目。今度こそ大切になさい。猫は死に、男は泣いた。男は今も誰かの穴を埋めている。 #twnovel
2010-12-11 00:18:59という感じで「九」「百」「回」から始まる記念三連作ですにゃ。ごめん猫。ふぁぼだったり温かい目で眺めていただいたりツッコミいただいたりで、毎度ありがとうございます。バレバレかと思いますが、基本的に褒められると張り切るタイプですわたし![メール]
2010-12-11 00:27:16ツイノベでキリ番の時は自分企画なネタをしてまして、トゥギャッてます。振り返ると色々と違ったりして面白いのでツイノベを書く方にはオススメです。マイルストーンみたいな。「二百回」の時も冒頭合わせの三連作でした。ちなみに九つの命を持つ大魔法使いはクレストマンシーが元ネタ。[メール]
2010-12-11 00:35:16《0108》少年(呼称:青)と少女(同:赤)は時を同じくして午前1時8分に生を受ける。予定より8分遅れの誕生は機構の老朽化を象徴するものだ。が、産声を上げる二人には関係ない。乳母型自動人形が二人を抱き上げ、あやす。ミルクの作り方は完璧だ。たまに頭が取れるが。 #twnovel
2011-01-11 21:50:21《0210》午後2時10分。大きな病に掛かることもなく、彼らはこの揺り籠でスクスクと育った。青と赤はもうじき一歳だ。12歳まで無事成長することを祈る。心配された乳母型自動人形の老朽化も、何とかメンテで持ち堪えている。が、二人が動き回るようになると危険かもしれん。 #twnovel
2011-01-12 03:35:11《0312》小さかった青と赤も今や2歳になった。競うようにこの狭い揺り籠を歩き回る姿は、実に可愛い。が、午後3時12分、乳母型自動人形が過負荷で停止した。ミルクをやる度にど突かれ、泣かれる度にあやし続けた2年間。その顔は、無表情なのに笑っているように見える。 #twnovel
2011-01-12 04:19:34《0418》多少は後悔しないでもない。乳母型の代わりは踊り子型しかなかった。様々な「生活」を彼女の踊りに取り込ませた結果、青と赤は踊りこそ全ての生活の基礎だと学んでしまった……。歌いながら踊るので、二人は言葉も徐々に覚えた。3歳には情熱的過ぎるラブソングを。 #twnovel
2011-01-12 17:13:20《0500》恐れていた事態が起きた。青と赤が生まれてから五年目にして遂にケンカをしたのだ! 様々な文化に触れさせる映像や読み聞かせは成功したが、二人は争いまでも知ったようだ。私に身体があれば……。しかし、二人にはダンスがある。仲直りのきっかけになればいいが。 #twnovel
2011-01-12 18:43:03《0615》またケンカだ……。青も赤も6歳。学習システムと向かい合う時間が増えれば、徐々に落ち着くかと思ったのだが。逆に、不馴れなお勉強の鬱憤を互いに発散している。言葉をぶつけながら一緒にダンスをする二人は、仲がいいのか悪いのか。私には人の心がもう解らない。 #twnovel
2011-01-13 02:34:08「なんであたしが“赤ちゃん”なのよ! アンタのが昔から泣き虫で甘えん坊のくせにっ!」『ぼくはただ“ちゃん付け”で赤を呼んでみたかっただけだってば! 女の子は“ちゃん”で男の子は“くん”なんだよ』「いつの時代よっ! 次に“赤ちゃん”って呼んだら青のこと“青虫”って呼ぶからねっ」
2011-01-13 02:40:04あ、一歳間違えた……。06ってことは5歳か。まぁ、いっか。青と赤のお話は、あと7話続きます。自己満足キリ番企画なので、確定事項です。その次が、たぶん1000呟目のツイノベです。たぶん、きっと、おそらく、めいびー。ツイノベタグを使った回数が。
2011-01-13 02:52:55《0725'》青と赤を待つようにして、彼女はその鳴り止まぬ軽快なステップを永久に止めた。二人の第三の母、踊り子型自動人形――老朽化により機能停止。彼女は最期に、二人が初めて書いた“自分の名前”を見て、謳い舞った。二人は泣きながら二つ目のお墓を作って、踊った。 #twnovel
2011-01-13 15:17:35《0807》最近は何でも一緒だった青と赤にも得意不得意がハッキリ出てくるようになった。青の方が繊細で器用、料理も始めた。赤は大胆で迷いがなく、やはり同い年だと女の子の方が大人びて見えるようだ。二人は手紙を書いた。一年後の、お互いに宛てて。何故か赤の顔が赤い。 #twnovel
2011-01-14 11:54:18「一年後ってあんまりそうぞうつかないな」『ぼく、卵焼きからオムライスに進化するよ!』「青は、まぁそうね。ガキだもんね」『赤だって同い年じゃん』「女はちがうの」『あっそうだ、新しいダンス二人で考えようよ。毎年新しいの考えるの』「二人同時生まれだし、そういうお祝いもいいかもねー」
2011-01-14 12:09:35《0909》一年というのは早いものだ。青と赤の姿を見ていてそう思う。ついこの間までヨチヨチ歩きだった二人が今、互いの手をとり一つになって誕生日に躍っている。彼らが、この老いに満ちた揺り籠で元気に泣き笑っている奇跡を、君は喜んでくれるだろうか。私の、代わりに。 #twnovel
2011-01-14 16:29:38《1021'》遂に私にも終わりが近付いてきた。君と世界を書き換えた日から、どれくらいの時が過ぎたのか。青と赤なら、私たちのようにはならないだろう。本気でぶつかりながらも支えあっている彼らならば。結局二人は、お互いに送った数多の手紙を12歳まで読まないらしい。 #twnovel
2011-01-14 17:01:54《1111》青と赤の10歳の誕生日。午後11時11分。老朽化していく私には、数ヶ月前から既に彼らの姿は見えない。二人してお墓に祈り新作ダンスを踊り青が作ったご馳走を食べ、御礼に赤が密かに練習した歌を歌う。それは拙いが、借りてきた言葉ではない本物のラブソング。 #twnovel
2011-01-14 17:17:22《1207》もう、私にワ、なに、も、出来ない。せめて、彼らにワ、選択肢、オ。 #twnovel 「ねぇ、どうするか決めた?」『僕が優柔不断なの知ってるくせに』「いいこと教えてあげようか」『ん?』「私もう赤ちゃんだって産めるよ」『赤が赤ちゃん!?』「……」『すみません』「バカ」
2011-01-14 17:28:19《----》 「ねぇ、私の書いた手紙読みたい?」『どうせ僕の悪口なんだろ』「ざんね~ん、実はね――ラブレターだよ」『えぇっ! 赤、体調悪いの? デレ期なの?』「死ぬ? 生きる?」『すみませんごめんなさい』「出航くらい、カッコよく決めてよ」『……Shall We?』「Let's!」
2011-01-14 17:42:13《----》 本艦は[モード:揺り籠]から[モード:開拓者]へと変更いたします。艦内環境維持に振り分けるエネルギーは[最大→最低]へと変更。余剰エネルギーは全て駆動力へと転換されます。本艦は老朽化により残り99年しか稼動しません。[乗艦者:2名]は、自力で生き残ってください。
2011-01-14 17:50:17《----》 [メッセージ:1件]をお預かりしています。再生します。「やぁ、物好きだね。このメッセージは青と赤とがこの船のシステムを変えた時にだけ流れる。[揺り籠]暮らしなら平和で穏やかな99年間と一瞬の終焉。[開拓者]となれば、宇宙を彷徨う無謀な賭けだ。やはり、物好きだったね→
2011-01-14 17:54:29《----》 →私と彼女と、二人だけがこの船で生き残った。広すぎる宇宙に絶望した他の人間は[モード:墓場]を選んだのさ。私と彼女だけが、諦めが悪かった。無理やり艦内システムを捻じ曲げて、[モード:揺り籠]を拵えて。身体も命も失ってなお、遺志だけが残った。一言だけ。よい旅を」以上。
2011-01-14 18:00:20