輪廻の糸【テドイア】

大崎巧実（裏） @mboxtw2

その物語の始まりは、ある日。イアたんが空一杯の流星群を見つける所から始まる。 流れる星を見て、何かに気付いたイアたんは一目散に走っていく。 そして落ちていく星々の中から、たった一つ。真っ直ぐに降りてくる星があった。 それをイアたんは両腕を広げて受け止めようとするのね。

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落ちてきたその一つの星は、一人の人の形を取る。これがテッドさん。 空から落ちてきたテッドさんはまだ赤ん坊とさえ呼べるくらいの幼い姿。 それをイアたんは嬉しそうにぎゅっと抱きしめるのね。そうして、幼いテッドさんとイアたんの二人の生活が始まるのです。

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小さなテッドさんは一人で何も出来ないから、そのお世話をイアたんはそれはもう、甲斐甲斐しくするわけだ。 手もかかるし大変なんだけど、でもイアたんは嬉しそうに幸せそうにしてる。ご近所さんも、若いし独り身なのに子供育てて大変ねって見守ってくれてる。

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で、旦那は？って聞かれるのだ。こんな小さな子供一人妻に押しつけて、旦那は何してるの、って。 ある意味普通の疑問だよね。 で、それにイアたんは笑って答えるの。もう一度会えるのをずっと待っているの、って。 十年、いや五年後かもしれない。でも、絶対会えるから、って。

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いつ会えるかわからないけれど、でもイアはずっと待ってる。それを聞いてたテッドさんは、イアにその人の事が好きなの？って聞く。テッドさんにはイアが『誰』を待ってるのかわからない。産まれて間もないテッドさんには、イアと二人で過ごしたその記憶しかないのです。

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だからテッドさんは自分よりもイアはその人の事が好きなのかな、って不安になるんですね。 まだ幼いテッドさんにはイアたんがいないと生きられない。そしてテッドさんは一番イアたんが好き。まだ心が幼くて母親を慕うのとおんなじ気持ちだったけれど。

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そんな不安そうにしてるテッドさんに、イアたんは貴男が一番好きよって答える。テッドさんが好き、って優しく抱きしめながら。 でも、テッドさんをぎゅうって抱きしめながらイアたんは泣くのね。それの意味をテッドさんはわからない。そして訪ねてもイアたんは答えてくれなかった。

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そうして二人きりでずっと一緒に何年も過ごしていった。テッドさんも少しずつ大きくなって。んである時、ふとテッドさんは気付くんですよ。 人と一緒に人のように生きてきたけれど、自分は『人』ではないって事。 でもまだ沢山の事が思い出せない。色んな事を、テッドさんは忘れたまま。

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少しずつ記憶を取り戻していくテッドさんに、イアたんは急がないでいいよって言うんです。ゆっくりで良いから、って。 テッドさんを育てる日々はとても幸せで一杯だった。彼が大きくなるのを心待ちにしていたけれど、でもこのままの幸せがずっと続いていっても構わないとさえ思っていたから。

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テッドさんが産まれてから何年も経ち。その生活はイアにとってはとても幸せな物だった。このまま幸せになれるって思ってた。それくらい順調で、平穏で。 でも、その幸せはやっぱり崩れるんですね。 イアの前に一人の天使がやってくる。それはゆかりんだったりするのですが。

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ゆかりんはずっとイアを探してた。やっとイアを見つけて、天に帰ろう？って言うんです。 イアたんは天界にいた天使で、ある日を境に忽然と姿を消してしまった。 でもそんなゆかりんの誘いにイアたんは頷かなかった。帰らない、って突っぱねてしまうんですね。

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イアたんはゆかりんに言うんです。約束したから天には帰れない、って。この地上でずっと待ってるって約束したから天には戻らないのって。 ゆかりんはどうしてもイアを連れて帰りたかった。無理してでも連れ帰るつもりだったけど、イアたんは絶対にそこを動かなかったのね。

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どうしてそこまでして留まるのか。もう『障害』はないはずなのに、ってゆかりんは考える。 大人しく引き下がったふりをして様子を伺うのです。そして、ゆかりんはテッドさんを見つけてしまうんですね。 幼い姿だったけれど、でもそれが『テッド』だと彼女にはわかった。

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幼いテッドさんを見て、どうしてイアが天に帰らないのか、地上に留まり続けるのかすべてを理解するのです。 何もかもテッドさんの為。イアは今でもテッドさんに縛られたままなんだ、って。 そして彼女を助けなきゃ！！って思うのです。その呪縛を断ち切ろうと。

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そしてゆかりんはテッドさんに襲いかるんですね。 あんたさえいなければ！！！って。そんな時、テッドさんは思い出すんですよ。 あぁ、そういえば。俺を殺したのはお前だったな、って。 それはずっとずっと昔の記憶。テッドさんが生まれてくる前の記憶。

大崎巧実（裏） @mboxtw2

ずーっとずーっと前。テッドさんも天界にいたのです。でもテッドさんはずっと一人だった。誰もがテッドさんを嫌ってて、恐れてた。 そんなテッドさんに唯一懐いたのがイアたんだったんです。 イアたんは孤独に呵まれるテッドさんを救いたかった。その心を癒してあげたかった。

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寄り添ってくれるイアたんのおかげでテッドさんは孤独じゃなくなった。それまではたった一人で生き続ける事に疲れてしまって、ただ寿命が来るその日を待ち続けてた。 もうこのまま終わっても良い、そんな風に思ってたのね。でも、イアたんのおかげで『生きたい』って思うようになった。

大崎巧実（裏） @mboxtw2

「死んでも良いと思っていたけれど、お前となら生きたい」ってテッドさんは言ってくれるのね。それがイアたんは嬉しくて二人で生きましょうって約束するの。 ずっと貴男の傍にいる、って。でも、テッドさんはその約束をした後にゆかりんの手によって殺されてしまう。

大崎巧実（裏） @mboxtw2

ゆかりんはテッドさんが嫌いだった。あんな人と一緒になってイアが幸せになれる筈がないって思ってた。 そしてテッドさんばかりになってしまったイアに、彼女を狂わせた男って事で物凄く憎んでたんです。 元のイアに戻して！って。テッドさんさえいなければ、って。

大崎巧実（裏） @mboxtw2

テッドさんが命を落とし、悲しみに暮れたイアたんは禁じられた秘術を使う。 神様に託された弓矢を空に放つのね。裁きの矢が放たれ、そしてイアの姿は忽然と消え去ってしまう。 その時。イアはテッドさんと約束したんです。地上で、再びテッドさんはやってくるって。

大崎巧実（裏） @mboxtw2

ゆかりんに貫かれたその時、テッドさんは死んではいなかった。でも力をなくし、少しの間眠りについてただけ。 力を取り戻す為にテッドさんは自分の時間を逆回転させちゃったわけですね。子供の頃にまで戻ってしまう。 そんなテッドさんが再び姿を現すその時までイアは地上で待つと約束したのです。

大崎巧実（裏） @mboxtw2

イアは地上でずっと空を見上げてた。 あの流星群はテッドさんが再び身体を取り戻し、生まれてくるその前兆。 もう一度生まれてきたテッドさん。時が経てば記憶も取り戻し、その力も戻る。 それをずっとイアは待っていたんです。自分の事を忘れてしまったテッドさんを育てながら。

大崎巧実（裏） @mboxtw2

ゆかりんはテッドさんが幼いうちに、今度こそ殺してやる！って思ってた。 大人になったテッドさんは本当に強くて、簡単には殺せない。 前回成功したのだって隙をついたわけだし、しかも結局失敗してる。 だから力を取り戻す前に殺してしまいたかった。

大崎巧実（裏） @mboxtw2

でもテッドさんを殺そうとした所でイアたんに見つかってしまう。 当然彼を守ろうとするイアたんに、どうして？って疑問を投げかけるわけだ。 なんで庇うの？って。そんなゆかりんにイアたんは逆に問いかける。 どうしてみんなわかってくれないのって。テッドさんは酷い事なんかしないのにって。

大崎巧実（裏） @mboxtw2

何故、テッドさんが忌み嫌われるのかイアには理解できなかった。他の神様や天使達に何度訴えかけても誰も信じてくれなかった。 それはテッドさんが幼い頃通った道で、その果てに彼は疲れてしまい、たった一人で命が尽きるのを待つ羽目になってしまったわけなんだけど。