引きこもりの絶望4

http://togetter.com/id/loy15937443 の続き。 心理学の話
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アドリア海 @keizi80

「まあ、やりましょうか。君、辛そうだし」 〔アルミ缶〕の懐疑をよそに、一人勝手に結論に達した様子の中年の男はぽんとひとつ手を叩くと、 なにやらガラクタの山をガチャガチャ掘り起こし始めた。p72

2013-12-16 11:48:23
アドリア海 @keizi80

とにかく、あの男にとってここはカウンセリングルームなのだろう。 ならば、とりあえず真偽はともあれその設定に合わせておくのが最善にあるように思えた。 p73

2013-12-16 11:49:35
アドリア海 @keizi80

下手に突っついてあの男を刺激するのもなんだし、自分自身建物に侵入したことに対する 大義名分も得られる。 表にはカウンセリングルームと表示されていて、確かに自分は精神を病んでいるのだ。p74

2013-12-16 11:52:11
アドリア海 @keizi80

「ああ、あったあった」 男は間の抜けた声をあげながら、 ゴミの山から何かを引っ張り出した。 見ればそれはさび付いたパイプ椅子だった。p75

2013-12-16 12:07:32
アドリア海 @keizi80

男はそれを組み立てると 「さあさあそこに座って」 と言って〔アルミ缶〕の目の前に設置した。 逃げるなら、ここが最後のポイントであるようだった。p76

2013-12-16 12:11:28
アドリア海 @keizi80

(あ、やっぱりいいです) そう断ってここを出て行くだけの胆力があればどれだけよかったか。 〔アルミ缶〕はつくづく自分の臆病ぶりを呪った。 その選択肢の実現可能性は極めて低いようであった。p77

2013-12-16 12:12:37
アドリア海 @keizi80

そもそも、それができる人並み程度の度胸があれば、自分は学校に通えていたし、 何不自由なく表を闊歩できているのだ。 何もかも、この対人恐怖症が悪い。 p78

2013-12-16 12:19:07
アドリア海 @keizi80

もう流れに身を任せるよりほかない。 〔アルミ缶〕は半ば自暴自棄となり、覚悟を決めてその椅子に座った。 同じく対面に自分用の椅子をこさえていた中年の男もその上へ腰を落とす。p79

2013-12-16 12:22:05
アドリア海 @keizi80

「ええとそれではまずあなたのお名前は?」 男は例の笑みを絶やすことなく、両手をひざの上で組みながら、〔アルミ缶〕の顔を覗き込むようにそう聞いてきた。p80

2013-12-16 12:35:10
アドリア海 @keizi80

「ええと・・・」 〔アルミ缶〕は少し迷ったが、苗字だけなら特に問題もないだろうと思い、正直に名乗ることとした。 「〔アルミ缶〕といいます」 「〔アルミ缶〕さん。僕は〔骨董屋〕と言います」 本名かどうかはわからなかった。 p81

2013-12-16 12:36:58
アドリア海 @keizi80

「それで〔アルミ缶〕さん、今日はいったいどのようなお悩みで?」 「ええと・・・」 聞かれた〔アルミ缶〕は思わず言葉に詰まった。 自分の症状について他者に話したことはこれまであまりなかった。 p82

2013-12-16 12:37:44
アドリア海 @keizi80

「ちょっと・・・いま・・・」 「ええ」 「いまちょっと・・・とうこうきょひになってて」 「はい?」 「登校拒否に」 「ああ」 「通信制の学校には通えてるんですけど」 「はい」 「・・・・・・」p83

2013-12-16 12:42:08
アドリア海 @keizi80

〔アルミ缶〕は落ち着かなかった。 得体の知れない男に自分の弱みをさらけ出すのはやはりはずかしかった。p84

2013-12-16 12:43:00
アドリア海 @keizi80

「人がなんか・・・こわいんで・・・」 「ええ」 「外にいると落ち着かなくて・・・・」 「ええ」 「一年前は学校に通えてたんだけど、校舎にいるだけで頭がおかしくなりそうになってきて・・・」 「ええ」 「・・・・・・・」p85

2013-12-16 12:47:41
アドリア海 @keizi80

男が相槌しか打ってくれないため、〔アルミ缶〕は自分で会話を前に進めるほかなかった。 〔アルミ缶〕にとって身内以外の人間とこれだけ話すのは1年ぶりの出来事だった。 p86

2013-12-16 12:48:22
アドリア海 @keizi80

「学校だけじゃなくて、外であればどこでも恐ろしい気がして・・・ 前いた普通高校はやめたんだけど、その当たりから外出すること自体できなくなってきて・・・」p87

2013-12-16 12:50:06
アドリア海 @keizi80

「ええ」 「そんな感じです」 「ええ」 「そういうのは・・・個人的に困るんだけど・・・」 「ええ」 「・・・・・・・」p88

2013-12-16 12:50:33
アドリア海 @keizi80

〔アルミ缶〕は口を閉じた。 語るべきことはまだまだあるように思えたが、 急にいろいろなことを話してしまった反動からか続く言葉が出てこなかった。p89

2013-12-16 12:52:07
アドリア海 @keizi80

「では、あなたは人が怖いのですね?」 察したのか男が初めて相槌以外の反応を返してきた。 「はい」 「ほんとうに人が怖いのですね?」 「はい」 「なるほど」p90

2013-12-16 12:53:02
アドリア海 @keizi80

〔アルミ缶〕は少しイライラした 今しがたわが口から人が怖いといったのに、何をわざわざ聞き返してくるのか 「なぜ人が怖いのですかねえ?」 「・・・・・・わかりません」p91

2013-12-16 12:54:05