KEUMAYA(希有馬）氏 「私人訂制（私人订制）」の感想

ujc @is_say_no_say

【これはアウト】馮小剛監督・葛優主演の映画「私人訂制」のプレミア試写会が開かれ、クラブのママ役で出演していた邱晔がお尻半出しの過激な衣装で登場し、物議をかもしている模様。（阿波羅網）http://t.co/WZPgGaoIBj

井上純一（希有馬屋）『逆資本論』発売中 @KEUMAYA

今中国を代表する監督、馮小剛（フォン・シャオガン）の最新作「私人訂制」を月と見てきた。一言で言うと最低の映画であるが、それは計画された最低さであり、その全体の「仕掛け」に唖然。つうか、フォンシャオガンはハード＆エッジすぎ！　こんな人中国の代表面させていいのか！？【ほめ言葉】

井上純一（希有馬屋）『逆資本論』発売中 @KEUMAYA

「私人訂制」はフォンシャオガン三年ぶりの喜劇であるが、なんとその内容は彼の代表作『夢の請負人』（1997）の焼き直しである。他人の夢を叶えてくれる夢請負人たちの物語で、オムニバス形式で話が進む。残念ながら「私人訂制」の内容は『夢の請負人』の内容に遠く及ばない。

井上純一（希有馬屋）『逆資本論』発売中 @KEUMAYA

滑るギャグ、主人公たちが始終なにかを食ったり飲んだり、スマホ弄ったり、意味不明な行動を取る。浅い文明批判にネットスラングのモロパクリ。ここで『残飯の寄せ集め』と言われているが、まぁ、仕方ないかなと思わなくはない。http://t.co/aDQyItKuH1

井上純一（希有馬屋）『逆資本論』発売中 @KEUMAYA

しかし、我らがフォンシャオガンは、駄作を駄作として終わらせない。というか、今回はわざと駄作を作ってるのだ。今回監督は「この映画がいいとは全然思っていない。この映画はお金のために撮った」と明言しているのだ。どういうこと！？　

井上純一（希有馬屋）『逆資本論』発売中 @KEUMAYA

実はこの映画、出てくるアイテム、観光地、食品全部にスポンサーが付いており、公開前に広告料ですでに黒字になっているのだ。あの主人公たちの意味の無い行動には、全て意味があったのだ！！

井上純一（希有馬屋）『逆資本論』発売中 @KEUMAYA

フォンシャオガン監督は前々作「１９４２」で大飢饉で700万人が餓死する映画を撮った。「中国人はいい気になりすぎている。恥を知れ」と言って。で、興行的に大失敗した。その次の映画もこけた。そして、今回の「私人訂制」である。

井上純一（希有馬屋）『逆資本論』発売中 @KEUMAYA

「お金のために撮った」この映画は、だからこそ今の中国を映し出している。他人の夢を叶えながら、私腹も肥やそうとする主人公たちは監督自身。この映画を見て「金返せ！」と叫ぶ観客は、主人公たちに一時の夢を見させてもらい、だが結局は一夜の夢であると気づき、寂しく去って行く依頼人そのものだ。

井上純一（希有馬屋）『逆資本論』発売中 @KEUMAYA

映画の最後で、いきなり画面の外からカメラマンが主人公に声をかける。「１００万元あったらどうする？」　「皆に配るさ」　「１０００万元あったら」　「もちろん、皆に配る」　「じゃあ、車を持っていたら？」　「車はダメだ。本当に持っているからね」　これはネットで有名な冗談である。

井上純一（希有馬屋）『逆資本論』発売中 @KEUMAYA

そこで観客はこの糞ッたれた、焼き直しの、スポンサーまみれの、パクリに金を払い、ここまでつきあったことが映画の「仕掛け」だったと気がつく。糞ッたれたの焼き直しのスポンサーまみれのパクリ世界に生きてるんだ。ここが、あの映画だ。あの映画は我々と地続きだ。

井上純一（希有馬屋）『逆資本論』発売中 @KEUMAYA

「私人訂制」は夢とお金についての映画だ。そして、この映画の存在自体が、それを語っているのだ。「望むものをお金で手に入れて、一時の夢見て、そしてお前に何が残る？」　この映画を「憤怒映画」と語る評論家は正しい。しかし、その怒りはなんに向けての怒りだ？　

井上純一（希有馬屋）『逆資本論』発売中 @KEUMAYA

もし中国人が映画にたいして怒って終わりなら、フォンシャオガンはまた失敗したことになる。

井上純一（希有馬屋）『逆資本論』発売中 @KEUMAYA

「私人訂制」をほめておいてなんだが、フォンシャオガン監督は有名監督がかかるという「なんの映画撮っていいかわからなくなる」期に入ってると思う。北野武の「みんな〜やってるか!」にあたる作品だと思う。