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katanashi_T
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五十鈴改
@isuzu_kankore
よよよ、と泣き崩れる（ふり）の那珂を無視し、改めて指輪を眺め―――そして、腰に巻いたベルトを見る。バックルの部分はぴんと伸ばした手の意匠になっていて、ちょうど右手を斜めに差し入れるような形だ。 「全く、なんでこんな事に……」 そもそもの発端となった出来事を思い出す。 #スズラジ
2013-12-26 01:45:04
五十鈴改
@isuzu_kankore
『すまん五十鈴！』 執務室に疾風のようにエントリーすると、そのまま提督は見事なドゲザを見せてくれた。 『……え、ちょっとちょっと何。始末書とかは来てないけど』 遠征スケジュールを組んでいた手を止め、とりあえずドゲザを止めさせる。 #スズラジ
2013-12-26 01:45:40
五十鈴改
@isuzu_kankore
遠征スケジュールを組んでいた手を止め、とりあえずドゲザを止めさせる。 ひたすら謝る提督を落ち着かせて話を聞いたところ、こういうことだった。 ―――今年のクリスマスは駆逐艦娘にプレゼントを『サンタ』から渡すことになり、各隊ごとに誰の『サンタ』になるかが割り振られていた。 #スズラジ
2013-12-26 01:47:13
五十鈴改
@isuzu_kankore
ランダムでいくつかの隊に辞令が出ていたわけだが、手違いで予定より多く辞令が回ってしまったらしい。 どう調整しても一人余ってしまうことになり、話しあった結果「じゃあその一人は全員向けに何かサプライズ考えといて」ということになったそうだ。 #スズラジ
2013-12-26 01:47:31
五十鈴改
@isuzu_kankore
『……で、その余りになってしまったと』 『じゃんけんで負けちまってな……本当にすまん』 まあ、提督の運のなさを嘆いても仕方がない。色々と案を考えてもみたのだが、どれも今一つパッとしなかった。 #スズラジ
2013-12-26 01:48:04
五十鈴改
@isuzu_kankore
結局、提督が調達してきた指輪とベルトを使い、サプライズをぶっつけ本番でやってやろうということになった。 ちなみに効力は私も知らない。提督は副業で一緒の仕事場にいる女の子から貰ったと言っていたが、なんでも『クリスマスにだけ使える特別な指輪なんですよぉ』ということらしい。 #スズラジ
2013-12-26 01:48:34
五十鈴改
@isuzu_kankore
無論それだけでは信用ならないので、提督の部屋を掻っ攫ってなぜか大量にあったお菓子やスイーツ類をプレゼント用として巻き上げてきた。これまた副業先で女の子から貰ったらしい。どんな副業をやってるんだか。 #スズラジ
2013-12-26 01:49:42
五十鈴改
@isuzu_kankore
那珂は空の白い袋をぶらぶらさせてサンタコスで暇そうにしていたのでスカウトした。クリスマスなのに仕事が来なかったらしい。多分那珂の提督の計らいじゃないかと思ったが言わないでおいた。 あそこの提督はどうも空気を読めないふしがある。いい人ではあるんだけどね。 #スズラジ
2013-12-26 01:50:13
五十鈴改
@isuzu_kankore
そうこうしているうちに、飛龍さんが他のサンタ組が待っている鳳翔さんの店に入っていった。さあ、そろそろかしら。指輪を構える。 「うぅ、やっぱり不安だよぉ」 「黙らっしゃい、こういうのはノリがいい方が成功するのよ。信じる者はすくわれるってね」 「足元を?」すぱーん。 #スズラジ
2013-12-26 01:50:36
五十鈴改
@isuzu_kankore
「ぶつよ」 「ぶってから言わないでよぉ！あと顔はやめてったら！！」 ぎゃーぎゃー言う那珂をまたも無視し、鎮守府をぐるりと見渡す。 今回のクリスマスイベントの面々を思い浮かべる。 #スズラジ
2013-12-26 01:50:48
五十鈴改
@isuzu_kankore
龍驤さんはこの企画を発案し通した張本人らしい。お疲れ様、と心の中で労っておく。 天龍は私や提督よりは気の利いたプレゼントをしてくれていると思う。龍田もついてるしね。 #スズラジ
2013-12-26 01:51:39
五十鈴改
@isuzu_kankore
北上はさっき響ちゃんと屋上でいい雰囲気だった。起きられてたら意味ないじゃないかと思ったが、嬉しそうだったからまあいいか。 大和さんとこんごうさんは終始楽しそうだった。心からこの企画に楽しんで参加できていたのだろう。私もそうしたかったと思うと、少し悔しい気持ちがある。 #スズラジ
2013-12-26 01:51:58
五十鈴改
@isuzu_kankore
イムヤちゃんとゴーヤちゃんもはしゃいでたけど、ゴーヤちゃんは私達に気付いていたようだ。勘が鋭いのかしらね。周りに何も言っていないことを祈る。 #スズラジ
2013-12-26 01:52:29
五十鈴改
@isuzu_kankore
妙高さん達は見事陽炎型の子達のトラップを突破していた。私はなぜかつい鎮でニンジャ扱いされているけど、あの人たちの方がよっぽどニンジャらしいのではと思う。 深海組はなんかあっさりバレてた。後で罰ゲームかなんか食らうんじゃないかとちょっと心配になった。 #スズラジ
2013-12-26 01:52:46
五十鈴改
@isuzu_kankore
本来ならば、私もその輪の中に入っていたかもしれないけれど。 でも、いいんだ。ある意味これは一番『美味しい』役どころだから。 深呼吸をして、指輪を腰へ持っていく。 疑念はもう消えていた。今あるのは、確信だけ。大丈夫、きっと成功する。 #スズラジ
2013-12-26 01:53:56
五十鈴改
@isuzu_kankore
―Merry Christmas！― やたらテンションの高い声が聞こえたかと思うと、ベルトから、手から、指輪から光が放たれ、空へ一直線へ伸びていく。 どこまでも、どこまでも伸びていくかと思ったのは一瞬のことで、すぐにそれは消えてしまう。 そこから、さらに一瞬。 #スズラジ
2013-12-26 01:54:32
五十鈴改
@isuzu_kankore
空から光のシャワーが降り注いだ。 まるで真昼のように。あまりの眩しさに、一瞬目を細める。けれどその光は優しく、すぐに目が慣れてくれる。 時期外れの流星群。 それはとても幻想的な光景で、今まで見てきたどんな景色よりも綺麗だった。 #スズラジ
2013-12-26 01:54:54
五十鈴改
@isuzu_kankore
「うわぁ……確かにこれはサプライズだ。……あれ？でも」 隣で同じように見とれていた那珂がふと我に返る。 「これ、私たちがやったって言っても信じて貰えないよね。それに駆逐艦の子達は寝てるしプレゼントにはならないんじゃ……」 #スズラジ
2013-12-26 01:56:26
五十鈴改
@isuzu_kankore
確かに。と、私たちがその疑問を浮かべることを想定していたかのように、光の帯が鎮守府の中に入り込んできた。 「わわ、何、何アレ」 光の帯は吸い込まれるように、艦娘たちの部屋へと入っていく。駆逐も、軽巡も、重巡も、雷巡も、空母も、潜水艦も、戦艦も。 #スズラジ
2013-12-26 01:56:49
五十鈴改
@isuzu_kankore
一人として例外なく、部屋に光が窓から入っていく。眩しさに目を覚ましてもおかしくないはずだが、なぜか誰一人起きたような様子はない。 部屋の主がいようがいまいがお構いなしだ。鎮守府に在籍する全ての艦娘の部屋に、光が差し込む。 #スズラジ
2013-12-26 01:57:21
五十鈴改
@isuzu_kankore
一番近い部屋の窓を見てみると、枕元にいかにもなラッピングをされたプレゼントが置いてあり、光はそこを終点としている。恐らく他の部屋もそうなっているのだろう。 次第に、光の奔流が減ってくる。鎮守府の周りもいつの間にかもとの暗さを取り戻している。 #スズラジ
2013-12-26 01:57:41
五十鈴改
@isuzu_kankore
「……さ、それじゃ戻ろうかしらね」 しばらく余韻に浸った後、踵を返して建物内へと戻る。那珂が慌てて付いてきた。 「え、ちょ、ちょっと五十鈴ちゃん！プレゼントは！？私のお仕事は！？」 #スズラジ
2013-12-26 01:58:13