ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/10/19
12センチ残して切ってください、と言ったら美容師さんに不思議そうな顔をされた。髪は1年で約12センチ伸びるんだって。だからこれでいいの。あなたに会えなくなって、もうすぐ1年。触れてくれた髪は、いま全部切り捨てた。目を開けると、鏡の中には新しい私。もう泣かない。 #twnovel
2010-10-19 00:01:59#twnovel 冒険は終わった。魔王は砂と化し、従者はぬいぐるみに戻り、僕は病院のベッドで目を覚ました。世界を救った僕は、老人になっていた。みんなが老いた僕を、うとましく見る。勇者の末路はさびしい。隣のベッドを見る。もうそこに魔王はいない。魔王のいない世界には勇者も必要ない。
2010-10-19 00:02:40葬式無用戒名不用。但し鳥葬にしてくれ。またややこしいことを。だがしょうがない。チベットまで親父の遺体を空輸し山の上まで運ぶ。ところが鳥達は全く寄り付かない。途方に暮れていると影が差した。プテラノドン!? 翼竜は親父の亡骸をひと飲みにすると瞬きもせずに飛び去った。 #twnovel
2010-10-19 00:22:41羊を数えるのが怖いと言う私にその人は穏やかに微笑う。「じゃあ、黒い羊を思えばいい。」その羊はきっと軽々と柵を飛び越えて、白い羊達を新しい世界へと導くよと。その黒羊は彼なのだろう。そして、きっと知らない明日を見せてくれるのだろう。そして私は深い眠りに落ちた。 #twnovel
2010-10-19 00:55:37#twnovel 中学生の頃父と一緒にここを下った。いまやその時の父より年上になったのだと感慨にふけりながら斜面を攀じる。春蝉が時雨のように鳴き注ぐだけの静寂。と古風な山支度の生意気そうな子どもと痩身の男性が降りてくる。あ。立ち止まるが父は軽く頭を下げすれ違って、振り返りもしない
2010-10-19 02:05:23#twnovel 絞首台は二人で乗るには狭すぎて、君と僕が共に死ぬならもう一台、用意しなければならなかった。でも、そんな気力はとっくに尽きていたから、僕は静かに君の首を手折ることにした。心臓にこびりついた人間らしさを拭い、そっと首に手を掛けた。君の髪を撫でる時のように、優しく。
2010-10-19 04:53:11#twnovel 風がふいている。木の葉や、レジ袋や、小鳥や、誰かのシャツが、初秋の高く澄んだ青空を飛んでいく。あたしもできたての羽を広げて、虫やカラスや電線を避けながら空を進む。アスファルトに立つ人影は、まだ謎に包まれている。やわらかな目じりに皺をよせてあなたが笑った。
2010-10-19 09:42:04髪を切って、メイクも変えて。服を買い換えて、バッグも靴も新しくして。転職もして、引っ越しもして。習い事を始めて、交友関係も新しくなって。あの人の好きだった私を消したのに、あの人を好きな私だけが残っている。 #twnovel
2010-10-19 09:52:20#twnovel 海外旅行したように見えて、実は催眠装置で夢を見ただけというのは昔の小説によくあった話ですが、この都市では現実なのです。住民も知った上で娯楽として楽しんでいるのです。何しろ”外”は死の世界なのですから。そんな都市に旅行にやってきた言うあなたはいったい何者なんです?
2010-10-19 10:10:20#twnovel ちゃんと目印付けて来たから、戻れるはずだよ。大丈夫。心配ない、と僕はきみに笑う。「あの頃に戻りたい」ってきみはいつか言うと思ってたんだ。だから僕は少しずつ、きみへの想いをちぎって落としておいたんだ。その想いを辿れば迷わずに帰れるように。帰ろう、あの日の僕たちに。
2010-10-19 10:59:54家の中で迷子になった。玄関に行きたいのだが一向に着かない。一時間程歩いたら父に出会った。「トイレはどこだ」「200m位前にあったよ」「そうか」父と別れて歩き出す。今度は宅配屋さんに会う。紛れ込んだみたい。「二日位で元に戻ります」と言ったら泣きそうな顔をしていた。 #twnovel
2010-10-19 13:24:24#twnovel 携帯には様々な予報が入る。「デート予報です◇今週から彼女はブルーデーに入り気分低下の見込み。この時期のプレゼントは無駄になる可能性があるので避けましょう。予定は必ず彼女の意見を取り入れることをお勧めします。ドタキャン率50%お泊り率20%夕立並みの涙に注意」
2010-10-19 15:31:59寂れた遊園地。剥げかかったメイクに、ほつれた衣装の彼は少しガスの抜けた風船を持って子供達を待っている。なぁ、これでも昔は俺の周りに人間のちっちゃいのが群がってお前達をねだってたんだぜ。そうしょげるなよ、いつかお前の持ち主が現れるさ。そして、ロボットの俺にもさ。 #twnovel
2010-10-19 16:20:32秋になって流しそうめん機の使い道がなくなった。せっかくなので色々なものを水に流してみた。親友に悪口を言われたこと。彼女に二股されたこと。上司に手柄を取られたこと。それらは誰にも取り上げられず、小さな桶の中でぐるぐると流れ続けた。僕はただその様子を眺めていた。 #twnovel
2010-10-19 21:22:35存在することの屈辱をぢっと噛み締めつつ目を開け羊水に遊泳する胎児は、既に此の世の不合理を知り尽くしてゐるのだ。無重力のやうな羊水に浮遊する存在の哀しみに、これまでに如何なる存在が哄笑したのか。ひっひっひっ。そら、あの胎児が嗤ってゐるぜ、存在の惨めさを。 #twnovel
2010-10-19 21:23:05雲と雲の隙間に見えるグレイの夜空。雲の島に住む蛍光黄色のペンギンたちは渡れない。行き止まり戸惑い右往左往。増え続けるペンギンを支えきれず、雲は静かに沈んでしまう。無数の黄色がグレイの空に放り出されて広がって、今夜ようやく新しい王を迎える準備は整った。 #twnovel
2010-10-19 21:27:30#twnovel 赤いきつねにお湯を入れ、食べ頃になったらざるにあけて水で洗い、スープの素を水で溶いて漬け汁にし、ざるうどんのようにして食べるのはとてもまずいので二度とやらない。
2010-10-19 21:57:51テレクラにて 女「ね〜、電話で言葉責めして〜」 男「えっ、どんな感じで?」 女「このウス汚いメス犬め!で始めて♪」 男「了解。じゃ早速‥『このウス薄汚いメス豚が〜!』」女「ヒド〜イ!豚じゃなくて犬よ!もぅサイテー!」 プープー 電話は切られました。 #twnovel
2010-10-19 22:00:34私、嘘つきよ。名前も年齢も体重も、何もかもみ~んな嘘。全部自分で作った偽物。今まで話した事は、嘘八百の大盤振る舞いだったわけ。とんでもない女でしょ? でもね、自分で選んだから、この嘘の私の方が胸を張れる『本当』の私なのよ。ねぇ、なんでこんなこと告白したと思う? #twnovel
2010-10-19 22:13:21#twnovel 蝶が飛ぶ夢をみたといった友達がいきなり蝶になった。それはまるで漫画のワンシーンのように綺麗な蝶の群れで、お誂え向きに夜でしかも月光のオプションも付いている。しかしあんまり感動しなかったので一匹捕まえて帰ったところ、兄が言うにはそれ蛾だぞ。 感動した。
2010-10-19 22:24:52「あたしを捕まえられるものなら捕まえてみなさい」ぼくの耳元で君はそう囁いて通り過ぎていく。なびく空色の髪を見ながら、ぼくは思う。捕まえられるわけない。君を束縛したら、きっと君は生きていけない。ぼくは、自由奔放な君を愛してるんだ。愛しいぼくの、風の精。 #twnovel
2010-10-19 22:34:45#twnovel Kさんがある日、店で買い物を済ませて車まで戻ると、愛車の隣に駐めてある、大きな車の向こう側に、男の頭が突き出しているのが見えた。大きな人はやっぱり大きな車に乗るんだなぁと思っていると、その車が動きだした。あれっと思っていると、男の首から上だけが空中に浮いていた。
2010-10-19 22:45:27#twnovel Hさんの友人が北関東のある駅のロータリーで、組織片を引き摺る手首を見た。固まっていると、手首は友人目がけて指先で走って来た。思わず走り出し、駅ビルに飛び込んだところ、追って来た手首は入り口のガラス戸に貼付いて、ずり落ちた。手首はばいばいと手を振って去ったという。
2010-10-19 23:12:00#twnovel 靴下の中に三菱の鉛筆1ダースが入っていた朝、僕はサンタクロースを信じることをやめた。20年後、息子の靴下に入れておいたはずのポケモンが、自分の枕元に二つに折られて置いてあり、息子の靴下には鉛筆1ダースが入っていた朝から、私はサンタクロースを信じるようになった。
2010-10-19 23:30:36トンネルを抜けると雪国らしい。毛布の中からうっすら目を出すと、窓の向こうで見慣れた灯りが無数に通り過ぎていくのが見えた。時計によると眠っていたのは半日。先頭車両のさらに遠くには不動の白景色が覗く。いつになれば雪国に行けるのだろう。列車は同じ場所を走り続けている。 #twnovel
2010-10-19 23:47:20