ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/10/29

ゆず @nanakoro8

#twnovel ビルの屋上から飛び降りたはずの体はなぜか重力に逆らい天に昇っていった、地面から乖離した足が所在無げにぶらつく「どうなってんのこれ」すると間もなく鐘の音が聞こえてきて「おめでとうございます！　あなたは地球発天国行きツアーに当選されました！　なんとタダでご招待です」

たぬきのたからばこ（空箱） @hi_kmd

会社の駐輪場に自転車が二台並んでとめてあった。向かい合う様にそれぞれの前輪がかしげていて、まるで、自転車がキスをしているみたいだ。僕はそのうちの一台の自転車に乗って帰宅した。二台を引き裂く悪者になったような気分がした。 #twnovel

鈴々@物語る鳥 @re_rhythm

ふと目が醒めた。ほの青い闇に満ちる自室で一人きり。畳の上に敷いた布団の中で長い溜息をつく。どうやら夢を見ていたらしい。随分前に別れを告げた男と縁側に並んで日向ぼっこをしていた。他愛ない日常、それがかけがえのない幸せだったのだ。今になって淋しさと共に気がついた。 #twnovel

layback @laybacks

電気消してねって言ったのに。消したらなんも見えないじゃん。眼鏡外すし点けてていいよね。とか男の子ってほんとばかだなと思う。彼の湿った唇や指先に集中してると急にひやり。片目をあける。眼鏡かけてる。こやつ。いつの間に。あたしは両の手を伸ばし彼のレンズに指紋をつける。 #twnovel

あまたす @amatasu

父は、趣味で小説を書いていた。だが、作品を発表することはなかった。私たち家族にすら、見せなかった。「誰かに見せるのが怖いんだ。私の物語が、この手を離れていく、そのことが」その言葉を遺し、父は逝った。彼が溺愛し、それゆえ信じられなかった、たくさんの物語たちと共に。 #twnovel

曼哩 @manly00

栞を配る仕事をみつけた。頭を抱えてる人に、今日はここまでと栞を渡す簡単な仕事。受け取った人は半分に折れて、今日１日をパタンと閉じる。良い夢を。 #twnovel

浅葉積木 @tsumiki_a

なんとなく、首輪を外してみた。首輪は外されたことも知らぬげに首の高さに浮いたまま、 道を進んでいった。その場に腰を下ろした。周りを見渡すと同じように立ちどまっている人がけっこういることに気づいた。さて、尻に根が生える前に持ち主のいない首輪が通りかかるだろうか。 #twnovel

よしのちほ @chiho_yoshino

ものごとを難しく言う方が実は簡単。わかりやすい言葉で言う方が、よっぽど難しいんだ。したり顔であなたは言う。そうね。あなたいまだに「好き」って言ってくれないもんね。 #twnovel

とおる6th @windcreator

#twnovel 私は存在しない本を愛している。母はたくさんの本を寝る前に読み聞かせてくれた。私は物語を辿るように眠り、夢を見た。稀に、父が早く帰って来ると、母の物語に父が参加して、まるで劇場のようだった。家族三人だけが知る、名もなき無数の『本』が、私を司書にまでしてしまった。

rime @prhymethyme

私が会いたかったのは、ネットだけでやり取りしていた頃の、あの優しくて面白くていろいろ気遣ってくれたあなたで、実際に会ってみたら冷たくて気難しくて意地悪で自分勝手で愚痴ばっかり言ってる、リアルのあなたではありませんでした…もしかしたら、あなたもそう思ってるかもね #twnovel

@K_Ichida

#twnovel 恋は盲目というけど、そんなことはない。恋をしてから彼女の姿がよく見える。毎日彼女を見つめる。「おじいちゃん！ひとりで外に出ちゃダメって言ったでしょ」突然孫に腕をつかまれた。「またあたしの同級生のあとをつけてたの？ほんと自分のことが見えてないんだから」

myta @yuta1017

鳩が歩く。首を前後に振って。いったいどんな意味があるんだろう。もしかしたら、鳩の首振りが、少しずつ、地球を回して、少しずつ、少しずつ、世界を変えているのかもしれない。そんなことを考えていると、待っていた電車がホームに滑り込み、鳩はどこか遠くへ飛んでいった。 #twnovel

Tohru Ishizuka @operahaus

「星祭り」夜が明けると街のあちらこちらに水溜りができ、こどもたちが跳ねて水を弾いていた。あまりに悪戯がすぎるので街の人がつかまえようとするが、つかまえたかと思うと別の水溜りで跳ねている。新月の出る刻限、こどもたちは天を仰ぐとすうっと消え、夜空では星が踊っていた。 #twnovel

@asidity_dabyy

胎児は怯えている。母親の胎内の中、まだこの世の理を何一つ知らない胎児には希望も絶望も夢も無く、未発達の目で必死に「何か」を探す。だが足元の胎盤以外には何も無くせめて縋る腕があったら、と胎児は思う。胎から出てきた赤ん坊が泣くのはやっと頼る人間を見つけたからだ。 #twnovel

Tohru Ishizuka @operahaus

「消灯」夜が明けると、街はすっかり消えていた。市役所も図書館も七丁目のバーも路面電車も交差点も、すべて消えてしまった。人の話し声も車の警笛も正午の鐘も霧笛も、すべて消えてしまった。やがて昇った満月がそれをみて「しまった」とシリウスのスイッチを押すと街が点灯した。 #twnovel

翼 @keith_mild

#twnovel 季節外れの雪が降りしきる。地面を満遍なく隠す白いそれは綿のようでいて、けれど柔らかさだけは天に置き忘れたようだった。霞む視界の中、何もかもが雪に包まれている。でも、凍えそうなのは僕だけみたいだ。ふと足元を見やれば、踏みしめた雪が土と混じり合って茶に染まっていた。

水銀灯 [音信不通綺譚會] @slowlamp

#twnovel 私は男の人が私を気に入っているのかが解る体質だった。でも、そういう人は私の好みではなかった。好みの人の気を引こうとファッションに気を使うとそれしか気にしない人ばかり。それで地味にしてみると今度は誰も気にしてくれない。この体質は恋には不向きだとようやく理解した。

minamicloud @minamicloud

地球に来たパパペロン星人は実に友好的な侵略行為を始めた。最初に彼らが行なった事は破壊光線の照射ではなく、テレビ会社へのコンタクトだった。用意された番組で彼らは自分達の兵器の威力について説明し、実際に使用する危険さを語った。そして一滴の血も流れずに侵略は完了した。 #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

その少年は目覚めると、眠る前の記憶を確かめる。まるで本を読み直すときのように。そうして、おおよその輪郭を掴む。それは現実認識、彼にとっての儀式だ。次に手帳を繰る。そうして昨日と明日をつなげようとする。鏡を見つめる。自分の顔を確かめて、笑顔を作る。 #twnovel

Mark @Marknovel

「コロッケ三つとそれからメンチカツが二つ」売り子との会話はマイクに拾われ店の端末機に吸い込まれた。時間:17時42分、性別:男性、合計金額: 380円。数日後、男はまた現れた。「コロッケ三つとそれからメンチカツが」売り子は言った。「二つですね」男は照れて頷いた。 #twnovel

ひのもと　和義 @khinoxyz

６０年ぶりに同窓会の案内が届いた。案内を見てみる。何か違和感を感じる。そう言えば出欠の返信用のはがきがある往復はがきではなく、普通のはがきだ。幹事の名前を見て驚く。彼は昨年亡くなった筈だ！・・・同窓会の日が来た。病院のベッドで思う。彼に会える筈だ！ #twnovel

夢名 七志 @mumei7c

娘が焼き上げた壺は美しく、町で高く売れました。「焼いている姿を見ないで下さい」との約束を破った夜。娘は最後の壺を差し出し「助けられた亀です」と、元の姿に。残した言葉は「あれは、壺ではなく瓶です」のたのたと山に帰る亀。甲羅は何カ所も剥がれ、痛々しく揺れていました。 #twnovel

ロバ @donkeys__ears

「すみません、昔願いを叶えて翼をもらって、争いのない自由な空に飛んで行った者ですが、ほんと退屈で死にそうなんでやっぱりこの翼はお返ししたいんです」彼女の願いは再び叶い、空中で翼を失って墜落するところを格好いい男の子に助けられ、そのゲームを君がこれからプレイする。 #twnovel

すわぞ @suwazo

#twnovel 残業を終えて会社を出る。道端に大きなクマの着ぐるみがぽつんと立っている。帰りが遅い日はいつも会う。クマは一言も喋らず、僕に手を振り、自分の首を持ち上げて内部を見せる。中は空っぽだ。クマは僕を誘っている。中に入らないかと。懸命に目をそらし、僕は早足で歩み去る。

八本正幸 @nekogamihakase

人間豹は飢えていた。今宵の獲物は出勤途中の風俗嬢だった。「お願い、大事なお客さんにお別れを言いたいの、少し待ってちょうだい」言って彼女は店に入ると、急いで化粧を落とした。まるで別人の顔になった女は、気づかない人間豹の前を通って逃げおおせた。 #twnovel