メモ・11月中旬

中旬のネタメモ。セルフリプライチェーンで繋ぐようになってめっきりtogetterが億劫に……
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酔宵堂 @Swishwood

父親似の上の娘は髪を左右に括って、赤いリボンがよく似合う。下の娘はわたしに似て、細い面の贔屓目抜きでもなかなかの美人になる……と思う。穏やかな義父、女傑と謳われる義母に囲まれて——それはやはり、夢のように満ち足りた日々、と云うよりほかない。彼女の、願った通りだった。

2013-11-18 05:51:48
酔宵堂 @Swishwood

古くからの先輩の店でケーキを買って、かつての同級生とお茶をいただきながら。次の選挙に出ると云う旧知の応援に付き合って、何かと忙しなくも充実した日々。それが急に、誰かの夢に過ぎないのではないかと云う考えに襲われてしまった。「あら、  さん、浮かない表情ね」「あ、先ぱ……いえ、先生」

2013-11-18 06:10:33
酔宵堂 @Swishwood

「"視"させてもらっても構わないかしら?」そうだった、昔からこの人の占いは"当たる"のだ。「お願いしても……よろしいですか」もう一人の自分の、不思議な夢をよく見ること。どちらが本当の自分なのか、わからなくなりかけること。「年甲斐もない、恥ずかしい話なのですけど」だが、彼女は——

2013-11-18 14:13:10
酔宵堂 @Swishwood

「どちらも貴女自身だわ。そうね——貴女が夢だと思った方が夢、これはそう云うものなの。貴女は彼女を救おうとして"あり得た世界"の夢を見せているし、彼女は貴女が彼女の側に来ないように"ただの悪い夢"だと言い聞かせている」真剣な目で、彼女はそう云い放った。 何処かで凛、と——音がする。

2013-11-18 14:26:44
酔宵堂 @Swishwood

「どちらの世界が"ほんもの"なのか。いつか、貴女には選ぶ日がくるわ。だからそれまでは貴女らしく、誰の代わりでもないのだと——胸を張っていなさい」最後に何か口籠ったように見えたのは気のせいだろうか。「さあ、ここから忙しくなるわ。よろしくね」と、託宣はそこで幕を閉じた。

2013-11-18 19:21:31
酔宵堂 @Swishwood

いつかの仇敵が、云ってくれるものだわ。彼女に見透かされたのはいささか癪ではあるけれど、そろそろ潮時なのかもしれない。「わたしが貴女でなくなってしまえればよかったのにね」せめて最後まで幸せな夢を、せめてあともう少し。

2013-11-18 22:51:46
酔宵堂 @Swishwood

あの夢を見なくなって、もう随分経つ。彼女はいま、どうしているだろうかなんて、自分の夢なのにおかしなことを考えてみたり。何十年かぶりにひとりになったこの今に、それは音もなく滑り込んできた。 「——、あっ」 そうか、そう云うことだったのか。左手の甲に、小さな痣が浮かぶ。 「、黒蜥蜴」

2013-11-19 03:55:47
酔宵堂 @Swishwood

「莫迦な悪魔は戦いに敗れそうになってね、逃げ出したの。どこへって? そりゃあ、ここではないどこか、よ。けれどそうそう逃げられるものじゃないわ、神様は悪魔に目印をつけた、それが」「ちょうど、そのリボンみたいな?」「ええ、そうね。だから悪魔は自分だけの世界に逃げ込むしかなかったの」

2013-11-19 10:41:03
酔宵堂 @Swishwood

「皮肉なものよね。悪魔が神様の力を横取りしようとすればするほど、神様の力も大きくなっていったの。悪魔は莫迦だけど、神様のことが誰より好きだったから、つい教えなくていいことを教えちゃうの」「神様のこと?」「そうね。悪魔のいちばんの自慢はね? 誰より神様を知っている、そのことなのよ」

2013-11-19 11:07:08
酔宵堂 @Swishwood

「どうして悪魔は神様の力を横取りしようとするの?」「神様のところに行くためよ。悪魔は悪魔だから、神様の"おみちびき"にはあずかれないの。だから、自分で行くしかないのよ。けれど、そのためにはとても多くの力が必要なの」「自分で来たよ、っていいたいのかな」「——ええ。きっと、そうね」

2013-11-19 11:17:48
酔宵堂 @Swishwood

「ねえ、おねえちゃん、どうして——泣いてるの?」「え? あ、ううん——なんでもない、わ。ほんとうに——本当に、莫迦な悪魔、よね——」「神様は、ぜんぶ知ってるのかな……悪魔のこと」「え、どうして」「でも、悪魔もきっと神様をぜんぶ知ってるわけじゃないんだよね」「そ、それは——それは」

2013-11-19 11:30:55
酔宵堂 @Swishwood

おかしい。いつの間にか暁美が幼女にやり込められてるぞ。 ——あまりおかしくないかもしれない。

2013-11-19 11:42:06
酔宵堂 @Swishwood

老婆の失踪に気づいたものは、いない。誰の記憶にも、それは定かではないのだ。懐いていたと云う孫娘ですら、全く連絡が取れていないことに気づくのはもう随分経ってからの話だった。訪ねてみればもぬけの殻で、誰かが住んでいたことすら訝しむような、そんな伽藍堂の部屋の真ん中——文机が、ひとつ。

2013-11-20 01:04:04
酔宵堂 @Swishwood

それはわたしの夢。 わたしの中で終わる夢。 わたしがわたしとして、わたしらしく生きたと云う夢。 初めて、あの子ではなくわたし自身に救われた夢。 きっとあの子が、望んでいただろう夢。 誰が覚えていなくてもいい、 確かにわたしはそこにいた。

2013-11-20 13:07:23
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