- koiflachuchu
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重金属酸性雨が降りしきる日本の首都ネオサイタマ。ウシミツ・アワーにもかかわらず対汚染ブルゾンに身を包む人々が街を往来する。仕事帰りのサラリマン、物乞いで生計を立てる浮浪者、ヨタモノにパンクスなどがバッテラめいた人混みを形成する。 1
2014-01-05 17:08:48そんな人混みから少し離れた裏路地の一角では、雨も気にせずゆったりと歩く少女がいた。黒いバスガイドめいた鍔広のカノチェを被り、胸にある球状の物体からは複数のコードが延びている。目は緑色に発光しており、サイバーゴスにしてはどこか異質な出で立ちだ。 2
2014-01-05 17:10:48「ダッセ!サイバーゴスダッセ!」「ウィーピピー!キミ、カワイイだね!」路地の行き止まりに差し掛かった少女の後ろから姿を現したのは無軌道大学生の一団。数は4人。男達の手にはショックジュッテやスタンガン。「傘、ささないの?危ないよ?もう死んじゃうかもね?」 3
2014-01-05 17:13:01ナムサン!彼らは重金属酸性雨に何の防備もせずに歩く少女を見て、尾行していたのだ。「どうせ死んじゃうならさ!俺たちと前後しようぜ!」「ダッセ!ロリコンダッセ!」無軌道大学生達は甲高く笑う。だが、彼らの言い分は本当だ。常人であれば重金属酸性雨に打たれ続ければ24時間と持たず死ぬ。 4
2014-01-05 17:15:15彼らはそんな対汚染対策すらも出来なくなった死にかけの女性をファック&サヨナラすることを趣味としていた。老若問わずだ。おお、ブッダよ!あなたはまだ寝ているのですか!?「……ふーん、そんなに汚いんだ。この雨」「アッヘ!こいつ知らねえのか!」「ダイジョブダッテ!もう死んじゃうし!」 5
2014-01-05 17:17:24「初めてだよ。そこまで口に出して己の欲望を吐露する人。あなたたちみたいな人間だらけだったら私も心を閉ざす必要は無かった」「ダッセ!サイバーゴスダッセ!そういう設定かよ!」「もういい!とっとと前後してオサラバだ!アーポウ!」少女にショックジュッテが迫る!アブナイ! 6
2014-01-05 17:20:18「ムイシキ!」「……へ?」オコテ!少女の胸のあたりから延びているコードがムチのようにしなり、無軌道大学生達の右手首を打つ!大学生達のショックジュッテが手首ごと重金属の水溜まりに落ちる!「ア……アイエエエ!?」ようやく痛みを知覚したショックジュッテ大学生は悶絶! 7
2014-01-05 17:22:36「ザ……ザッケンナコラー!」スタンガン大学生が少女に迫る!「ムイシキ!」オコテ!少女の胸のあたりから延びているコードがムチのようにしなり、無軌道大学生達の右手首を打つ!大学生達のスタンガンが右手首ごと重金属の水溜まりに落ちる!「ア……アイエエエ!?」スタンガン大学生は悶絶! 8
2014-01-05 17:25:33「もっとも、そんな感情は怨霊から腐るほど読み飽きてるからね!おうちに飾る価値すらないわ!」「アイエエエ……スンマセン……何でもしますから許して……」無軌道大学生はしめやかに失禁!インガオホー!「そう、じゃあそれちょうだい」少女の目が緑色に怪しく光る。狙いは彼らのブルゾンだ。 9
2014-01-05 17:27:42「ヤメテ……死んじゃう……」「死ねば?だって何でもするんでしょ?」「タスケテ……」「うるさいなあ」「ア……アバッ……」少女のコードが大学生達の首を絞める!おお、このコードはいかなる原理で動いているのだろうか!?少なくとも、サイバネ由来では無いことは確かだが…… 10
2014-01-05 17:30:14「うん、静かになったね。じゃあね」「エッ……」少女の姿が、消えた。彼らの纏っていた対汚染ブルゾンも含めて。「ニンジャ……」「ニンポだ……」「ニンジャ……ニンジャナンデ……」「アイエエエ……」無軌道大学生達の呻き声は雨音に掻き消えていく。 11
2014-01-05 17:33:31「アーッ!フクスケなしっ!花瓶なしっ!」退廃トレーラーハウスの一室。女が叫びながら飛び起きる。 女は黒いショートボブ、痩せて小柄で、長い睫毛、何より特徴的なのは眉毛のかわりに入れられたイバラめかせたタトゥーだ。「フーッ……やっぱ落ち着かねえなあこの家……」 13
2014-01-05 17:40:11女は鏡の前に行き、黒いアイラインを描いた。「オハヨ!」これが彼女の日課だ。「さーて、歯ァ磨いたらあいつの様子でも見に……」「オハヨ!」女はあたりを見回す。明らかに他者の声が、そう遠くない所……いや、部屋の中から聞こえたのだ。「オ……オイオイ、オバケか!?」 14
2014-01-05 17:42:55「オバケじゃないよー。だいたい私に向かってオハヨ!って言ったのあなたじゃない」「アイエッ!?」女の目にはその声の主が分からない。女の名はエーリアス。過去に似たような経験をしたことがあるが、それはあくまでニューロン内の出来事であった。だが、これは紛れもない現実だ。 15
2014-01-05 17:45:14「え?お姉さん私が見えないの?なーんだ、期待はずれー」「本当にやめろよ……ブレイズ=サンいい加減にしろよ……オバケの出ない物件選べよ……」「だーかーらー、オバケじゃないって」声の主は依然として分からない。エーリアスは震えながらフートンに引きこもってしまった。 16
2014-01-05 17:47:35「しょうがないなー。見せてあげるよ」「あん?」一瞬でエーリアスの前に少女が現れる。黒いバスガイドめいた帽子、胸の球体から伸びるコードが特徴だ。「ドーモ、初めまして。エーリアス・ディクタスです」エーリアスは姿が見えるなり、反射的にアイサツを繰り出す。 17
2014-01-05 17:50:08アイサツは日本人の奥ゆかしい伝統であり、礼儀である。これを欠かすことはスゴイ・シツレイとされ、良くてムラハチ、悪くてケジメである。「ふーん、自分からアンノウンを名乗るなんてねー。どうも、エーリアスさん。古明地こいしです」「コメイジ・コイシ=サンか」「こいしでいいよ」 18
2014-01-05 17:52:15「そりゃダメだ。奥ゆかしくない」こいしの行いは実際礼儀に反する行為、ヨビステだ。家族などの親しい間柄なら許されるが、相手に「=サン」をつけないこともまた、スゴイ・シツレイにあたる。「堅苦しいなあもう」「礼儀は大事だぜ。大体、今のは何だ?新手のステルス・ジツか?」 19
2014-01-05 17:55:18「すてるす?多分違うよ。無意識を操って見えなくしてるだけだから」「……そうか、ちょっとシツレイ」エーリアスはきょとんとするこいしの両肩に手を置く。(同じ系統のジツか……だったら……)「イヤーッ!」エーリアスの精神が01と化し、こいしの中に入り込む!危険なユメミル・ジツだ! 20
2014-01-05 17:57:38この恐るべきジツによりこいしの内面を覗き、ジツの正体を探る!……はずであった。「アレ?」「いきなりなにするのお姉さん?新手のセクハラ?」「いや、なんていうか……その、説明に困るんだが……」(ナンデ?空っぽナンデ?)こいしのニューロンには何もなかった。全てだ。 21
2014-01-05 18:00:02「あー……その……ほら、俺、鍼灸師だからさ、マッサージでもしようかと……」ブザマ!あからさまに下手な嘘だ!「ふーん、じゃあしてよ、マッサージ」「……あ、ああ。するよ!今すぐするよ!」「やったー」こいしはうつ伏せになり、エーリアスの施術を待つ。(オイ、どうしてこうなった……) 22
2014-01-05 18:02:21「そもそも、どうしてここに入ったんだ?泥棒じゃないっぽいし……」「おさんぽしてただけー」「……アッハイ」こいしに話を合わせるだけ無駄だと悟ったエーリアスは、黙ってこいしのツボを押していく。「アーイイ……そのへんそのへん……」(うーん……なんか前にもこんなことあった気が……) 23
2014-01-05 18:07:26