生田美和さん@shodamiwa『孤独な時計』

ゲームデザイナー&シナリオライターとして活躍されている生田美和さんの2014年1月11日の連続ツイート。
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生田美和 @shodamiwa

今夜は、記憶や時間についておしゃべりしたいと思います。『孤独な時計』――。

2014-01-11 00:44:36
生田美和 @shodamiwa

1)友だちの赤ちゃんを抱っこさせてもらうと、「うちの子も、こんなぷくぷくほっぺだったなあ!赤ちゃんって、可愛いなあ!」と感激する。我が子が赤ちゃんだった頃の記憶が、鮮明に蘇るのだ。…ということは、我が子の記憶は少しずつ薄れてるのだろう。ほんの数年前のことだというのに。

2014-01-11 00:45:47
生田美和 @shodamiwa

2)イメージはこんな感じ。頭の中に『我が子ファイル』がある。そこに新しい記憶が日々、書き込まれる。最新、六ヶ月くらいのデータはすぐ取り出せる。際立った体験もタグがある。でもそれ以外は時間がかかり、数年前の感触になると「友だちの赤ちゃんを抱っこ」などのきっかけがないと難しい。

2014-01-11 00:48:29
生田美和 @shodamiwa

3)自分の子供のことすら、新しい記憶に上書きされていく…。それはショックだった。でも、「これが思いの深さになるんだな」とも思う。元の色を思い出せないほど日焼けした時計も、我が家の宝物だ。付き合いの長い友人や、愛用のカメラなど、情報の更新を重ねた対象ほど、愛情は深まるのだろう。

2014-01-11 00:51:30
生田美和 @shodamiwa

4)情報更新で深まるのは愛ばかりではない。Twitterで誰かのツイートを切り出して、一方的に怒りゲージを貯めこむ人がいる。相手の発言に過敏になり、ツイートがあるたびに苛立つ。不快な相手の発言ならチェックしなければいいのに監視をやめない。情報更新で憎しみを深めてる。

2014-01-11 00:55:49
生田美和 @shodamiwa

5)ネットが生活に溶け込み情報を手軽に発信、蓄積、拡散、閲覧できるようになり、愛情も憎しみも急速にその深度を深めるようになった。閲覧する側が一方的に深めていくその感情を、情報を発した側は気づくこともない。何百回、そのツイートを読んだかなんて、その人以外知る由もない。

2014-01-11 00:58:16
生田美和 @shodamiwa

6)気に入らないツイートを繰り返し読み、そのつど、怒りや悲しみに駆られる…。それは、誰かが放った言葉のナイフを、自ら拾い上げては、自分に突き立てているようなものだ。自分で傷つくための情報を集めているのだから、傷口は広がるばかりになる。

2014-01-11 01:02:09
生田美和 @shodamiwa

7)自分の感情ありきで、その感情を強めるソースを探していく。ソースを得るたびに、最初に感じた感情を強めていく。そんな情報更新の仕方は、新しいカメラを買う時や、気になるアニメが始まる時や、旅行先について調べる時など、思う対象が人間ではない時だけでいい。

2014-01-11 01:12:52
生田美和 @shodamiwa

8)情報更新を利用して、自分の心を「誰かへの感情」に追い込んでいないか?今、感じている感情は、自らセレクトした情報で作り上げてしまった、一方的なものではないのか?

2014-01-11 01:18:55
生田美和 @shodamiwa

9)心には、現実を流れる時間とは別の、心だけの時間が流れている。誰かを思う時、心の時計の針は進む。ネットを利用すると、良くも悪くも、心の時計は早回しになっていく。

2014-01-11 01:20:31
生田美和 @shodamiwa

10)心の時間だけを生きないことだ。誰かの人生に触れることで――例えば友だちの赤ちゃんと遊ぶことで、現実の時間は蘇る。誰もが、ネット仕掛けの孤独な時計を持っている今だからこそ、進みがちな自分の気持ちからも、自分を守らなければいけないのだ。

2014-01-11 01:25:34
生田美和 @shodamiwa

以上、『孤独な時計』でした。

2014-01-11 01:26:24
生田美和 @shodamiwa

人には受け取った情報を材料に、その日の気持ちを作っていくところがある。楽しいニュースは元気をくれるし、辛い事件は悲しみや怒りをもたらす。でも、情報にも食べ物と同じで、好き嫌いがある。閉塞感や苛立ちを日々感じるなら、情報の栄養が片寄ってるかもしれない。食事も情報もバランスよく。

2014-01-11 01:52:35