茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1142回【仮面ライダーの主役は、ショッカーたちだと言ってもいいのかもしれない】連続ツイート

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第１１４２回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、先日、ネット上でチラ見したことに触発されて。

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かし（１）「仮面ライダー」の放送が始まったときのことは鮮明に覚えている。瞬く間に衝撃が走り、「仮面ライダースナック」のおまけのカードが少年たちの心を虜にした。ぼくが小学校２年生の時。カード集めは過熱し（ぼくはその輪に入っていなかったが）、スナックを買ってカードだけ抜いて

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かし（２）あとは捨てるという事案が大量発生。ぼくは、仲間たちと公園で草野球をやりながら、カードだけ抜き取られた仮面ライダースナックが落ちていると、やや後ろめたさを感じながらも、「おい、これ、まだ食べられるよな」「しけってないから大丈夫だよな」と言い合いながら食べた思い出がある。

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かし（３）その仮面ライダーだが、初代のライダーは藤岡弘さん。「変身、トオー！」というそのシーンがかっこよかった。そして、仮面ライダーと同じくらいのインパクトをぼくたちに与えたのが、ショッカーたち。真っ黒なコスチュームに身を包み、「イーッ」「イーッ」と言いながらライダーを襲う。

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かし（４）ショッカーたちは、いわばラスボスの前の「雑魚扱い」みたいな感じが子どもたちの心にもわかっていて、ただ、その、一山いくらで仮面ライダーに迫っていく時の潔さというか、「イーッ」「イーッ」と言いながらひたむきに闘うその感じが、実は子どもたちの心を打っていたと思う。

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かし（５）だから、子どもたちの間でも、仮面ライダーの「変身、とおーっ！」のマネと同じくらい、ショッカーたちの「イーッ！」「イーッ！」というマネが流行ったのであって、ぼくが記憶する限り、あれだけマネされた悪役というのは、いないのではないかと思うのである。

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かし（６）それで、最近ネット上のどこか（忘れた）で、一瞬目にしたのが、仮面ライダー役の藤岡弘さんが、「仮面ライダーの主役はショッカーたちだった」というようなことをインタビューで言われていて、ショッカーたちは岩山などを飛び跳ねて傷だらけ、それでも、撮影が終わるとすぐに道場で

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かし（７）身体を鍛えていたのだという。ショッカーたちが、そのような鍛錬を怠らなかったというのは本当にいい話だと思って、それで、子供心に、「イーッ！」「イーッ！」と迫っていくショッカーたちの姿が、強烈に焼き付けられていたのだなと、納得したのである。

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かし（８）考えてみれば、仮面ライダーの主題歌は、「迫る〜ショッカー！　地獄の軍団」と始まるわけで、冒頭の主要登場人物がショッカー。そう考えると、藤岡さんの言われるように、仮面ライダーの主役は、ショッカーたちだと言ってもいいのかもしれない。悪役いないと、成立しない。

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かし（９）エコロジー思想は、エネルギー問題だけじゃなくてヒーローものにこそ適用されるべきだろう。「越後屋、おぬしも悪じゃのう」「いえいえ、お代官さまこそ」の悪役コンビがいないと、水戸黄門も成立しない。悪役と、ヒーローは、実は持ちつ持たれつだという衝撃の結論が、そこに待っている。

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以上、連続ツイート第１１４２回「仮面ライダーは、ショッカーたちを必要としている」でした。