忍殺風 魔法少女まどか☆マギカSS 「スラム・スラムド・バイ・ザ・ウォーマシーン」 #4

文豪の魔法少女・アキネイター作。ネオグンマを舞台としたサイバーパンク・プエラマギ活劇「ウィッチハンター」の私家翻訳物 実際はニンジャスレイヤーを元にした「魔法少女まどか☆マギカ」の二次創作小説。アトモスフィアだけを参照しているので忍殺知識ゼロでも大丈夫ですが、こっそりと叛逆の物語のネタバレがあります。 (感想・罵倒は@gammaray_hmまで。favとかRTもとても喜びます) 続きを読む
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GammaRay @sizuoka074

サイバーパンク気味 まどマギSS 「スラム・スラムド・バイ・ザ・ウォーマシーン」 #4  http://t.co/jEEaaGU7MS 

2014-01-15 22:56:41
GammaRay @sizuoka074

(前回までのあらすじ)風見野のスラムに存在する身よりなき者達の寄る辺、オートレース場に住まう魔法少女栗千葉もてぎは放浪者ほむらと心を交わし合う。しかし今夜取り壊しされる定めにあるレース場を守るため、もてぎは優木沙々と取引し、ほむらと戦う決意を決めたのだった…… #WCHNTR

2014-01-15 23:00:48
GammaRay @sizuoka074

悲しげな弦の調べがまどろむほむらを目覚めさせた。目を開くと、そこは深い青色に閉ざされた暗い空間。分厚い硝子窓が等間隔で並んだそこは水族館のようだった。美しいアリアが流れるその場所が現実のものではないことを、ほむらは速やかに感じて取った。  #WCHNTR 

2014-01-15 23:07:28
GammaRay @sizuoka074

「こうして貴女に呼ばれるのは久しぶりね」薄暗闇の中ほむらが振り返ると、そこには白いサマードレスを着た少女がいた。麦わら帽子で目元は見えない。ほむらは長い黒髪を手で撫でつけながら、ゆっくりと彼女に近付いた。 #WCHNTR

2014-01-15 23:11:56
GammaRay @sizuoka074

「どうして私を呼んだの、さやか」少女の目の前まで近付いて名前を呼ぶと少女は麦わら帽子を取った。「いつまでこんなことを続ける気なの?」青い髪と瞳を持った少女、さやかはほむらを見返した。その瞳には悲しみとも憎しみともつかない憂いがあった。 #WCHNTR

2014-01-15 23:15:05
GammaRay @sizuoka074

「あんたはまた誰かを殺そうとしてる」「そう。彼女達にはそうされるだけの理由がある」「それをあんたが決めるの?」「後戻りをする気は私にはない。貴女も全て見たはずよ。貴女の信じていた者達が、貴女を裏切る瞬間を」「それは……」「だから私に問いかけている。違うかしら?」 #WCHNTR

2014-01-15 23:20:21
GammaRay @sizuoka074

「そんなことをしてもおばさん達は戻ってこない」「これは復讐ではない。戒めよ。そしてただ一人だけなら取り戻せる。私はあの呪われた者達に、思い知らせなければいけない」菫色の瞳に殺意を湛え、ほむらは言った。 #WCHNTR

2014-01-16 04:25:17
GammaRay @sizuoka074

さやかが俯くと、空間がざわめいた。硝子窓の向こうに広がるぼやけた世界に、濃い赤色が広がっていく。ここはさやかの心象世界だ。今、彼女の心にはおぞましく、血塗られた記憶が蘇っている最中なのだ。 #WCHNTR

2014-01-15 23:23:30
GammaRay @sizuoka074

彼女の記憶と感情が、ほむらにも流れ込んでくる。……悲鳴。泣き声。血に染まった広いリビング、横たわる夫婦と子供の死体。至福の笑みを浮かべた少女達。決して掻き消えることのない惨劇の記憶が、二人の魂に焼きついている。 #WCHNTR

2014-01-15 23:29:06
GammaRay @sizuoka074

「止める気は」「ない。だけど貴女には……」唇を噛みしめるさやかの顔に、ほむらが手を伸ばした。触れることは出来なかった。薄い透明な膜のような物が間にあった。この隔たりを破ることは出来ない。隔絶されたほむらとさやかは、目を合わせることすらしなかった。  #WCHNTR

2014-01-15 23:34:20
GammaRay @sizuoka074

「……もう行くよ」「ええ、さようなら。みんなによろしく」世界がゆっくりと色を失い、波にさらわれる砂のように形を無くし、消滅していく。ほむらが小さくまばたきすると、そこはもうさやかの心の内側ではなく、鉄錆と油の匂いが立ち込める、オートレース場のガレージだった。 #WCHNTR

2014-01-15 23:37:26
GammaRay @sizuoka074

体は夜露に濡れることもなく、寝起きというのに暖かかった。枕元の時計は四時半。眠りについてから三十分も経っていない。このベッドを与えてくれた栗千葉もてぎには、どれだけ感謝してもしきれなかった。 #WCHNTR

2014-01-15 23:41:52
GammaRay @sizuoka074

「ほむらさん」小さな欠伸をしたほむらが立ち上がろうとしたその時、聞こえてきた声にほむらは振り向く。もてぎだ。銀色の光沢を持つレーシングスーツに身を包み、爛々と光る二つの目で、ほむらを悲しげに凝視していた。 #WCHNTR

2014-01-15 23:46:52
GammaRay @sizuoka074

「あなたは魔法少女なんでしょう」もてぎの問いにほむらは頷くと、髪を掻き上げ、左耳に光る紫色のイヤーカフスを見せつけると、もてぎも頷き返した。「あんたを殺さなきゃいけなくなった。外に来てくれ」 #WCHNTR

2014-01-15 23:52:04
GammaRay @sizuoka074

一方的に告げ、去るもてぎの背中にには、憂いと死相が浮かんでいた。ほむらに掛ける言葉は、ない。#WCHNTR

2014-01-15 23:59:27
GammaRay @sizuoka074

一呼吸し、部屋を去ろうとしたほむらは一瞬振り返った。まだ人のぬくもりがある。目を瞑れば、家族との思い出を、これからを語るもてぎの姿が思い浮かんだが、ほむらは無言で部屋を去った。 #WCHNTR

2014-01-16 00:05:50
GammaRay @sizuoka074

濃密な魔力の残滓を追ってほむらがサーキットに出ると、もてぎが待ち構えていた。傍らにはスポーツバイク。赤と黒に塗られたカウルには、力強い明朝体で書かれた『乙女』の字。もてぎはそのバイクに手をついたまま、殺伐とした目でほむらを見ていた。 #WCHNTR

2014-01-16 00:11:23
GammaRay @sizuoka074

「どうもウィッチハンターさん。ウォーマシーンです」もてぎの中に残った人間らしさがそうさせたのか。その馬鹿丁寧な挨拶に、ほむらは僅かなユーモアを感じた。 #WCHNTR

2014-01-16 00:14:36
GammaRay @sizuoka074

「ウォーマシーン。貴女ほど人間らしい人など、きっとそうはいないと言うのに」「父さんのためなら、あたしは心なんか捨てられる」「下衆の手を借りてまで?」もてぎが驚きに目を細めた。「あのケダモノはひどく臭うわ」「そこまで知ってるなら抵抗しないで」「それは出来ない話だわ」 #WCHNTR

2014-01-16 00:25:51
GammaRay @sizuoka074

先に仕掛けたのはほむらだった。やり取りが終わってから僅か百分の二秒の間、ほむらは手にした漆黒の弓に矢を番え、十二本を次々速射。鉄板を軽々と穿つ魔法の鏃が無防備なもてぎに襲いかかる。 #WCHNTR

2014-01-16 00:33:21
GammaRay @sizuoka074

「遅いッ!」だがもてぎは上体を反らし、全ての矢を回避した。驚嘆すべき動体視力だ。かつて天才レーサーの名を欲しいがままにした彼女には、生中な飛び道具など通用しない。 #WCHNTR

2014-01-16 04:24:55
GammaRay @sizuoka074

「メイデン!」裂帛の掛け声をかけ、もてぎがバイクに飛び乗った。二本の足でシートに立つ、曲芸めいた搭乗だ。排気筒が破裂するような音を立て、エンジンが轟きを上げる。眩いライトが照らし出すサーキットに降り注ぐ霧雨を押しのける勢いでバイクが、ほむらめがけて突進する。 #WCHNTR

2014-01-16 00:43:10
GammaRay @sizuoka074

「くらえ!」「――ッ!?」バイクはほむらの二十メートル先で異常な急加速。ニトログリセリンだ。魔力によって強化された車体が一瞬にして音速を超え、猛烈な衝撃波がほむらの体を打ち付けた。 #WCHNTR

2014-01-16 00:48:27
GammaRay @sizuoka074

「イヤーッ!」「ぐっ……!?」路上で受け身を取るほむらに、バイクから飛び降りたもてぎが追撃。ほむらの胴体ほどもある鋼鉄製のスパナを弓で受け止め――「メイデン!」さらに衝撃。リモートコントロールされたもてぎのバイクがUターンし、ほむらの脇を通過したのだ。 #WCHNTR

2014-01-16 00:52:31
GammaRay @sizuoka074

「これが父さんのマシーンとあたしの力だ!ほむらさん!覚悟しろ!」衝撃波で空中に投げ出されたほむらを、バイクに飛び乗ったもてぎが追撃。着地際を狙い撃つつもりだ。 #WCHNTR

2014-01-16 00:57:53