◆獅子◆【ライフウェイ・オン・ザ・スシレール】◆二次創作な◆
- sakatamaki
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ヤマナテ・ライン、車両番号893号。通常運行しているヤマナテ・ライン・カチグミ・クラスの先頭に連結されたこの異様な車両には、窓がない。装甲板めいた分厚い合金で覆われ、屋根には大規模無線LANアンテナが4基。前後に設けられたタラップには、機関銃座が据え付けられている。23
2014-01-19 16:17:52一見して異様な車両。その実態は、アマクダリ・セクトから派遣されたニンジャ、レイルウェイマンの移動管制室である。彼はここから、NR社の一切を支配している。現在、移動管制室車両には、本日のケジメ対象となった車掌達が、NRPの警備員によって拘束・連行されて来ていた。 24
2014-01-19 16:22:12(((なぜこんなことになったのだろう)))ケジメ対象者の1人である車掌、オスガ=サンは絶望的な思考を必死で巡らせていた。彼らNR社の車掌達は、鉄道員の誇りを持って過酷なる業務に耐え、ネオサイタマ経済を文字通り循環させてきた。そのはずだった。 25
2014-01-19 16:26:45全てが変わったのは3ヶ月前のことだ。大規模な資本取引があり、筆頭株主が変わった。新しい大株主から、行政から、得体の知れない人間が出入りし始めた。今やNR社はCEO以下重役も一新され、新しい重役陣はニンジャのいいなりだ。 26
2014-01-19 16:30:57ニンジャ。そう、ニンジャである。信じがたいことに、移動管制室車両に専用シートを構えたその男、レイルウェイマンはニンジャなのだ。そして、彼の走狗となって働くビリークラブもまたニンジャだ。ビリークラブは、警備部門であるNRPを作り変え、現場を秘密警察じみた統制で絞り上げ始めた。27
2014-01-19 16:35:53新しいNRPは、僅かなミス、些細な手違いを発見しては車掌を囲んでボーで叩き、その後ケジメ対象としてこの移動管制室車両に連行する。移動管制室車両に連行された車掌は二度と帰ってこない。ミスをした罪の意識によってセプクした、というカバーストーリーめいた噂が流れるばかりだ。28
2014-01-19 16:40:09補充の車掌は来る。黒い鉄道制服に黒いネクタイ、黒いサイバーサングラス、青白い凄みのある顔にヤクザカット。皆一様に同じ顔だ。彼らはNRPの警備員たちと瓜二つだったが、恐ろしくて誰もそれを指摘できなかった。彼らヤクザ車掌に対して、同じ顔をしたNRP達は何一つ言うことはない。29
2014-01-19 16:44:27オスガ=サン達、以前からのNR鉄道員だけが、この収容所めいたジゴクの中にいる。このままでは、NR社の人間はヤクザとニンジャにそっくり作り変えてしまうのではないか。そんな、ぼんやりとした恐ろしい危機感があった。30
2014-01-19 16:48:20だが、誰も逆らうことはできなかった。3ヶ月前、突然全員が行方不明になった旧NRPの警備員たち。1ヶ月前、義憤に燃え、移動管制室車両に乗り込んだカラヤマ車掌。彼らがどんな目にあったか。見たものはいなくても全員知っていた。ニンジャに殺されたのだ。31
2014-01-19 16:51:50レイルウェイマンは恐ろしかった。ビリークラブも恐ろしかった。ヤクザ警備員もヤクザ車掌も何もかも、恐ろしくてたまらなかった。そして今日。オスガ=サンは些細なミスを指摘され、囲んでボーで叩かれ、ここに連行された。指差し確認の手が震えていた、というのが理由だった。32
2014-01-19 16:55:27カチグミ車両を1両丸ごと改造した移動管制室は実際大きい。オスガ=サンと、連行されてきた他の2人のケジメ対象者は、牢屋めいた控え室に通された。誰もが震え上がり、口を開く者はいない。オスガ=サンは「外して保持」「不必要は入らない」とショドーされた管制室のUNIX扉を見つめた。33
2014-01-19 16:59:41入口には4名のヤクザ警備員が…ナムサン、銃を持って立っている。逃げることなど不可能。(((もうおしまいだ。私はNR鉄道員として全てを社に捧げてきたのに、マグロめいた轢死体になって死ぬんだ…!))) 34
2014-01-19 17:04:03不意に、列車が制動し、停車する。乗ったのがカラブクロだから、そろそろハタダ駅だろうか。反射的に職業病めいた思考がよぎり、オスガ=サンはつかの間、絶望的な現実から逃避した。その時。ブガー!ブガー!管制室入口のアラートが鳴り、ザリザリとしたノイズ交じりの酷薄な声が響いた。35
2014-01-19 17:07:51「定刻です。今日のケジメ対象者を」「入ってください」ヤクザ警備員が道を開ける。扉の方へ。ジゴクへだ。羊めいて為す術もなく管制室へと入れられる3人。その顔面はいまや、彼等を囲む一卵性双生児の様なヤクザ達よりも蒼白であった。36
2014-01-19 17:12:04管制室は10数台のUNIXが、それぞれを担当する職員…これもヤクザである…によって休みなく稼働している。部屋の隅々に警備員ヤクザ。中央に、3Dホロ路線図が浮かび上がり、それに正対して一段せり上がって設えられたシートが、彼らに冷たい背中を向けている。それは実際玉座めいていた。37
2014-01-19 17:16:55「1500。定刻通りだ。ダイヤグラムが守られている。素晴らしい事ですね?」シートが回転し、声の主が姿を見せた。鉄道員めいた灰色のブレザー制服ニンジャ装束。制服帽と一体になった鼻から上を覆うメンポ。ニンジャである。玉座の主にして、NR社を支配するニンジャ、レイルウェイマンだ。38
2014-01-19 17:21:55「それでは確認します。サマダ=サン、ヨシ。ホカダ=サン、ヨシ。オスガ=サン、ヨシ。合計3人、ヨシ。素晴らしい。ダイヤグラムが守られている。」レイルウェイマンは異常なまでの丁寧さで、ケジメ対象者をひとりひとり指差し確認して、満足そうに酷薄な目を細めた。39
2014-01-19 17:26:18オスガ=サンは化物に覗き込まれた様に震えた。「貴方達はミスをしました。単純なミスかもしれない。見過ごしてしまうミスかもしれない。しかし見過ごさない。私は見過ごさない。それがダイヤグラムを乱すからです。秩序を乱す。経済を乱す。機会ロス!」レイルウェイマンの声が次第に大きくなる。40
2014-01-19 17:30:43「ヒヤリ!ハットだ!どんな些細なことでも!どんな小さなことでも!大事故に繋がる!今この瞬間にも!鉄道は生きたネオサイタマ経済だ!粛々と!機械的に!職業倫理ッ!」レイルウェイマンの恐ろしい声が冷たい管制室に木霊する。オスガ=サンは失禁していた。41
2014-01-19 17:34:57不意に減速感。車両が停車した。「進行ヨシ」UNIXヤクザの声が響いた。車両は動き出す。「…ですから、私は貴方達を罰しなければならないのです」レイルウェイマンの声が急激に冷める。「私とて辛い。だがこれはケジメ。ミスをしたら罰がある。感情の余地無し。機械的職業倫理。いいですね?」42
2014-01-19 17:39:17返事のできる者はいない。遠く聞こえる架線の音と振動、UNIX音だけが、管制室に響く。やがて列車が制動し、メンジロ駅へ停車した。「…大変結構。では予定通りにケジメします。サマダ=サンはケジメ席へ」レイルウェイマンの声に続いて、UNIXヤクザの声。「進行ヨシ」車両は動き出す。43
2014-01-19 17:43:37ヤクザ警備員に両側から腕を掴まれたサマダ=サンが連行される。管制室玉座の正面にある専用席だ。「アイエッ…あの…あの私は…」サマダ=サンは弁明しようとした。「ダマラッシェーッ!」レイルウェイマンの怒声!「ダイヤグラムを乱すかァッ!」「アイエッ!アイエエエ!」サマダ=サンは失禁!44
2014-01-19 17:47:54「この期に及んでダイヤグラムを乱す愚か者は要らん!」レイルウェイマンが玉座の操作レバーを引き起こす!ケジメ席の床が開く!ナムアミダブツ!下は走行中の線路だ!「アイエッ!」手すりにすがるサマダ=サン!だが手すりもまた連動して分解!無慈悲!「アイエーッ!アバーッバッアバーーッ!」45
2014-01-19 17:52:19