クロマニョン人がガーターベルトの似合うセクシーレディになるまで

クロマニョン人がガーターベルトの似合うセクシーレディになるまでの話
0
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki 冒頭:人類は滅びた。私をのぞいて。私は、人類再興のため、己の遺伝子とわずかに残ったジーンバンクおよび、その育成装置を利用して伴侶を作ることにした。今後、厳しい困難を乗り越えるため、もっとも適した遺伝子を抽出するように、マザーにインプットして。

2014-01-26 22:16:27
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki そして生まれたのは彼女だった。 彼女は想像以上に、強そうな個体でかつ、毛深かった。 マザーは重大なミスを犯した。 人類と私はインプットしたが、旧人とはいっていなかった。 彼女はクロマニョン人だった。

2014-01-26 22:19:04
うっかりん/三菱榧 @ukkarin

@seabuki @NaMelanza これを失敗と断言するには早計すぎる。彼女は屈強で、この荒廃した世界を生き抜くに相応しい肉体を持ちあわせてはいる。なるほど、マザーが彼女を選び出したのもわからぬでもない。

2014-01-26 22:27:50
うっかりん/三菱榧 @ukkarin

@seabuki @NaMelanza ただ、知性が、人類が、猿と別れを告げるに至った、文明を築くための知恵が、彼女には足りなかった。早急にプロフェッサーヒギンズが必要だ。

2014-01-26 22:28:07
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki 私はまず彼女を人間にすることにした。意思疎通のできる人間に。問題は彼女が意思疎通できるレベルの声帯と知能を持ち合わせているかどうかだ。 #アマラとカマラって実話なのだろうか

2014-01-26 22:31:00
うっかりん/三菱榧 @ukkarin

@NaMelanza @seabuki 身振りにしろ手振りにしろ、共通の認識がなければ意思疎通が難しい。例えばある国ではこちらへ人を招く動作だったものが、他の国ではあっちへ行けと人を追い払う仕草だったりする。だから、まず私は彼女を観察することから始めた。#私も狼少女を思い浮かべた

2014-01-26 22:36:30
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki エヴァと名付けた彼女は、私の想像以上に賢かった。私が観察すると、同じように私を観察する。互いに歩み寄ることは一方通行よりもより速く物事がすすむ。簡単な日常の単語レベルなら、相手にジェスチャーで示すことも可能となった。物事は順調に進むと思っていた

2014-01-26 22:42:35
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki だが、問題があった。マザーはなぜ、数多ある遺伝子の中からエヴァを選んだのか。そして、人類が滅びた理由を。私の体には、ホモサピエンスしかかからない未知の病が潜んでいた。

2014-01-26 22:44:42
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki 私は死ぬ。死という単語をエヴァに伝えることはできない。そんな場面がないのだから。だが、賢い彼女はわかっているようだ。不器用な手つきで私を看病する。私は、この毛深い彼女のことをいつのまにか愛していたようだ。花嫁に贈る靴下止め、それを彼女に渡した。

2014-01-26 22:47:51
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki こんなものの使い方などわかるまい、そう苦笑していた。でも、彼女は首をひねりながらも、何度も苦戦しながらも、正しい靴下止めの使い方を理解した。それだけでも涙が止まらなかった。そして、彼女は信じられない行動をやってのけた。

2014-01-26 22:49:59
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki かろうじて生きていたマザーの装置が動く。その昔、遺伝子組み換えの食料をつくるためのそれだ。何をしようというのだ。それは関係ないよ、そんなことを言っても聞きやしない。 だが、彼女はその装置に私をおしこめた。

2014-01-26 22:52:57
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki 笑いが込み上げた。自分を勝手に生み出した人間に報復したかったのだ、彼女は。私は、自分の細胞が溶かされ、違う生き物へと変わっていくのを感じながら目を瞑った。彼女の気持ちになってあげられなかったことを後悔しながら。

2014-01-26 22:54:50
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki 「おはよう」 聞きなれぬ女性の声で私は目を覚ました。目の前にいたのはエヴァだった。 「目が覚めないかと思ったわ」 エヴァの口は動いていない、でも、それはたしかにエヴァの声だった。 「ようやくあなたと話せるようになったのに」 と、鏡を渡してくれた

2014-01-26 22:57:11
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki そこにはやたら骨太で毛深い自分がいた。鏡を持つ手も毛深い。これではまるで、エヴァと同じ旧人ではないだろうか。 「これしか方法はなかったの」 この時代にふさわしい人。 彼女は旧人などではなかった。言語ではなく、テレパシーで会話をする新人類だった。

2014-01-26 23:00:21
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki マザーの行動は間違いじゃなかった。あるとすれば古い人類に固執していた自分がいけなかったのだ。 私は彼女を抱きしめた。毛深くごつくはちきれそうな靴下止めをつけた彼女を。 「そんなことはない、僕こそ気づけなかった」 二人の顔に笑みがうかんだ。

2014-01-26 23:02:44
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki 「とうさーん、かあさーんはやくはやくー」 子どもが手をふりながら前を走る。 「こらー、妹や弟もいるんだ、ちゃんとおにいちゃんらしくしろー」 私は、息子をたしなめる。 私の横には靴下止めをつけた妻ともう二人の子供がいる。

2014-01-26 23:07:04
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki 不思議なものだ、私の体が改造されると、美的感覚もずいぶんかわるものらしい。エヴァは変わらない、だが、どんなスーパーモデルもかなわない美しい女性になっていた。 私は最高に幸せだ。こんな美しい女性とともに、この世界を生きているなんて。

2014-01-26 23:09:26
日向夏🐗 @NaMelanza

@ukkarin @seabuki 残念なことといえば、私と家族以外にこの美しい女性を見るものがいないことだろうか。 もっとも古い人類が生き残っていたとすれば、 「うほうほ」 と叫ぶ、類人猿の家族がいるといか認識しないだろう。 自分がもう淘汰された人類とは知らぬまま。 完

2014-01-26 23:11:32