【企画】ぼくの還る場所・まとめ
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#僕還オムニバス 窓を開けたら其処は海底だった。へんてこりんな格好をした深海魚達が目の前を通り過ぎる。僕は口をあんぐり開けて、それから大きく一つ深呼吸して、そしてゆっくり窓を閉めた。もう一度窓を開けたら、其処は雨の降る街だった。
2014-01-10 15:52:46#僕還オムニバス バス停に一人。たとたとたとた、と雨がバス停の屋根の上で弾む音がする。このまま雨が降り続けたらこの街も海のそこに沈んでしまって、私は海底人になってしまうんのではないだろうか。そう思う。バスがやってくるのは4時。
2014-01-10 16:00:49汚れを清めていく その水は 自身を汚し許していく やがて海に帰り 天に昇り太陽と出会い 冷たい風を知り 山を下る そして汚れを清めていく まるで輪廻を巡る 人のように 巡り巡る 水は人で 人は水だ。 #僕還オムニバス
2014-01-10 18:40:49#僕還オムニバス あの夏の日に僕は溺れた。地上が水に沈んでいることに気づいてしまったから。気づいてしまう人はほんの一部。気づかない人は、今日も海の底をスーツで歩く。気づいた僕らは地上でシュノーケルで息継ぎしてる。どっちがいったいおかしいんだろう?
2014-01-10 18:45:41#僕還オムニバス 悲鳴を聞き付けたカモメが 僕の事を誰も知らない場所へ連れて行く 大きな大きなそのカモメの背中が暖かい 潮風が僕を歓迎し無人島に降り立つ それからカモメと海を眺めた さざ波が寄せるたびに涙が零れ 月光に照らされるとカモメは鳴いた 水玉模様の砂浜にて #詩
2014-01-10 18:52:06この広い広い海で、僕らは毎日毎秒誰かと出会い、支え合い、議論して、時々稀に、愛し合ったりする。いなくなればそれまでの、儚く脆いこの海で。ここでは僕は誰でもなく、しかし僕は僕でしかない。この海に一体何億人いるのかもわからない。ただ一つのアイコンだけが道標。 #僕還オムニバス
2014-01-10 20:28:15ごぼごぼごぼと、黒い世界に墜ちてゆく。 がぶがぶがぶと、冷たい何かが口に飛び込む。 どぼどぼどぼと、かさを増してゆくこの世界は。 とても、冷たく、くるしいです。 でもね、とても、しあわせだったよ。 僕はゆっくり、この世界の底に降り立った。 #twnovel #僕還オムニバス
2014-01-10 20:34:40しゅわしゅわ、ぱちん。小さな世界、無数の泡が生まれて消える。透明なグラスを眺めてつつく。揺れる世界、次々生まれて消える泡。甘くて甘いソーダ水。ぼくの涙をとかしたら、どんな色になるのかな。とかして、とかして、飲み干して、甘い涙で満ちる、ぼくの中。#twnovel #僕還オムニバス
2014-01-10 20:48:14自分が漂っている感覚がどうにも、拭い去れない。いつも、フラフラとしていて掴み所がなくて、確かな存在じゃない。#twnovel 誰か、僕を捕まえて。僕がそこにいると、証明して。#僕還オムニバス 僕の帰る先は、君のところで、君が僕であると言って。 願いながら今日も、僕は、流れる。
2014-01-10 21:29:28揺れた水面は黒々としていて、先は見えず、深さもわからず、ただの暗黒として広がっていた。わからない。この海が、どう波を返すのかも、どこまでなら行っても平気なのかも教えてくれない。ただ、黒々とそこに、揺らめいている。#twnovel #僕還オムニバス 触れてはいけないのだと確信した。
2014-01-10 21:43:12激情を映した真っ赤な海がたゆたっている。おいで、と。浅瀬は、まるで、薄紅色なのだ。恋煩いの淡い桃色。怖くないよ、と言うように優しく波打っている。 #twnovel #僕還オムニバス けれど、あまり、遠くに行ってはいけないよ。かくん、と沈んだその先は、真っ赤に染まっているのだから。
2014-01-10 21:46:24今日も海は空を映して、青褪めている。いや、ほころんでいる。綺麗な笑顔だ。知性と優しさの青は、ゆるりと、そこで、揺らめくのだ。 #twnovel #僕還オムニバス でも。気を付けて。優しい人がいつまでも優しとは限らないよ。その優しさに溺れてはいけないよ。総じて海は遠浅なんだから。
2014-01-10 21:49:11風景写真に異常にこだわるあなた。私が「撮って!」と言ってピースしても適当に撮るくせに、風景を撮る時は時間をかけて設定してる。でもそんなあなたが好きだった。山、川、月、星。いろんなものを一緒に見たね。夏は海って言ったのに、約束してから3年経つよ?#僕還オムニバス #twnovel
2014-01-10 23:13:23浮かぶ 揺れる 漂う 沈む まるで君への想いみたい 好き と浮かび 好きなの? と揺れ 好きかも と漂い 好きだよ と沈む そして静かに奥底まで沈み 僕の身体の一部となる #僕還オムニバス
2014-01-11 00:55:48静かな夜に、水をかぶる。無機質なシャワーの音、それは雨のように絶え間なく降り注いで、何もかもを洗い流す。傷も、血も、吐息も、涙も、呻きも、孤独も、憎しみも、醜いものを、何もかも。できることならこの愛も、流れて消えて無くなってしまえ。願っても水は、変わらずに冷たい。#僕還オムニバス
2014-01-11 03:28:47生まれる前には確かに水の中に居たのだと思う。気がつけばみずたまりに足を浸し、髪を濡らして立っていたのだから。それ以前の記憶はないが、空気に四散した水が含まれているのを感じて、僕は自分を包んでくれていた還る場所を自ら破壊してしまったと悟った。名残の水が頬を伝った。 #僕還オムニバス
2014-01-11 15:32:06#僕還オムニバス 海へ落ちる雨粒を見たいときみが言うから、俺は港町まで車を走らせた。しかし、太陽は容赦なく輝いている。頬を膨らませたきみは波を蹴飛ばしていた。泳ぐにはまだ早い。俺は湯船に湯を満たし、如雨露を傾け降雨を装った。「いかがですか? お嬢様」湯に浸かり人魚が微笑んでいる。
2014-01-11 18:38:33祖父に海へと連れ出される夢を見た。砂浜に僕を残し、沖に向かって歩いていく祖父。どこに行くの。祖父は答えず、ただ一言。声が聞こえるんだ、と。その年、祖父の乗った船が沈んだ。波一つない穏やかな海だった。歳を重ねた今、僕にも声が聞こえる。帰っておいで、と海が呼ぶ。 #僕還オムニバス
2014-01-11 22:59:29#僕還オムニバス 海辺の町で僕らは出会った。波打つ音を聞きながら、反射の眩しさに目を細めて言葉を交わした。家や将来。眠り続ける弟と、色々。あの頃のことは、今でも時折思い出す。けれど決して恋ではなかった。だがこれから始まる運命に対し、やはりあれは特別だったのだと思い知らされる。
2014-01-12 00:23:59@3zaru #僕還オムニバス バスタブで寝る。僕を敷き詰めて、膝を折り曲げて眠る。蛇口を捻って水が注がれると、少しずつ外気と触れる僕の面積が減ってゆく。それからだんだんと僕は無意味になって、深い白に沈みゆく。羊水に浸かって僕は、原始になる。そうして僕の棺桶は、満たされてゆく。
2014-01-12 11:11:01遥かに続く 果てなき海の 波間に混じった 涙雨を思う 現の夢は 短き旅路 碧海の中 顧みる 似非歌つれた 流浪の旅路 #僕還オムニバス http://t.co/ryoJDNXyuC
2014-01-12 17:45:50くるり、一回転。ぽこっ、一緒に泡も、生まれて回る。嬉しくて、嬉しくて、ただただ、踊って回って笑う。ちいさなちいさな『うふふ』の声も、泡と混ざって、ゆらゆら上へ。ああ、今、とても安心したような、かちりとピースがはまったような、そんな気持ちです。#僕還オムニバス(二回目の、おはよう)
2014-01-12 19:32:00#僕還オムニバス 海辺で出会った君と恋に落ちた。焼け付きながら凍える恋。この恋は制限時間付き。僕が海に凍えて溺れ死ぬか、君が僕の熱に焼かれて死ぬか。体温の差は僕らが違う生き物だと突きつける。冷たく冷えた僕の手に絡む、その手を火傷した人魚がふわりと笑う。
2014-01-12 19:49:22