2013.02 創作まとめ

鈴木楪 @crazy_cat8062

夢の欠片だけがこの手に残って、夢は何処かへと旅立ってしまった。僕には縁のなかった夢だったようだ。夢は他の誰かの所へたどり着き、いずれ何処かで形になる。あの夢は、僕が形にするものではなかったようだ。次の夢がここに来るまで、少し昼寝でもしよう。 #書き出し一人祭

鈴木楪 @crazy_cat8062

君の手と僕の手、触れられそうで触れない距離。もどかしいこの距離を保ったまま、今日もお別れを言う時間が来てしまった。明日は、きっと。何百回言ったか知れない言葉を思い、何百回目かの帰途。触れればきっと、もっと繋がりを感じられるようになると思うから。明日こそは。 #書き出し一人祭

鈴木楪 @crazy_cat8062

今日の月はとても綺麗な月なので、お月見をしましょう。季節外れではありますが、 僕のご先祖様が愛した姫の故郷なのです。悩み事や問題があっても、月を見ると何故か解決してしまうんですよね。きっと手助けしてくれてるんでしょうね。千年以上たった、僕ら子孫のために。 #書き出し一人祭

鈴木楪 @crazy_cat8062

奇跡の話をしてみようか？でもね、困ったことにそんな話はないんだよ。何故かって？考えてもごらんよ。この世に何十億人もの人がいるなかで、僕らが知り合えたこと。ここで暮らしていること。もうこの時点で奇跡の連続なのさ。世間が奇跡奇跡と持て囃すのは、皆自覚してないからさ。 #書き出し一人祭

鈴木楪 @crazy_cat8062

信号が青になって一斉に歩き出す。すれ違うのは、毎日毎日違う顔触れ。ほとんど変わらないタイムスケジュールで動いているのに、行き交う人々と顔見知りになったりはしない。そう考えると不思議だ。俺のこの生涯で、この一時すれ違うだけの人もいるんだろうな。これも縁、か。 #書き出し一人祭

鈴木楪 @crazy_cat8062

僕の恋人が男だと両親にばれてしまった。親不孝者のレッテルを、無事に貼られたわけだ。僕だって、両親に孫の顔を見せてあげたいと思わないわけではない。だけど、僕はどうしてもあの人じゃないとダメなんだ。女の人と付き合ったことはある。でも彼女たちといるのとは違うんだ。 #書き出し一人祭

鈴木楪 @crazy_cat8062

天使を捕まえたので、まず飼い方を調べてみた。うん、案外簡単なようだ。『愛情を与え、慈しみを与えること。あなたとの縁を確信させるとなおよし』よし、それじゃあまずご飯をあげないと。愛情たっぷりの、手作りご飯をね。 #書き出し一人祭

鈴木楪 @crazy_cat8062

誰もいない原っぱの上に寝転んでみた。空を見れば、吸い込まれそうな錯覚をおこす。何かに悩んだ時俺は必ずこうして時分の小ささを確認する。この行為自体が俺の人間性の小ささを示してるのかも知れない。だがこれで、俺はもう一歩前へ進める勇気を得られるんだ。もう少し、あと少し #twnovel

鈴木楪 @crazy_cat8062

幾千年もの時が過ぎた。我が生まれてから我を知る者はもういない。ただ、我の住人たちが騒いでいるだけだ。もう、とうの昔に自分で数えることは忘れたが、こうして住人たちが祝ってくれる時に、今日なのかと自覚する。我は我であって我にあらず。その行先は、住人たちが決めるのみ #twnovel

鈴木楪 @crazy_cat8062

墓参りに行こう、と親父が言った。カレンダーを見て今日がお袋の誕生日だということが分かると、納得がいった。世間様は故人の命日に墓参りにいくそうだが、我が家では誕生日に行く風習がある。親父曰く、「妻が死んだ日を嘆くより、生まれてきた日に感謝をする方があいつも喜ぶさ」 #twnvday

鈴木楪 @crazy_cat8062

誕生日はみんなで祝うものだと、その日家にいた奴をみんな連れて墓参りに行くのだが、結婚記念日には絶対に連れていかない。出来心で偶然を装っていったことがあったが、偉い剣幕で怒られたなあの時は。二人だけの一時を邪魔するな、か。リア充の恐ろしさを思い知った日だった。 #twnvday

鈴木楪 @crazy_cat8062

些か出過ぎた真似をしたようだ。私がいなくとも、君はどうにか出来ただろう。だが、私にもプライドと言うものがあるんだ。せめて強がる君を守ること位させておくれ。私ができることといったらこれくらいだし、何より。君が傷付いてまで他人のために頑張る姿を、見たくないんだ (エレクトロ) #空剥

鈴木楪 @crazy_cat8062

少年は毎日、時間が来ると外に出て月を待つ。チャンスは一度きり。タイミングを合わせて昇ってきた月に飛び乗る。今日は三日月だから、乗りやすい。昼間の月には乗れないし、満月と新月にも乗れない。天気が悪くても乗れないのだから、月に乗るのも楽じゃない。今日は何をして遊ぼうか... #空想話

鈴木楪 @crazy_cat8062

妹が、月が欲しいとねだった。滅多にワガママを言わないから、お兄ちゃんは頑張って取ろうと思った。けれど、どんなに手を伸ばしてみても、月には到底届きそうもない。それでも諦めないで一生懸命頑張っていたお兄ちゃんに、月は一欠片自身を落としてあげた。妹もお兄ちゃんも幸せそうだった #空想話

鈴木楪 @crazy_cat8062

かぐや姫は、月から下界を眺めていた。遥か昔、物語に紡がれた彼の姫の子孫である、何十代目かのかぐや姫が。「私の罪は、なにかしらね」ぼそりと呟かれた言葉に、「何千年物もの間、子供たちを魅了し続けることですよ」と月は優しく答えた。「そうね。これから先のかぐや姫も、きっと」　#空想話

鈴木楪 @crazy_cat8062

月ウサギは、隙をみては逃げ出そうとするかぐや姫にうんざりしていました。自由な時間が欲しいからです。お月さまにそう言うと「では、私が地上を照らしている間はお休みをあげましょう」と言いました。新月の夜は、月ウサギのお休みの日です。月が欠けてなくなるのを今か今かと待っています #空想話