茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1165回「音楽自体を、聴いてあげるべきだと思う」

脳科学者・茂木健一郎さんの2月5日の連続ツイート。 本日は、今朝飛び込んできたニュースについて。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第1165回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、今朝飛び込んできたニュースについて。

2014-02-05 08:25:25
茂木健一郎 @kenichiromogi

おき(1)今朝、起きてすぐツイッターを見たら、「佐村河内」というトレンドワードがあったから、どうしたのだろうと思ったら、佐村河内守さんの主要曲が、実は他人が作曲したものであるというニュースが飛び込んできていた。びっくりするとともに、いろいろなことを考えてしまった。

2014-02-05 08:26:52
茂木健一郎 @kenichiromogi

おき(2)佐村河内守さんのことを知ったのは、私も、ご多分にもれず番組で、「現代のベートーベン」というそのイメージに強い印象を受けた。コンサートなども、たくさんの方がいらしているようだった。それで、主要楽曲である「HIROSHIMA」のCDを購入して、聴いてみた。

2014-02-05 08:28:13
茂木健一郎 @kenichiromogi

おき(3)良い曲だとは思ったが、正直、よくわからなかった。もっとも、自分が聞き取れていないのかもしれないとも思った。ある日、あっ、わかると思う日が来るかもしれないと思った。それで、放っておいた。楽曲に対する態度は、その楽曲に即してと思っているから。

2014-02-05 08:29:36
茂木健一郎 @kenichiromogi

おき(4)それで、佐村河内守さんの名声と人気が高まっていく中で、私は、その楽曲に対して判断保留というか、よくわからないとずっと感じていた。一般論とすれば、障害がある中作曲をするというその努力は、すばらしいとは思っていたが、楽曲自体については、よくわからないと感じていた。

2014-02-05 08:30:47
茂木健一郎 @kenichiromogi

おき(5)一方、私はこのところ後期ベートーベンを聞き直している。今は、この連続ツイートを書きながらOpus 131: String Quartet No. 14 in C sharp minor (1826)を聴いている。掛け値なしに素晴らしいと思う。出だしの悲しい旋律からして。

2014-02-05 08:31:58
茂木健一郎 @kenichiromogi

おき(6)ベートーベンの生涯を考える時、途中で聴力を失ったというのはもちろん重大なことだけれども、彼の作品は、音楽として、単純に素晴らしい。その音楽性を考える時に、聴力を失った作曲者が、というのは一つのパラメータであるが、音楽自体として、素晴らしい。だから聞き継がれている。

2014-02-05 08:33:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

おき(7)ベートーベンの後期作品は、当時の聴衆の音楽の感性からすると先を行きすぎていて、理解されないところもあったようだけれども、そのように、音楽という宇宙を突き詰めていったところが、実に素敵で、一人の人間の生き方としてあこがれを喚起するとともに、創造性について考えさせる。

2014-02-05 08:34:49
茂木健一郎 @kenichiromogi

おき(8)さて、佐村河内守さんのお話に戻る。真相はよくわからないが、もしその作品が音楽として素晴らしいのであれば、それがどなたであれ、称賛されるべきだろう。また、佐村河内守さんが、一人の人間として、一生懸命生きていらっしゃることも、確かなのだと思う。

2014-02-05 08:36:07
茂木健一郎 @kenichiromogi

おき(9)ぼくがよくわからないのは、音楽自体を聴いてどう思うかということよりも、障害を負った作曲者がつくった音楽、という物語の方が消費されていった、ということ。物語を作ったのは、大衆の欲望だ。それが「テレビ的」なのかもしれないけれども、本当は、音楽自体を、聴いてあげるべきだと思う

2014-02-05 08:37:45
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第1165回「音楽自体を、聴いてあげるべきだと思う」でした。

2014-02-05 08:38:04