Orphe兄貴の艦これ航海日誌番外編　2014年1月

orphe @orphechin

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アー、あー、こっちのチャンネルを使うのも久しぶりだな。まあ何、今マイアミの方じゃ大阪で苦戦しててな。他のことが書きにくいんだ。だからこっちを使わせてもらう。ちょっと話したい事があってな。何、すぐ終わる。大阪にはすぐ戻るよ。 #艦これ航海日誌

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で、何を話すかって？そうだな、そこが大事だ。俺が話したいのは駆逐艦のことだ。そう、お前らが使い捨てたり悲劇の道具にしたり「商売」の糧にしたりしてるアレだよ。いや、否定してるわけじゃないぜ？弱い奴はそういうふうに扱われるのは世の常だ。何より、ここは日本だぜ？ #艦これ航海日誌

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俺が話そうとしているのは「例外」だ。勿論、こいつを押し付けるつもりはない。お前らの世界じゃソレが外患誘致並みの犯罪行為だってことは承知してるし、それが親殺しより反道徳的だってのもわかってる。ただ、何かの参考になればと思ったんでな。まあ前置きはいい。始めようか。 #艦これ航海日誌

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この間、うちの戦艦どもを連れて知り合いの提督の所にいった。そいつとはよく強盗や恐喝、核融合炉の窃盗なんかで楽しんでる間柄で、つい先日そいつから招待状が届いたんだ。ある艦娘がLV99を迎えたのでパーティーをやるっていうのさ。タダ飯ほどありがたいものはないね。 #艦これ航海日誌

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連れてったのは金剛型だ。うちの戦艦の中では比較的礼儀をわきまえてる方だし、警察にしょっぴかれるような真似も（あまり）していない。歩くサラ・ペイリンとか言われてるウチの霧島だって、こないだの鉄蹄海峡の功績でロナルド・レーガン自由勲章をもらってたりするんだぜ？#艦これ航海日誌

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さてそいつらを連れて知り合いの鎮守府に行ったわけだ。車を駐車場に止めて、鎮守府を見回したんだが、別段これといって変わったところはない。将官クラスの鎮守府にはよくある規模の建物には飾り一つないんだ。おかしいよな、普通なんか飾るだろ？敵の首とか警官の生皮とかよ。#艦これ航海日誌

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そうしてるうちに、向こうから件の知り合いがやってきた。今日はありがとう、そう言って俺たちをバスに載せようとした。ここじゃないのか、と聞いたら「パーティーは別会場だよ」だと。彼の服は少し切るフルしていて、LV99の艦娘のいる提督とはちょっと思えなかった。#艦これ航海日誌

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バスに入ると目隠しをされた。 「驚いてほしいからね」彼はそう言ってバスのエンジンを入れた。どこへ連れてかれるんだか。こっちをハメて殺る気じゃねえのか。互いに汚いこともしてきたし、誰かにそそのかされて俺を売る可能性も考えられた。悪いことは楽しいことばかりじゃない。 #艦これ航海日誌

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そのまま10分ぐらいか、バスに乗ってたのは。耳栓はされてなくて、ガタガタ揺れる音、鳥の声や虫の声も聞こえてきたので、俺達は山の中を走っていると理解できた。バスが停まり、彼が目隠しを外す。「じゃあ、俺はこれで」 全員を下ろすと、彼はバスを走らせ元の道へ戻っていった。#艦これ航海日誌

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「ていとくぅ、私達おいてかれたみたいデース」金剛の野郎が愚痴るのを無視し、山の中を歩く。「ぬわぁぁぁぁん疲れたもぉぉん」比叡のくさい愚痴も聞こえたが無視する。榛名は常に笑って俺の真後ろにぴたりとつき、霧島は鳥に向かってウィンチェスターをぶっぱなしていた。#艦これ航海日誌

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狭い山道をしばらく歩くと、急に道が開けた。草むらはきめ細やかに刈られた芝生と代わり、青空の下に2階建ての巨大な洋館が広がっていた。庭では少女たちが鮮やかな色の菓子や果物を手に取り談笑している。パーティー会場とはここのことだったようだ。 #艦これ航海日誌

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ガキの頃に読んだお伽話みたいな感覚を覚えながら、彼女たちの所に歩き出す。 だが、彼女たちが俺達を認めるなりその気分は瞬時に吹き飛んだ。こちらを見つめる彼女たちは、手元の食べ物を離そうとはしなかったが、瞬時に戦闘の空気をその空間に張り詰めさせた。#艦これ航海日誌

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俺も金剛型も一瞬足が止まった。50メートル先から瞬時にあの娘たちが距離を詰め、手に持つフォークを俺達の喉に突き立てると、あの時誰もが思ったろうな。だが、少女の一人が俺の持っていた招待状に目を向けると、空間に満ちていた殺意が和らいだ。九割ほどは。 #艦これ航海日誌

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「磯波と申します。提督に招待された方ですね？」件の少女はそう名乗った。「吹雪です」「深雪だよ」「初雪…です」他の少女たちも続く。「この度はどうも、恐縮です」ぺこりと磯波は挨拶をする。それが終わったらコンマ0.2秒で俺の首を切りにくるんじゃねえかとその時は思った。#艦これ航海日誌

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「それにしてもすげえ建物だな。これあいつが建てたのか」 「はい」磯波が言う。 「お祝いだって…言ってくれました」 「じゃあ、LV99になったってのは」 「はい、私です」 駆逐艦がLV99。噂には伝え聞くが、初めて見た。 #艦これ航海日誌

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「高速戦艦、金剛デース」戦艦を強調しながら金剛が磯波に挨拶する。「アンビリーバブル！LV99ってリアリー？スゴイデース！」「ええ、まあ」「うちのはまだLV60程度だ。色々勉強させてやってくれ」「勉強と言われても…うーん」 #艦これ航海日誌

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俺達が会話をしている間に、他の連中は駆逐艦の連中に混ざって会話を楽しんでいた。榛名と霧島は吹雪や深雪に敵の殺し方を教わっていた。比叡はというと、他に混じってこっそり胸元を弄っている。そして白い粉の入った袋を取り出し、飲み物のあるところへ近づく。あいつの悪い癖だ。#艦これ航海日誌

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比叡の目が光り、飲み物に手をのばす。 いかん、このままではこの屋敷が野獣邸に変わっちまう。やめさせようと思ったその時、比叡の掴んだコップにもう一つの手が加わる。初雪だ。 「何やってんの」 「な、何のこったよ」苦しいすっとぼけをする比叡。 #艦これ航海日誌

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「返して」 「慌てんなよ～」 初雪から力任せにひったくろうとする比叡。だがその体は宙を舞って一回転し、頭から地面にたたきつけられた。腐った仔犬のような鳴き声を上げて、比叡は昏倒する。初雪の手にはコップが握られており、一滴の水もこぼれていない。 #艦これ航海日誌

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「バカじゃないの」 「ｸｩｰﾝ…」 空気が凍る。そして俺は身の危険を感じた。目の前で戦艦が駆逐艦に投げ飛ばされ、何も出来ずに倒された。こいつらは違う。普段俺達が目にしていたりする連中とは明らかにモノが違う。 #艦これ航海日誌

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雪風や島風、あるいは夕立や時雨。駆逐艦にも別格とみなされる連中はいる。だがそれ以外は概ね遠征や雑用の下働き、もっと言えば慰み者だ。以前上納金を支払わないヤクザをシメあげた時、カネの代わりに駆逐艦どものポルノビデオの束を寄越してきたことがある。 #艦これ航海日誌

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軍部やアキバのブラックマーケットではよく出回っているらしく、出演者を呼んでの再現会なんかもよくやられているらしい。まあ、それを見た時はそいつを縛ってビデオのテープを腸の代わりに入れ、脳みそを刳り貫いてDVDを詰め込んだ上燃やして殺したがな。それはどうでもいい。#艦これ航海日誌

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ともかくそういうおもちゃとは違う。こいつらはガチの殺人機械だ。次に言葉を間違えれば、玩具として嬲られ殺されるのは俺達だ。俺は金剛に目配せをした。全身冗談で出来てるようなこいつなら何かしら切り抜けられるだろうと思ったからだ。「い、いいお屋敷デスネー」金剛がどもる。 #艦これ航海日誌

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「え？」磯波が微笑みながら首をかしげる。その目は爬虫類に似ていた。 「LV99のユーらしい、立派なお屋敷だと思いマース！どうやったらユーみたいになれるのか、私も、ぜひ」磯波が目を細める。一層場の気温が下がるが、金剛はさらにまくしたてる。もうヤケだった。#艦これ航海日誌