金木犀(@kin_mokusei)さんによるNYAISASメールマガジンに寄せた『日本のロケット 真実の軌跡』の書評の補足まとめ

金木犀(@kin_mokusei)さんが、NYAISASメールマガジン第126号に寄せた『日本のロケット 真実の軌跡』(宮川輝子著 ルネッサンスアイ (2013/08)出版)の書評の補足ツイートをなさってましたのでまとめました。
12
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

こんな時間ですが、今回の #NYAISASメールマガジン 126号の書評の補足。扱ったのは宮川輝子『日本のロケット 真実の軌跡』(ルネッサンス・アイ、2013年)です。

2014-02-08 02:02:48
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

「この本は、読む人によってかなり毀誉褒貶激しく、異論百出になると思います。」について、もう少し掘り下げて書いていく。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:04:28
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

この本は、筆者の宮川輝子氏の主観によって書かれている。夫の行雄氏は液体ロケットエンジンの開発に深く関わっていて、筆者は妻としてそれを見ている。そして、糸川秀夫氏が「日本のロケットの父」と呼ばれる現状に、強い不満と敵対心を抱いている。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:09:00
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

また、ペンシルロケットをはじめに置く、日本のロケットの歴史にも異を唱えている。否、もはや執念ともいうべき反感を持っている。「工場の片隅に残された兵器の残骸に手を加えて得意になっている」(p80)や、 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:14:47
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

「開発の本流から外され、時代の吹き溜まりに吹き溜まったペンシルロケットの流れをくむ男たちが、子供だましの」パフォーマンスを繰り広げ」(p124)などの表現に、それを感じる。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:16:43
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

では筆者の主張はどこにあるかというと、構造が複雑で設計も製造も難しい液体ロケットエンジンこそ本当のロケット、日本のロケット開発の本流であり、それを手がけた夫こそ、真に顕彰すべき日本のロケット開発の父である、という点。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:20:37
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

私は、液体ロケットと固体ロケット、それぞれを分けて考えている。故に、両者を切り離している筆者の態度には同意できる部分もある。ただし、それがゆえに糸川氏を否定すべきだとは思わない。ペンシルも否定すべきものだと思わない。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:26:08
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

なぜならば、液体ロケットと固体ロケットは、共通点といえば、燃料と酸化剤を燃やして反動で飛んでいく化学エンジンであるというくらいなもので、要求される技術・ノウハウ・製造設備etcはほぼ異なるものだからである。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:31:29
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

筆者の主張は、「液体燃料ロケットエンジンは固体燃料ロケットエンジンに比べて構造がはるかに複雑になり、製造は難しくなる。この両者の質とレベルは大人と子供ぐらい異なる。このことを見過ごしてしまうと、日本のロケット開発の真実は見えてこない。」(p78) #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:36:08
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

というのが一貫した態度。難しい方が高レベル、それを作った方が真実。そういう見方である。では実態はどうなのだろう。私は宇宙工学畑の人間ではないので、実感をもって感じることはできず、聞いた話になるが、次から述べていく。門外漢であるのは、筆者も同じだ。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:39:25
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

液体は技術の塊、固体はノウハウの塊。極論すれば私の考えはこれだ。もちろん液体にノウハウが、固体に技術がいらないと言っている訳ではない。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:40:55
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

構造が複雑で製造も難しいが故に、高度な設計や製造管理が要求され、それを達成すれば動くのが液体。構造は単純であるが故に、製造に職人芸級のノウハウが要求され、それで動くのが固体。かなり大雑把な把握の仕方だが、私はこう捉えている。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:44:27
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

ゆえに、筆者のような順位付けは意味をなさないと思っている。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:45:50
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

筆者はまた、日本のロケットエンジンの近代的な意味での出発点に戦中の航空兵器・砲などを挙げている。ロケットと言えば、航空機の秋水・桜花が有名だが、前者は液体エンジン、後者は固体エンジンである。戦中の日本は液固両方の技術を持っていた訳である。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:53:20
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

であるが、筆者の視点は液体ロケットに重きを置くものである。これが始まる最初が、第二章である。この章の冒頭では、行雄氏の生い立ちを述べ、「身震いするような秀才」でなければ入れない帝大航空工学科に入って猛勉強した夫を称えている。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:57:10
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

・・・・・・液体ロケットではなく、それに携わった愛する夫が、糸川氏に比べあまりに賞賛されていない、それこそが本書の執筆動機であると、私は読んだ。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 02:59:16
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

最後の一言が「フォン・ブラウンに勝るとも劣らぬ”いい男”宮川行雄に、これまた勇気ある偉大な妻が、渾身を込めた、この一冊を捧げます。」であることが、何より雄弁に語っているだろう。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 03:00:59
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

「ロケットの歴史の真実」をタイトルに掲げるも、実質は夫礼賛。そう読めて仕方ない。 だが、本書に記された歴史事象自体は間違っていない。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 03:02:52
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

残念なことに、筆者の色眼鏡が濃いがために、この本を積極的にオススメするわけにはいかない。この本は、事実は事実主観は主観と切り分け、割り引いて読む能力を要求する。それが残念である。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 03:04:59
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

だが、NALから、NALが関わったロケットの本がまとまって出た記憶は、管見の限りない。あったとしても、あまり手に入らない本だったのではないかと勘ぐりたくなるくらい、ない。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 03:06:18
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

残念ながら本書は、直接関わった人物が書いたものではない。だが、調べる端緒にはなるだろう。末尾に、宮川行雄氏が書いた論文等のリストが掲載されている。ここの内容や共著者を調べていくことによって、日本液体ロケット黎明期の状況の一端が見えてくるだろう。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 03:09:15
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

歴史的事象は単一であっても、受け止める側には解釈が生ずる。そこで意味づけが生まれ、議論が行われる。本書は一つの受け止め方と解釈の結果なのだろう。そして、あまりにもISAS礼賛的な風が主流になるのも、それはそれで色眼鏡を生み、よくないことだと思う。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 03:11:34
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

私の一連のツイートも、解釈の一つの結果である。『日本のロケット 真実の軌跡』は、いろいろと得るものが多い読書であった。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 03:13:03
金木犀@日曜東サ-02ab @kin_mokusei

書き落としがあったので、補足の補足をいくつか。まず、NALのロケットのまとまった本がおそらくない(あるいは簡単に手にはいる形ではない)のは、NALの本流は航空機研究だったためではないのかと思う。 #NYAISASメールマガジン

2014-02-08 03:24:32