ホワイト・ブレス

本郷 @hayato_itimonzi

ニンジャスレイヤー二次創作「ホワイト・ブレス」

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果たして、こうして時が固まってどれくらい過ぎたであろうか？ 降りしきる雪、葉の揺れる音、それだけだ。 周囲に音はある。しかし静寂と詠んでもいい、凍った時間が過ぎていく。 1

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雑木林の一本の木の上に、一人の男がたたずみ、硬直したように動かない。 メンポに、和服とダウンジャケットを組み合わせたような奇妙な装束、手には握られたスリケン。まるでニンジャだ。 事実、男はニンジャであった。 2

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ニンジャとは平安時代をカラテによって支配した半神的存在である。 だが男―――ホワイトブレスは半神と呼べるほど高貴な存在ではない。 所属していたニンジャ集団ソウカイヤが滅び、新たなるセクトに使われる末端のニンジャだ。 3

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左遷のように飛ばされた極寒の地で退屈で不遇な時を過ごす、末端のニンジャだった。数時間前まで。 あの赤黒の、忌まわしきニンジャがこの地に現れるまで。 ベイン・オブ・ソウカイヤ、ネオサイタマの死神、その二つ名に枚挙は無いあのニンジャスレイヤーが現れるまで。 4

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なぜあの狂人がネオサイタマを離れ、ドサンコ・ウェイストランドを目指すかは解らない。 旅路の途中、ネオサイタマを離れ会うことはないだろうと思われた敵と遭遇するとはいかなる運命のめぐり合わせか 5

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ホワイトブレスはスナイパースリケンの使い手であり、とてもカラテではあの狂犬には敵わぬ。 ネオサイタマで出会ったのならばアイサツの後、一瞬で殺されていたであろう。 6

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だが彼は最初の立会いを避け、生き延びた。この豪雪地帯が彼にフーリンカザンをもたらしたのだ。 あのベイン・オブ・ソウカイヤとスリケンに打ち勝ち、逃げ延びた。 豪雪地帯の木の上に身を潜め、スリケンを構える。 スリケンの勝負なら俺の勝ちだ！迂闊に近寄れまい！ 7

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かくして、時間が凍ったような勝負は数時間にも及ぶ。 数時間も周囲に警戒をおこたらないホワイトブレスの体力を、集中力を、時間は確実に蝕む。 だがフーリンカザンはこちらにある、その確信があった。 8

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彼の身に纏う装束は寒冷地仕様、寒さの全ては防げぬがこの地に不慣れなニンジャスレイヤーとは比べ物にもならぬ。 そしてスナイパースリケン。見渡しのいいこの地では見敵必殺。 ニンジャスレイヤーが近づけば一撃で片がつく。 長引けば長引くほど体力が奪われる。来い！ニンジャスレイヤー！ 9

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降りしきる雪は…ついに静寂を破った。 雪崩である。雪崩がホワイトブレスの潜む林を直撃する。 振り落とされぬよう、そして隠れている樹木がばれぬよう、その振動に耐える。 その一瞬の時が、永遠の後悔に繋がろうとは。 10

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雪崩で崩れ落ちてくる雪の塊の群れ。 その中に不自然な塊があったとは…… 物理法則を無視し、一つの雪球が方向を変え、向かってくる！！ 11

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ニンジャスレイヤーはホワイトブレスと異なり、その装束は寒さ対策では劣っていた。 そして油断ならぬスリケンの使い手。正面から歩いてゆくのは死を意味する。 ならばむざむざと相手のフーリンカザンの下、体力が奪われていたのか？ 答えは否！否である！ 12

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ニンジャスレイヤーはその身を、雪で作った球体に隠したのだ。カマクラである。 カマクラは雪で作ったドーム状物体、空気を遮断し体温の低下を防いだ。 さらに遠近感のつかみ難いそのドームは、体温の低下を防ぐだけでなく、身を隠す手助けともなった。 13

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さらに遠近感のつかみ難いそのドームは、体温の低下を防ぐだけでなく、身を隠す手助けともなった。 そしてニンジャスレイヤーは待った。ただ、ひたすらその時を。 雪が降り積もり、雪崩が起きるその時を。 14

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雪崩がおき、新雪が崩れ斜面を下るるとき、カマクラも共に滑り落ちる。 滑り落ちる半球のカマクラは開店の力で雪玉となり、敵へと突き進む！ 15

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雪崩の中の不自然な雪の塊。それを感じ取ったホワイトブレスはスナイパースリケンを投げる！ だが最早フーリンカザンはニンジャスレイヤーにあった。 16

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雪崩が樹木を揺さぶり、振り落とされまい、居場所を感じ取られまいと耐えた瞬間、フーリンカザンは失われた。 その一瞬がなければ、雪球の存在を感じ取り、次なるスリケンを立て続けに放ち、互角の勝負が行われたやもしれぬ。 しかしその機会は既に失われていたのだ。 17

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「イヤーッ！」ホワイトブレスの投げたスリケンが雪玉を直撃、これでフーリンカザンは完成した。 数時間身を隠し、雪崩でも壊れぬ雪玉の強度はいかほどか？ それは中に忍ぶニンジャスレイヤーにとっても瞬時に脱出するには困難な強度であった。 18

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だからニンジャスレイヤーは敵を信頼したのだ。 自分の潜む雪玉を、確実に狙撃してくれると。そしてその瞬間こそ、敵は自らの居場所を教える事になると。 19

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「Wasshoi!」 スナイパースリケンを受けた雪玉から、赤黒のニンジャが飛び出してくる。 そう、スリケンが雪玉を割ってくれる瞬間こそ、必殺の合図。 その鋭いケリは一撃でホワイトブレスの首を切断した。「サヨナラ！」 20

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数時間にも及ぶにらみ合いは、アイサツする暇すらもなく、一瞬で終了した。 爆発四散、後にはただひたすらに静寂が訪れる。雪の息吹を除いて。 21

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おわり