メカ提督と夕張「鎮守府ZERO」

灰鉄蝸（かいてっか） @Kaigoat

艦これ世界のホモ・サピエンスは絶滅済みであり、復元された改良品種である「提督甲」、回収された人格データからなる機械人間「提督乙」、元艦娘の「提督丙」で運用されている。ケッコンカッコカリは、鎮守府に繁殖を取り込みたい艦娘の策謀だ。愛することは、それでもやめられない #メカ提督と夕張

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@Su8492BM 慢性的な物資欠乏で秩序は崩壊し、優秀な軍人たちは深海棲艦に偽装した艦娘によって拉致されていく――人類の長い長い冬の少し前のこと。

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@Su8492BM 様々な容姿の少女達と外骨格のような機械装置ばかりが目立つ閉鎖施設。民族も国籍も思想も階層も問わず、あらゆる人種が解剖し保存された横須賀ラボ……バンカーバスターと戦術核の等価が決定されるも既に遅く―― #艦これ

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鎮守府の前身たる研究機関に潜入する、米中ソの工作員。既に軍人のみならず、一部のシンクタンクの研究員すら謎の失踪を遂げ始めていた。場所は横須賀。奇しくも世界各国が予算を捻出、自国の生き残りのため技術回収を目論んでいた場所――そこに広がっていたのは新時代の闇だ

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「人類に対する破壊工作などではありません。あなた方は視野が狭すぎる。既存秩序の崩壊が避けられないなら、新しい器を用意するのは文明人の義務だ」主任研究員の声。九ミリ弾で脳の中身を空中へぶちまけた成人男性の死体が、喋っている「あなた方が望んだ成果だ。何を驚いているのです？」 #艦これ

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施設の奥から聞こえる絶叫。中国語だ。CIAの紐付きである彼の同類、このラボの詳細を把握しに来た人員だろう「ちょうどよかった。我々にはスパイの知り合いがいなくてね。君たちのノウハウも貴重な資産になる」銃創から覗くのは、青白い皮下組織。深海棲艦の体組織だ「…乗っ取ったのか」 #艦これ

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「いいや。 あなた方の求める研究成果――深海棲艦との戦闘に適した兵器、安価な労働力の確保にそった実験さ。今時人体実験はナンセンスだと思うか。わかるよ」一転して友好的態度。グロックを構える指先が震える「誰だって、これまでの世界のモラルが好きだ。当たり前が好きなんだ」 #艦これ

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諜報員として積み上げた冷静さすら、眼前の悪夢に悲鳴を上げ始めていた。アメリカへ移民するためのチケットが無駄になりそうな状況もどうでもよかった。ただ彼は、こんな悪夢より人間同士の殺し合いの方がマシだと思った「他の研究員はどこにやった」 #艦これ #メカ提督と夕張

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脳症をまき散らしても喋り続ける主任研究員は、くつくつと喉を鳴らす。施設の奥から響いていた、中国語の悲鳴は消えていた「ああ、声がやんだ。以前は日本語や英語の悲鳴がしていたよ。だが、今では我々の足下で健やかに頭脳を働かせている」冥府は地下にある #艦これ #メカ提督と夕張

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「まず現実を認めるべきだ。少なくとも人類は現在の人口を保てない。今後、二〇年以内に飢餓地獄が世界中表面化する。それはいい。あなた方の指導部も、そこは押さえている」「……」ずたずたに食い荒らされた世界秩序の結果は、覆せない。だから青年は工作員になった #艦これ #メカ提督と夕張

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シーレーンがつぶされた時点で、日本という国家は瓦解したも同然だ。米国への移住は魅力的だった。青年は現実的判断をしたつもりだったが、目の前の怪物は違う「しかし人口が減る、とは人材が、貴重な才能がなくなるということだ。それは困る。彼女たちが困ってしまう」 #艦これ #メカ提督と夕張

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「あの子供たちか。あれはなんだ、子供を浚って深海棲艦にしたのか」「いいや。あれこそ、あなた方が、あなた方の指導者が待ち望んだ、深海棲艦との戦いに特化した兵器なのですよ…精確には、その変異体と呼ぶべきかな」#艦これ #メカ提督と夕張

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人間に酷似した変異は、試作兵器全体に広がった。そして、このラボそのものも変質したのだ「人類への反逆だ。お前たちは女の子の姿に騙されている。あれは、侵略者の細胞を使った自律兵器じゃなかったのか」暴走の危険性を指摘していた論文を思い出す。 #艦これ #メカ提督と夕張

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「もちろん、あれが擬態ならゆゆしき事態だ。しかし、私の躰（からだ）を見ても気付かないのかな？」脳をなくした、人体と深海棲艦の融合体。モザイク状に両者の肉が解け合った人型…赤い血を流す青白い肉「まさか」「そう。彼女たちは、ヒト細胞と共存できるのさ」 #艦これ #メカ提督と夕張

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「彼女たちの卵子と、我々、人類の精子で胎児が育成できることも検証済みでね。ほら」右手の自動ドアが開く。本能的に銃口を向けた。幼い少女――くりくりとした瞳の、小動物的な愛らしさ「私の娘だ。さっ、挨拶なさい」「はじめまして、雪風です！」 #艦これ #メカ提督と夕張

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「こんな見た目だが、海上では並みの軍艦よりずっと役に立つだろう。最初から言葉を話し、戦い方と常識を覚えている。どんなに長くても、生まれるまで一日かからない」「んもー、恥ずかしいからやーめーてーくださいー」じゃれ合うしたいもどきと少女。吐き気がした #艦これ #メカ提督と夕張

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「その混血どもが、どうした」「簡単なことさ――兵器で武装し、我々よりも早く繁殖、成熟できる知的生命体。末期的状況にある人類の叡智を受け継ぐにたる、と横須賀ラボは考えた。そのための誘拐であり、解剖であり、保管なのだよ」 #艦これ #メカ提督と夕張

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「許して貰おうとは思わんよ。ただ、次なる時代の礎となればいい」グロックの残弾を数える。弾倉交換の暇はなく、万事休すだった。彼が解剖から逃れる術はない――「おとーさん、あの人を提督にしましょう！」男達が予想もしていなかった提案だった #艦これ #メカ提督と夕張

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「おいおい、みんなで決めたろう？　中国やロシアのスパイと一緒で、脳みそを共有する約束だったろうに」「おれは、臨時の雇われだ。連中みたいな専門職じゃない」「データには多様性が必要だ。自身の経験不足を恥じることはない」優しい声だった。標本になれ、と。 #艦これ #メカ提督と夕張

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「でもぉ」「雪風らしくないな」「夕張さんが勘弁してあげてって」青年は一つの法則性に気付いた。少女達の名前は、旧日本海軍の軍艦の名前だ。ラボの研究員が名付けたのか、彼女らが自発的に名乗っているのかはわからないが。「夕張が？　ああ……素体の影響か」 #艦これ #メカ提督と夕張

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「素体だって。お前らの娘とやらは、自発的変異を遂げたんじゃなかったのか」ここまで来たら、やけくそだった。何もかもほじくり返してやる。青年の問いに答えたのは雪風だった「ほとんどはそうですけどぉ、そうじゃない子もいるんです。つまり、最初に人間を理解した子」 #艦これ #メカ提督と夕張

灰鉄蝸（かいてっか） @Kaigoat

「人間をよく理解して、その真似をした子です。お兄さんたちの脳みそをストックするみたいに、頭の中身を、ええっと」「よくできたね、雪風。あとは私が言おう…つまり、捕食した瞬間の脳組織と、その電位活動を模倣できた深海棲艦ということだ。我々の保護下にある」 #艦これ #メカ提督と夕張

灰鉄蝸（かいてっか） @Kaigoat

口の中が、からからに乾いていた。何を言えばいいかわからないまま、なくした家族の記憶を振り払う。高校への進学を控えて、行方不明になった妹。やめろ、と理性が叫ぶ。研究員はにこやかに笑った「哲学の思考実験の一つに、スワンプマンというものがある」 #艦これ #メカ提督と夕張

灰鉄蝸（かいてっか） @Kaigoat

「スパイ諸君の経歴は調べさせて貰ったよ。ラボの権力は、日本では強いんだ。妹さんの意識と肉体は、泥（スワンプ）ならぬ深海棲艦の肉に蘇った。そして今、兄の命を救おうとしている――おめでとう、君はもう天涯孤独ではない。守るべき家族がいる」 #艦これ #メカ提督と夕張

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その後、気が変わったらしいラボの男に「夕張」と面会させられた。顔も、声も、話し方も、妹と同じだった。人懐っこく、オタク趣味があって明るい少女。自分が、何を捨てようとしているのかわからなかった。深海棲艦を憎み、愛国心も薄かった彼の大切なもの #艦これ #メカ提督と夕張