連合艦隊旗艦の栄光より大事なメダル……

長門さんが少年に表彰されちゃう艦これ二次創作小説です。
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三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

「作戦終了だ。艦隊が帰投したぞ」 母港に戻った戦艦娘の長門は、上司である提督に報告をしていた。 「ご苦労様、長門。ゆっくり休みなさい」 報告を受けた彼女は長門にそう言う。長門は頭を下げて部屋を出ようとしたが、その足が止まった。何か隣の部屋で物音がする。 1

2014-02-16 16:03:27
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

「これは……」 「ふふ、報告の時間はおとなしくしてくれたみたいだけど、また始めたみたいね」 提督にも聞こえたのだろう。笑いながら言う。苦笑が少し混じっているが、微笑ましいといった表情が強かった。 行ってやれと身振りで提督が示す。勧められるがままに長門は隣の部屋に続く戸を開けた。2

2014-02-16 16:06:50
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

「やっ! やっ! イヤーッ!」 「うふふ、まだまだよぉ?」 何者かが軽巡洋艦娘の龍田に襲いかかっていた。その攻撃を龍田は笑いながらいなしていく。すわ、敵の襲撃か!? 3

2014-02-16 16:11:40
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

しかし、両者が持っている物は新聞紙を丸めて作られた刀だ。そして龍田の相手は駆逐艦娘より遙かに小柄で、歳もそれ以下だ。 そう、龍田の相手は少年だ。歳は五歳ほど。龍田は襲撃者に応戦しているのではなく、子どものちゃんばらに付き合っているだけであった。4

2014-02-16 16:16:15
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

「えい」 「あだぁ!?」 力のない掛け声と共に龍田の剣が下から振り抜かれる。少年は身体をくの字に曲げた。 「って、龍田。さすがに全力で振り抜くのはマズイだろ」 思わず長門は声をかけた。 「大丈夫よぉ。力加減してるし、提督の子ですものぉ。強いわよぉ?」5

2014-02-16 16:19:32
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

そう、この少年は提督の息子だ。諸事情あってこの鎮守府の提督には二児の母が着任した。子を育てながらの指揮が務まるのかと上層部は危ぶんだらしいが、艦娘たちが手伝うことで問題なく執り行われている。ちなみに上の子どもは学校に行っている。6

2014-02-16 16:23:07
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

「まだまだぁ!」 痛がっていた少年がまた打ち込んできた。冷静に龍田はそれを素手で掴んだ。 「あら~、まだ戦いますかぁ?でももうおしまいですよぉ?長門さんが帰ってきたからねぇ」 「あ! ながと!」 新聞紙の剣を打ち捨て、子どもが長門に駆け寄ろうとする。7

2014-02-16 16:25:38
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

長門はその少年を受け止めようとしたが、二人の間を龍田が割って入った。 「お片づけが先でしょ~?」 「あ、はぁい!」 利口な子だ。口答えせずに言われたとおり、ちゃんばらに使っていた新聞紙の剣を片付ける。そうしてから少年は改めて長門に駆け寄った。8

2014-02-16 16:27:47
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

「おかえり、ながと!」 「ああ、ただいま」 「ねえねえ、きょうもたくさんてきをたおした?」 「そうだな、倒してきた」 「えむぶいぴーはとった?」 「もちろんだ。ビッグセブンの私だぞ?」 そう胸を張った長門だがその時にはもう、少年は背を向けて走り出していた。9

2014-02-16 16:33:53
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

聞くだけ聞いて去るとは。子どもだから仕方がないか。長門は苦笑する。だが少年は部屋の隅に置いてある彼の小さな鞄から何かを取り出し、長門の処に戻ってきた。 「ながとはきょうでえむぶいぴーを100かいとったんだよ!」 「そ、そうなのか?」10

2014-02-16 16:34:42
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

そんなもの、数えたことがない。困ったように視線を泳がせると、母親が軽く頷いた。どうやら彼女が数えていたらしい。 「だからね、がんばっているながとにプレゼントだよ!」 そう言って少年はながとに勢い良く手を突き出した。 11

2014-02-16 16:36:21
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

それは折り紙で作られたメダルだった。メダルの中央にはマジックで「ながとへ MVP100かい おめでとう!」と書いてある。そして裏を見てみると「いつもありがとう」と書いてあった。胸が熱くなる。 「ふふ、ありがとう。貰っておこう、か」 12

2014-02-16 16:41:33
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

「これからもがんばってね、ながと!」 「あぁ、任せろ。私を誰だと思ってる?世界のビッグセブンだぞ」 長門が答えると少年は嬉しそうににっこりと笑った。実にいい笑顔だ。 『ああ』 長門は思う。 『これを守るために、私達は戦っているのだろうな』13

2014-02-16 16:54:36
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

日向は何のために戦っているか、迷っていた。自分も、口にはしないが悩んでいたことがある。いや今でもだ。しかし、この笑顔を見ると、戦う気力が湧いてくるのだった。14

2014-02-16 16:58:54
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

長門はメダルを首にかけた。握ればすぐクシャクシャになり、火を近づければ燃えてしまう代物だ。 だが折り紙で作られたそのメダルは、不思議と重たく、長門には感じられたのであった。15

2014-02-16 17:02:50
三鯖アキラ(旧:沈黙の天使) @silent_aries

○○長門「少年もいいが……やはり駆逐艦がいいな!」 提督「黙れ、ロリコンカッコカリ!」

2014-02-16 17:05:24